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22話 ダンジョンに行こう

 その後、どこかに図書館のようなものは無いかと思い探してみたが……なんとギルドに書庫があるぐらいだという。


 なので、結構かっこ悪いがまたギルドに戻ってきた。


 ギルドの書庫は入るのにお金を取られた。さらに持ち出しや写本も禁止だという上に、破損した場合は罰金まである。まあ本が高価なものであるこの世界なら仕方ないのかもしれない。

 書庫に入ってみると、なんと以前いた教会と同程度の量だった。つまりそこまで多いものではない。ただ冒険者ギルドの書庫というだけあって、ラインナップはかなり違い、魔物や植物の生態などに関する本がほとんどだった。あとはサバイバルに関する本とか。


 俺としては、日本に帰る方法を調べるためにここに来たのでそれらしい本が無いか見ていく。

 すべての背表紙にある題名を見て行った結果、先代勇者に関する本が3冊ほど見つかったのでそれらを抜出し、書庫に備え付けられている椅子に座りそれらを読んで行く。


じ~


「…………」


 じ~


「…………」


 じ~


「あの……シアンさん、そんなところに立っていないで座ったら?」

「いえ大丈夫です。」

「そう……そ、そうだ、あとでここのダンジョンの情報についても調べたいのでわかりやすい本を見繕っておいてくれるかな?」

「……分かりました」


 シアンさんはようやく俺の横から離れて書棚を確認しだした。

 よし、これで集中できる。

 そうして帰る手掛かりを求めて本を読んで行った。


 結果としては役に立たなかった。これらの勇者に関する本は歴史的事実を記したものではなく、物語又は英雄伝のような編集がなされていた。勇者が元の世界に帰ったこと、帰り方ついて詳しく書かれていたものはなかった。すべて「魔王を倒して世界は平和になりました」や「その後皆は幸せに暮らしていけました」のような締めくくり方で終わっている。


「ふぅ、……さすがにいきなり都合よく見つかったりはしないか」


 いきなり見つかるとは思っていなかったが、やはり少しがっかりする。


「主様」

「うぉぁ!」

「……? こちらがダンジョン関連について分かりやすく記してある書物となります」


 いきなり声をかけられてビビったが、いつの間にか横にシアンさんが戻ってきていた。その手には2冊の本を持っている。


「あ、ああ、ありがとう。読ませてもらうよ。」


 そう言って、シアンさんの持っていた本の一冊を手に取って読んでみる。

 ――オーダシティのダンジョンとは古代魔法文明の遺跡である。


 ん?


 ――事実5階層の奥には何人も入れない扉がある。


 んん?



 ◇◇◇



「ここがダンジョンか」


 今俺たちは、ダンジョンの入り口に来ている。あの後調べた結果、このダンジョンの構造は地下5階でそこまで広くも深くもない。魔物もそこまで強いものが出るわけでもないため安定的に魔石をとることができ、街の発展に貢献してきたとあった。


 ダンジョンの入り口はただの階段だったようだが、その周りをそれなりに立派な建造物が囲みいかにも入口っぽくなっている。さらにその周りには魔物がダンジョンから出てきたときのための柵が設けられており、入口には武装した兵士のような男性が5名ほどいる。

 といっても、今の所ダンジョン内の魔物の量に比べ冒険者の数と狩るスピードがそれなりなので、魔物がダンジョンからあふれてくるという自体は起こっていない。


 なおダンジョンは出入り自由だ。あからさまにおかしい――女子供だとかの場合は入り口にいる兵士に止められるが。

 何か兵士の人たちがこちらを見ているが気のせいだろうか……声もかけられないし大丈夫だろう。


 ダンジョンに入っていく。

 

 中を進んで行くが、正直真っ暗だったので魔導ランプを掲げる。何かと役に立つ魔導ランプである。これは買っておいて正解だったな。


 さてダンジョンの中だが、ランプに照らされておどろおどろしい雰囲気を放っている。普通の洞窟などとは違いボロボロになってはいるが変に人工的な壁がありそこを植物のようなものやコケなどが覆っている。後になって補強したのであろう木の柱なども見える。

 というか、こんな雰囲気の場所をどこかで見たことがあるような気がする。


「ダンジョンってこんな雰囲気なのか」

「ここも変わりましたねぇ。本来はアトランティア王国第51陸軍基地があった場所だったはずですが。やはり3000年というのは長い時間なのですね。」

「…………は?」


 今なんて? というか思い出した。あれだよ、シアンさんがいた建物に似てるんだよここの雰囲気。


「ギギィ!」

「うぉっ!」


 そんなことを考えていたらいきなり横道からゴブリンが出てきた。急に出てきたのでまだ武器を構えてすらいなかったのだが、瞬きした次の瞬間には壁に激突し、潰れたトマトみたいになっていた。


「大丈夫ですか、主様?」


 そして俺の横には蹴り上げた足を下しているシアンさんが


「……ああ、ありがとう」

「いえ……やはり私が前に立った方がいいのでは?」

「ランプを持っているのは俺だし、シアンさんにランプを持ってもらうといざという時動けなくなるだろう。一応頼りにしているんだから」

「主様……」


 シアンさんが感極まったみたいに目をキラキラさせている。何か勘違いしているようだが、先ほど言ったようにいざという時にはシアンさんに対応してもらわなければならない。情けない話だが、正直シアンさんのステータスに比べれば俺なんてカスみたいなものだからな。


 このダンジョンは先ほど言ったようにゴブリンやコボルトなど弱い魔物しか出てこない。出てきてもオークが精々だという。1対1なら俺でもなんとか勝てるレベルの魔物相手なのにシアンさんに全部任せるというわけにもいかないだろう。


 そうだよ。かっこつけたいんだよ。男の子だし。

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