21話 ギルド
翌日、オーダシティの冒険者ギルドに向かってた。
理由は依頼の受注と、シアンさんが登録できるのか確認するためだ。
冒険者資格は一定期間依頼を受けないと失効するので、このあたりで何か簡単なものでいいので受けておきたい。
冒険者ギルドは看板が出ているので、分かったのだが、少し大きめの建物ではあるが見た目は周りの建物と同じような色合いの建築で、周りの建物も大衆食堂だったりで大きな建物がたまにあるので、看板が無いと分からないかもしれない。
扉を開き中に入ると、まずエントランスがありその奥にカウンターがいくつかある。
ところでここはその横にテーブル席などが並んで軽食や酒などを出す店があるようだが、王都のギルドもこういう造りだったよな。こういった所は酒場を併設しなければならないという決まりでもあるのだろうか?
カウンターに進んで行くが、席についている強面のオジサンたちがこっちをガン見している。こういう場は慣れない。さっさと用事を済ませてしまおう。
まあ、ただの被害妄想でみんなが見ているのはシアンさんだったりするのだが。
「すみません、ちょっと聞きたいことがあるのですが」
「はい、なんでしょうか?」
受付に座っていたのは、まだ年若い女性だった。いかにも受付嬢という感じがする。こういうのは定番だよね。王都では男だったし感動すらしてきた。
「えっと、こっちの……マリオネットっていうんですか、そう言うのってギルド登録ができるものなんでしょうか?」
「マ、マリオネット? なんですかそれ?」
マリオネットという言葉が通じなかった。そう言うのは今の時代は無いのだろうか。
「ロボット? じゃないな……魔力で動く人形? みたいな魔道具ってないんですかね?」
「はあ、魔導人形の事でしょうか? えっと、あなたがオートマタを所有していると?」
「ええ、こちらなんですが」
そう言って、シアンさんを示すと受付嬢は途端に胡散臭いものを見る目になった。
「あなた何を言っているんですか? そちらの人は人間でしょう?」
「あ、いえ、こっちの彼女はその……オートマタ? みたいなものでして」
「はぁ!? 何言っているんですか、そんな精巧なオートマタがいるわけないでしょう! 馬鹿にしているんですか。」
「…………」
どうしよう。完全に怒らせてしまった。
そう言えば今思い出したが、確かオートマタって単純作業をやらせる木製の人形だったっけ。確か教会にあった本でちょろっと見たような気がしてきた。
ちなみに、世間一般で言うオートマタのイメージは等身大のデッサン人形である。一部魔道具製造者の間では木材以外に金属などを使用し耐用年数の増大を図っていたり、貴族の間ではどれだけ人間に近づけたものを所持しているのかというのがステータスとなっていたりする。なお一番人間に近いとされるオートマタでもその外見はマネキン程度である。
「すいません。ちょっとしたジョークですよ。……あー、彼女を冒険者登録したいのですが」
「……わかりました。ではこちらを記入してください。あとステータスカードは持っていますか」
「いえ、持っていないのでそちらもお願いします」
「はい、では登録料とステータスカードの発行料として合計銀貨7枚となります。」
受付嬢さんはいまだ少し機嫌が悪そうだがしょうがない。記入用紙をシアンさんに渡し、銀貨7枚を払う。
「じゃあこれ書いて、書けるところだけでいいから」
「分かりました……主様、年齢はどうしましょうか?」
「ああ、空欄でもいいんじゃないかな」
「分かりました」
そう言ってさらさらと記入していくシアンさん
あれ? そう言えば、ステータスカードはどうするんだ? シアンさんて血液とかあるのか?
「な、なあ、シアンさんステータスカードって使える?」
「ステータスカードですか、使用可能です。ただマリオネットがステータスカードを使用する意味が分かりませんが? あくまで私たちは主様に使える物ですので」
「…………」
「はい、これが新規のステータスカードです血液を付けて登録してください」
ちょっと反応に困っていたら、受付嬢さんがナイスタイミングで声をかけてくれた。
「じゃあ、これを……シアンさんは血とか出るの?」
「体内を循環している液体……人工血液ですが、それで同じように登録ができますが……これがステータスカードですか、少し能力が制限されているようですが」
どういう事だろうと思い、ひそひそとした声で聴いてみた結果、昔――古代魔法文明時代のステータスカードに対して表示能力等が少ないらしい。あとこれ当時は身分証とかではなくて政府が管理する戸籍のようなものだったらしい。
その後、シアンさんは指に傷をつけステータスカードに押し当てた。
「シアンさんのステータスってどうなんだ?」
「ご覧になりますか? どうぞ」
シアン
Lv:-
種族:人型戦闘機
性別:女性
年齢:-
職業:無職
体力:5500
魔力:4120
攻撃力:6500
防御力:5800
魔法攻撃力:2800
魔法防御力:4200
素早さ:2200
スキル:-
「うん?」
あれ? すごくね? 確か境界で聞いた話では成人の平均が5~10程度、100を超えれば有名人、300を超えれば英雄といったところだったはず。
東雲君だって確か各ステータス100台だったはず。今はどうなっているのか知らないが。
マリオネットパネェ
というか、あらためて比較すると俺のステータス低っいな。
「体力以下は非表示にしてね。習慣らしいから」
「分かりました」
そうして、登録用紙とステータスカードを受付嬢に渡す。
「はい、では登録しますので少々お待ちください。……あら? Lvと年齢が表示されていないわね……それに人型戦闘機って何?」
ぶつぶつ言いながらも記載事項を確認していく。
「はい、終わりました。ギルドカードをお返しします。ギルドの規則等について説明は必要ですか?」
「いえ大丈夫です。あ、そうだ、俺Fランク冒険者なんですが、何か簡単な依頼とか無いですかね?」
「依頼はあちらのボードに貼ってあるので各自でご確認ください。」
めっちゃそっけなかった――
「ただ、この街はダンジョンがありますので、魔石の収集は常設依頼としてあります。ダンジョンに出る魔物も弱いですしおすすめです。」
――と思ったけどそんなことなかった
「ありがとうございます。じゃあダンジョンに行ってみようと思います。」
そう言って受付嬢に会釈しカウンターを離れたのだが、
「おう、ちょいと待ちな」
「へへへ、綺麗なねぇちゃんじゃねぇか」
「どうだい、そんなやつより俺たちと一緒に冒険にいかないか」
すぐに絡まれた。というか内容からシアンさんのナンパ目的だろう。
こういう時は男の俺がしっかりしないとと思うのだが、目の前にいるのはヒャッハ―の世界から出てきたようなガタイのいい男3人組。
勿論ステータスのある世界なのでムキムキなのに見かけ倒しだとか、逆にヒョロイのに強いとかもあるのだがそんなのは少数派だ。
今まで平穏無事な生活を送ってきた俺にはガタイのいい男3人組を前にしてカッコよく立ち去る方法とか知らない。
「あのすいません。俺ら急いでいるので、」
「ああん? テメェには聞いてねぇよ」
「そうそう、俺らそっちの美人のお姉ちゃんに声をかけているんだから」
「俺ら、Dランク冒険者なんだよ、初心者みたいだし俺らが優しく教えてやるよ」
うーん、お前はお呼びじゃねぇと言われてしまった。ここで逃げだすとかはさすがにかっこ悪いな。だからと言って立ち向かっていって勝てるとも思わないし。
「あの、本当にその辺で……」
何とか会話でうやむやにしようとするが、どうやらその態度が相手の癪に障ったようだ
「テメェはうるせぇよ!」
男の一人が、拳を振りかぶり殴り掛かってきた。短気な人だったようだ。あわてて手で防御しようとするがどの程度の効果があるのか……
だが、その拳が俺に届くことはなかった。
「主様に手を上げるな」
「いてっ、いてててぇ!」
シアンさんが殴り掛かってきた男の拳を掴んで、ギリギリと締め上げていた。
「いててて、てめぇ離せよ!」
「おい、姉ちゃん、ちょっとかわいいからって調子に乗ってんじゃねえぞ!」
他の二人が手を掴まれている男の両脇に移動してくる。
「主様、これらは障害だと判断します。排除してもよろしいでしょうか?」
「え? あ、ああ……」
「では――」
言うが早いか、シアンさんが目にもとまらぬ速さで3人を地に沈める。速すぎて何をやったのか全然見えなかった。ただ男たちはピクピクと痙攣しているから、気を失っているか痛さで起き上がれないかどちらかだろう。まあいいがチャンスだ。
「えーと、じゃあ行こうか」
「はい」
そうして俺たちは男たちを避けてギルドから出て行った。
強引なナンパを防ごうとして女性に助けてもらうとかどうなんですかねぇ。とちょっと傷ついたのは内緒だ。
ちなみに今の騒ぎを見ていた人たちの間では少し騒ぎが起きていた。
「おいおい、今の見えたか?」
「いいや、全然」
「何者だよ、あいつら」
1話ぐらいに書いた、短い話を高頻度で更新ということがすでに破綻中です。




