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28話 ギルドマスター

 言われた通り、ギルドに併設されている酒場の席に座って待っていると、先ほどの受付嬢が戻ってきた。

 きょろきょろしていたが、俺と目があったと思ったらこちらに近づいてきた。


「ケイタ様、ギルドマスターが面会したいとの事です。一緒に来ていただけますか?」

「あ、はい」


 そう言って、ギルドの2階にある個室に案内される。ここは、冒険者と依頼主が依頼の摺合せなどを行うために貸し出したりする部屋らしい。


 受付嬢が先頭に立って扉をノックすると、中から野太い男の声が返ってきた。

 そして受付嬢が扉を開け俺たちに中に入るように促す。


 中に入るとテーブルがあり、向かいの席にゴツイおっさんが据わっていた。40代半ばぐらいだろうか、筋肉ムキムキでスキンヘッドのおっさんだ。

 この街はテンプレというのをよく分かってるよね。


「おう、アンタらか。まあ、座ってくれ」

「はい……」


 そう言って座ろうとするのだが、レイヴンさんが左隣に座ったのだが、シアンさんは座ろうとしない。 それどころか、


「レイヴン、あなた、何を座っているのですか!?」

「えー、いいじゃん」


 なぜかレイヴンさんを責めている。どうやら、主人に使える物だから立っているのが当たり前とか思っていそう。


「大丈夫ですよ。シアンさんも座ってください。そうしたほうが話がスムーズにできると思うので」

「……わかりました。」


 渋々といった感じで俺の右隣に座る。


「えーと……ケイタか。さてここに呼んだ理由だが。あの5層の扉を突破したんだって?」


 手元の書類に目を通し俺の名前を呼ぶ。


「ええ、突破というか開けて中に入ったんですけれど(正規の方法ではないけど)。」

「で、中にあったもんだが、おおよそはさっき聞いたが、一応本人から説明してほしい」

「分かりました」


 そう言って説明していく。古代魔法文明の遺跡といっても2部屋しかなかったうえ、そもそもほとんど何も残っていなかったのだから、そこまで時間のかかるものでもなかった。魔力リアクターについては魔物を呼び寄せダンジョンを構成しているのではないかとの推測を述べ、下手に触らず放置してきた件も伝えた。扉はそのままにしてあるので、もし問題があるようならばギルドで対処してほしいとも。

 レイヴンさんの事は省いたが伝えた方がいいのだろうか。一応組織のトップだしそこまで変な人ではないと思う。

 少し悩んだが、変に隠してあとで問題になっても困ると思ったため伝えることにした。今後の事も考えるとギルドはお金を稼ぐために必要になるわけだし。


 ちなみに、シアンさんとレイヴンさんは両隣で静かにしている。レイヴンさんとか口を挟んできそうだったが杞憂だったようだ。


「古代魔法文明の遺産か、だからダンジョンが。わかった、そのリアクター? については触らないよう他の冒険者にも周知しておこう…………それで、他に何かなかったか?」

「えーと、マリオネットについてはご存知ですか?」

「マリオネット? なんだそりゃあ?」


 ギルドマスターが怪訝な顔つきになる。やはり知らないようだ。


「古代魔法文明の遺産の一つなんですが……わかりやすい言い方をすると魔導人形(オートマタ)の進化したものと言いましょうか……」


 良い説明が思い浮かばない。そもそも俺自身がマリオネットやオートマタの事なんてあまりわかっていないからだけれど。オートマタについては書物で読んだだけで実物なんて見たことすらない。


「ほう、そんなものがあるのか。で? それは持って帰って来たのか?」

「あ、いえ、こちらにいます。」


 そう言ってレイヴンさんを指す。

 ギルドマスターの視線が俺からレイヴンさんの方に移動し……また俺の方に戻ってくる。そうして再度レイヴンさんの方に視線を移動させ……また俺の方に戻ってくる。


「おいおい、ケイタ、何言ってんだ? そう言う冗談か? ……そっちの別嬪さんは……竜人族か? 珍しいな」


 だからなんだよ竜人族って。


「あの、竜人族ってなんですか?」

「ん? そっちのお嬢ちゃんがそうじゃないのか……尻尾が無いな、どうしてだ?」


 そう言って、レイヴンさんを見るギルドマスター。まあ話が進まないので正直に聞いてみる。ここには俺たちとギルドマスターしかいないしな。

 ギルドマスターは最初はいぶかしがったがちゃんと説明してくれた。


 竜人族。

 推測の通りそう言った種族がいるらしい。ただ、めったに人前には姿を現さないそうだ。この国だと王都に行けば2~3人いるかどうかといったぐらいで、本来どこに住んでいるのとかも不明な種族らしい。普通の人間やその他亜人族に比べてステータスが高いことぐらいしかわかっていない。外見上の特徴として角と尻尾があるらしい。


 なおレイヴンさんの尻尾は(翼も)最初見たときからずっと収納されているため、今は見えないが、ドラゴンの尻尾と言うよりはもっと細長くそれこそ悪魔のような尻尾だった。


「――で、まあ竜人族は珍しいんだが、今回はそれじゃなくてだな、」

「いえ、こちらが……竜人族ではなくて、マリオネットなんですが……」

「はあ?」

「事実です。私とレイヴンはあなた方の言う所の古代魔法文明製の人型戦闘機(マリオネット)――兵器の一種です。」

「えっと、アンタはシアンさんだったか? あんたもそのマリオネット? とか言うのだと?」

「ええ。ステータスカードにも記載されていたはずですが。」

「……ちょっと見せてもらってもいいか?」

「構いませんか?」


 俺の方に許可を求めてくるシアンさん。この程度なら許可は必要ないと思うのだが。俺が頷くとギルドマスターにカードを差し出す。


「どれどれ……確かに種族の欄が人間じゃ無く人型戦闘機となってるな……なんだこれ? レベルや年齢が表示されてないじゃねぇか。」


 カードを見ながらうーんと唸っているギルドマスター。


「そっちの――レイヴンちゃんだっけ? もカードがあるのか?」

「うんにゃ、オレはさっき起動したばっかだからな。カードなんて持ってねぇよ。つーかなんだそれ? 持たなきゃいけないのか?」


 ステータスカードの扱いについては説明していなかったので、今することにする。今の時代ではこのカードが身分証の代わりとなっていることや、ギルドに所属する際には持っているのが当たり前であることなど。


「そうか、ちょっと待ってろ。」


 そう言うと、ギルドマスターは席を外し、しばらくするとカードを持って帰ってきた。



「ほれ、これがステータスカードだ。ギルドに入るなら持っとけ。代金は……持っているよな?」

「大丈夫です。」

「で、これって血を付けるんでよかったよな? 前と使い方変わってたりするのか?」

「前がどうか知らないけど、あってるよ。」


 そう教えてやると、レイヴンさんは親指を犬歯で噛み切って血を付着させた。ワイルドだな。

 カードが光ステータスが表示された。どんなものなんだろう。



 レイヴン

 Lv:-

 種族:人型戦闘機

 性別:女性

 年齢:-

 職業:無職

 体力:7280

 魔力:7000

 攻撃力:12000

 防御力:6600

 魔法攻撃力:11200

 魔法防御力:5800

 素早さ:8200

 スキル:-



 おぅふ……スゲェのは分かる。


「すごいね。それにシアンさんより各ステータスとも高いね。」

「へへへ、そうだろう。マスターはオレに頼ってくれていいんだぜ。」

「私は汎用で彼女は制圧用――純粋な戦闘用ですのでその違いですね。」


「表示できたか? なら、見せてくれるか?」

「ああ、ほらよ」


 そう言って、机の上を滑らせて渡すレイヴンさん。ギルドマスターがそれを受けとって内容に目を通すと、


「どれどれ……ブフォァ!!」


 いきなり噴き出したぞ。おい、おっさんの唾とか汚いだろ!


「ちょ、汚いですよ。なんですか」

「なんですかって、おまっ……おま……」


 ギルドマスターの様子を見るに言葉が詰まって出てこないようだ。何か問題があったのだろうか。


「……あの、何か問題が?」

「おま……問題が? じゃねえよ! なんだよこのステータス!」


 ……あ、ああ、そう言えば体力以下も表示させたままだったのだろう。人間に比べれば非常に高いもんな。

 レイヴンさんに体力以下は、非表示にするのがマナーらしいと言うと、そういう事は早く言えと言われた。ごもっともです、はい。


「彼女たちは、古代魔法文明の兵器らしいので……」

「ていう事はそっちのシアンちゃんもすげえのか?」

「ええ、そうですね」


 シアンさんに頼んでシアンさんのカードの体力以下も表示してもらう。

 それを見てまた吹き出していた。


「…………あー、分かった。まずはカードは返すぞ。」


 そう言ってカードをそれぞれに返してくる。返されたカードを受け取り体力以下を非表示にするシアンさんとレイヴンさん。


「それで……信じてもらえましたでしょうか?」

「ああ、あんなステータス見せられたら信じるしかねぇだろ。それでそっちのマリオネットだっけ? の二人は何でケイタと一緒にいるんだ? オートマタと同じように主従の関係みたいなものがあるのか?」


 訪ねてくるギルドマスターだが、そのオートマタの主従関係というのがどういった物か分からない。とは言え、彼女たちに関しては俺を主として登録してしまったから素直に答えておく。


「ええ、そうです。一応、俺が彼女たちの主人ということになっています。……問題ないですよね?」

「まあ……問題は無いな。古代魔法文明のものに関する決まりが無いからだが。基本、発見者に所有権がある。有用なものは国が買い取ったりするらしいが。」


 そう言った物なのか。国が買い取るということはやはりそれなりのお金が動くのだろうか。


「そうですか、良かった。で、話が変わるのですが、こちらのレイヴンさんもギルド登録したいのですが可能でしょうか?」

「人間じゃなくても出来ることは出来るが……オートマタの場合は普通しないぞ……まあ、ステータスカードが使えるんなら大丈夫だが」

「ではお願いします」

「分かった、ちょっと待ってろ。」


 そう言ってまた退室してしばらくしてから戻ってくる。そうして差し出される記入用紙。俺やシアンさんの時と同じなので、レイヴンさんに書き方を教えて記入してもらう。それをギルドマスター直々に確認し、ギルド登録は終わった。

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