26話 新メンバー見参
白い箱 (みたいなもの)を開けて出てきたのは全裸の女性だった。
顔は整っており、絶世の美人だといっても過言ではないだろう。見た目は10代後半といったところか。綺麗な銀髪のロングヘアーに褐色の肌がなまめかしい。体付きもシアンさんと同じぐらいのナイスボディーだ。
……そして裸だ。
もう男の性としてどうしてもいろんなところに視線が引き寄せられる。豊かな胸は綺麗な形を保っており美乳といっていいだろう。股間は……言及を避けるが、生で見たのは2回目だった。
あと何故か頭部に角、背には羽が、そして臀部からは尻尾が生えている。それらの見た目としては悪魔みたいだ。
目の前の女性は立ち上がり、その金の双眸をゆっくりと開いていき――
「おう、お前がオレのマス……ん? 何してんだ?」
「ワタクシハナニモミテオリマセン」
そう俺は学んだのだ。
こういった場合は、素早く相手の裸体を脳内フォルダに保存、しかる後にクイックターンを決めて後ろを向き正座を決めた。
そうしてシラを切るのだ。脳内エロフォルダへの保存時間なんと最速3秒……え? 遅い?
「……? アンタが俺のマスターってことでいいんだよな」
「え? あ、はい、多分」
後ろを向き正座しながら質問に答える俺。
「なんだぁ? はっきりしないな。登録魔力はっと……お前で合ってるようだな。オレはMSF-15型制圧用人型戦闘機、個体名称〈レイヴン〉だ。よろしく、マスター」
おぅたぁ……来たよ、マリオネットだよ。クソッ! こいつら3000年間何してたんだよ。
「あのぉ……」
「ん? なんだ?」
「裸なので何か着た方がよろしいかと」
あいにくとシアンさんと出会った時のように替えの服などの荷物は持っていない。ダンジョンに潜るだけだったのでそういった物はすべて地上においてきた。
ちらりと視線を向けると、相手は特に恥ずかしがる様子もなく……どころかドヤ顔で腕を組んで仁王立ちしていた。組んだ腕の上に乗っかっているオッパイがしゅごい。股間を全く隠していない。
ヤダ、男らしい……絶世の美女だけど
「分かってるよ……で着る物は? オレの装備品は何処だ?」
「それは……ちょっと分かりかねます。俺もここに来たのは初めてなので」
「そうか、後、オレのことはレイヴンて呼び捨てでいいぞ、マスター。……で、マスターの名前は?」
「ああ、秋月啓太と言います。……あの、早く何か着ていただけると……」
「……アキヅキケータ…………いや、だから、オレの装備は何処だよ?」
えー、服がどこにあるのか知らないの!?
無論俺が知っているはずもなく……
仕方ない。俺は大きく息を吸い込みそして――
「たすけてー!! シアンさーん!!」
――シアンさんに助けを求めた。
しばらくするとダダダッ! とこちらにかけてくる影があった。
「主様、大丈夫です――かぁぁぁぁぁ!?」
そしてその勢いのまま俺に目つぶしを食らわせてきた。
「いだぁぁぁ!!」
「見てはいけません!」
「ちょ、分かった、分かったから! 目っ、目つぶししようとしないで!」
「お? なんだ、騒がしい奴だな? アンタは誰だ?」
「それはこちらのセリフです! 誰ですかあなた! そして、なぜ裸なんですか!?」
その後ようやく落ち着いたシアンさんたちに事情を説明した。正座のままだ。
「へぇー、ご同輩だったのか」
「まさかこんな所にマリオネットがいるとは……ここはマリオネット用の施設とは無縁だったはずのに」
「……ああ、俺は戦闘で破損してここで修理を受けてたからな。……で修理される前までは何となく覚えてるんだが……なんだ、少し見ないうちに殺風景になっちまったな」
辺りをぐるりと見回している(と思われる)レイヴンさん。というわけでシアンさんに行った3000年後云々の話を背を向けたまま行う。レイヴンさんは最初は懐疑的だったようだが、シアンさんの方からも説明し、更に修理カプセル? のようなものからも情報を抜き取ったようで、最終的には信じてもらえた。
「しっかしまぁ、3000年ねぇ……」
「そう言えばシアンさんの方はどうだったの? 何か見つかった?」
そう聞くと、シアンさんの首を振り何もなかったですと言う。
「向こうの部屋はかなりの部分が焼失していました。天井に穴が開いておりそこを中心に溶解が進行したようですので……地中貫通弾でも撃ち込まれたのでしょうか……」
「そう……」
よく分からないが、とりあえず何もないことは分かった。
「なんだ? 臨時司令部施設は攻撃を受けたのか?」
レイヴンさんによるとあちらの部屋は軍の臨時の司令部のような部屋だったらしい。……まあ、それはいいんだけれどいい加減足が痺れてきた。
シアンさんに一度地上に戻って衣類をとってきてもらおう。
「シアンさん、レイヴンさんに何か着る物を持ってきてほしいんだけど……どのくらいで戻ってこれる?」
「ここにはないのですか? ……そうですね。地上までの通路は記憶していますので小一時間もあれば戻ってこれるかと」
「できるだけ早くとってきてね」
「分かりました。危険ですのでここを動かないようお願いします。あと、彼女の方を向かないように!」
「あ、何か武器も頼むわ」
「……わかりました」
そう言うと颯爽と走り去って行ってしまった。
「……あの、足をくずしてもいいですか?」
「いや、オレに聞くなよ……て言うか何でそんなカッコしてんだ?」
正座もキツくなってきたので足をくずす。
あ、ヤバ、ちょっと正座しただけなのに足がしびれてる。
さすがに小一時間もだんまりのままというのは気まずい。何か話して気を紛らわそう。
「えっと、その角とか羽はなんですか?」
「これか、オレは戦闘能力の向上のため神竜のデータを組み込んでいるからその名残だ。」
竜? あれを組み込んでいる? そう言った種族的なものがあったりするのだろうか。ここはファンタジー世界だし、人間と竜の合いの子みたいなものがいるのかもしれない。突っ込んで聞いてもいいのだろうか。もしかしたら、差別的なアレがあるかもしれない。
でも見た目、竜というより悪魔っ娘なんですけど、とは言わない方がいいな。
レイヴンさんの場合、外見的特徴に現れているだけで羽で空を飛んだり尻尾で攻撃したりといったことは出来ないらしい。あくまで名残なので、無くなっても問題ない程度のものだそうだ。と言うか、角、翼、尻尾、全て収納可能らしい。
「そう言えば、修理でここにたということですが、ということは以前にはマスターもいたんですよね? どんな方でした?」
「ああ、以前のマスターな……マリオネットは消耗品だからな、別にマスターという個人はいないぞ」
「は?」
え? どういう事?
「軍用マリオネットに魔力を登録して個人所有にするのは緊急時の手段だ。普段は軍の命令系統に従って動いていたな。」
「そ、そうですか」
え、じゃあ、魔力を登録しちゃったから俺の命令を聞かなくならなくなったということだろうか。そうなら申し訳ないことをしたな。今から解除とかできないのかな。
「すいません勝手に登録しちゃって。その、魔力登録の解除とかできないのですか? そうすれば自由になるっていう事ですよね」
少し申し訳なさそうなトーンで尋ねてみるが、
「できるぞ。専用の機器が必要だが。あと、別に気にする必要はないぞ? オレらは所詮まがい物だからな」
「は、はぁ、で? その機器は何処に?」
「知らん」
「……」
オレ参上!




