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24話 おや?

 目の前で全高3メートルは有ろうかという鶏とそれに攻撃を加えている冒険者の3人組。冒険者の方は数の利を生かしてバラバラに動き回り狙いを絞らせないようにしており、またそれぞれが攻撃を繰り出していく。

 だが相手のデカい鶏の方はどうしてそんな動きができるのか? というようなスピードと動きで冒険者の攻撃を難なく躱していく。そして、


「コケェェェェェ!!」


 やはり鶏としか思えない鳴き声を放つとその目が赤く光る。


「石化来るぞ!」


 冒険者の一人がそう叫んだかと思うと、鶏の前に扇状の衝撃波のようなものが広がっていく。


「くそっ――」


 冒険者の一人がその衝撃波に巻き込まれ――――石になった。



「なんだ、あれ?」

「あれは、コカトリスだったかと。確か石化の魔法を使用する魔物であったと記憶しておりますが……なぜこんなところにいるのでしょうね?」

「……それって強い?」

「何を基準にするかによりますが……人間と比較してそこまで強いというほどではなかったかと」


 人間基準で強くはないとシアンさんは言うが……どう見ても強そうなんですけど。見た目はともかく。

 あの鶏、スピード結構速いぞ。


 助っ人として攻撃に加わるべきか。でも横入りとか言われたら冒険者の方から敵視されそうだ。俺は冒険者になってから日が浅いからこういう場合どうしたらいいか分からない。


「……おーい! 助けはいりますか?」


 とりあえず声をかけておけば問題ないのだろうか?


「なに!? 他の冒険者か! 助けてくれ! 俺等じゃもたない!」


 声をかけたら反応があった。かなり焦っているような声色だが、これで横入りしても問題ないだろう。


 後ろから切りかかってきた冒険者を足でけり飛ばすのと同時に、俺の声に反応したようで鶏の頭がこちらを向く。


「コケェェェェェ!!」


 先ほど冒険者の一人を石化した際と同じように、一鳴きし、目を赤く光らせる。

 これはさっきと同じように扇状の範囲が効果範囲なのだろうか。だとしたら不味い。

 逃げるように横に走るが、相手は首を動かすだけで効果範囲をこちらに移動させてきた。そうして、石化の魔法が放たれる瞬間、シアンさんが俺の前に立ちふさがった。

 瞬間、パァン! という音が響く。


「え? あ、シアンさん、大丈夫か!?」

「ええ、問題ありません。主様は大丈夫ですか?」


 石化の魔法を食らったと思うのだがケロッとしている。一方俺は……体を見てみるが特に異常はない。


「大丈夫だと思う。」

「そうですか……鶏風情が、主様に牙をむくなど万死に値します。――潰れなさい!」


 そう言うと、目の前にいたシアンさんが消えて……岩を砕くような大きな音が響き渡った。同時に鶏のいた付近から大量の土煙が襲ってくる。


「うぁた……ゴホッ! ゴホッ!」


 土煙のせいで咳き込んで目を開けられなかったが、次第におさまってくる。

 ようやく目を開けられるようになって、見た光景は……鶏のいた位置にいるシアンさんと、放射円状にひび割れた地面、そして周囲に飛び散る何かの肉片だった。


「……すげぇ、コカトリスが……」


 冒険者の残った1人がつぶやく。


「主様終わりました」


 そう言いながら、こちらに戻ってくるシアンさん。ワンパン――相手は死ぬ。ってやつか。


「あ、ああ……あの大丈夫ですか?」

「へ? ああ」


 立っていた冒険者に声をかける。まだ多少放心しているようだ。


「仲間の方が、石になっているみたいですけど」

「ああ、そうだったな……助力感謝する」

「いえお互い様ですから」


 そう言いつつ、残った冒険者の一人は石になった仲間の方ではなく、鶏に蹴られて倒れ込んでいる人の方へ行くと何かを飲ませている。あれは薬か何かだろうか。そう思っていると、蹴られて倒れ込んでいた人が淡い光に包まれて、次の瞬間にはムクリと起き上った。


「魔法の薬的な物かな」

回復魔法薬(ポーション)の類かと思いますが」


 そんな話をしていると、冒険者二人がこちらへやって来た。


「いやぁ、改めてお礼を言うよ。ありがとう。」

「いえいえ、さっきも言いましたがお互い様ですので」

「それにしても……そっちの女性は強いんだな」


 そう言いつつ、シアンさんの方を見る。少し頬を赤らめながら、顔やら胸やらをちらちら見ている。分かるよ。シアンさん胸大きいもんね。


「ええ、まあ……そう言えばあちらで石になっている人はいいのですか?」


 そういやさっきからほったらかしにされているもう一人の仲間はいいのだろうかと聞いてみる。完全に石になっているが死んでいるのだろうか。


「ああ、ここじゃ回復させる手段がないからな。地上に出て石化解除の魔法を使うやつに頼まないとな」

「せっかくここまで来たのにな」


 そう言いながら石になった男性を担ぐ冒険者たち。


「くっそ重いな」

「しかたねぇだろ。命が助かっただけでもめっけもんだよ。」


 彼らはこの後、仲間の石化解除のため地上に戻るそうだ。


「じゃあな、ありがとうよ」


 そう言って去って行こうとする冒険者たちだが、……そう言えばあれを聞いておいた方がいいかな。


「すみません。ちょっとお聞きしたいのですが、この階層に開かない扉があると聞いたのですが何か知りませんか?」


 ここは古代魔法文明の遺跡なのでその奥におたらが眠っている可能性がある。


「ああ、それならここをまっすぐ行って、えーと……3番目の角を右に、その次を左に行った奥にあったはずだ」

「そうですか、ありがとうございます」


 そう言って、冒険者グループとは別れた。



 そして、冒険者グループに教えてもらった通りの道を進むこと10分。扉が見えてきた。

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