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輝ける陽のあたる世界~ツンデレ悪役令嬢と一緒に幸せ学園生活!のんびり日常するだけのVRMMO~  作者: 砂礫零


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7-2. 学園祭~開始前~(2)

「ミシェルぅぅぅ!」


 俺は完全に語彙を失って見とれてしまった。

 ミシェルの()()()()スタイル…… かわいすぎるぅぅぅ!

  濃紺の生地に、レースをあしらった広めの襟。白いレースのエプロン。ヒラヒラの短めスカートからは、ガーターベルトがちらっとのぞく。

 ―― 一生このスタイルでいてほしいっ!


「まあ、男子がメイド服っていうのは、学園祭あるあるよね」 と、エリザが興味なさげな声を出す。


「けど、必ず人気は出ますから」


 ふふっとサクラが笑った。

 売上倍増ですね、っていう、ちゃっかりした計算が聞こえてきそうだ。


「さあっ、行くか、ミシェル!」


「うんっ、おね…… おにいちゃん!」


 ミシェルは俺の腕にぎゅっと、つかまってくれた。嬉しそうだな。

 エルリックにイヅナにジョナス、イケメンNPCメンバーズは、お祭り会場にいた。

 先にきて、屋台を組み上げてくれていたんだ。

 高級木製の台にベタベタとメニューが貼り付けてあって昔懐かしい (?) 感じを演出している。屋根にはエリザ作成、阿鼻叫喚の…… げほっ、とっても芸術的な看板。


「やぁ、みんな軍服カッコいいね」 とエルリックがほめてくれる。


「みなさん、スタイリッシュで良くお似合いです」 と、ジョナス。無表情+棒読みだ。

 エルリックに合わせようと思ったんだろうな。腰巾着だからな、ジョナス。

 イヅナがうなずきながらサムズアップしてみせた。


「たまにはそういうのも、新鮮でいいな!」


 ちなみにそういうイケメンNPCメンバーズの服装も、ミシェルと同じ。

 すなわち、メイド服なのだ!

 売上げ3倍増しですね、とサクラがつぶやいた。

 キラキラエフェクトを放ちながらエルリック王子が俺をまぶしそうに見る。


「とてもきれいだよ、ヴェリノ」


「エルリック王子もいいぞ! 実は、そういうのも似合うんだなー! イケメンは何でも似合うって本当だな!」


「……そんなことないよ」


 おおおっ、ちょっと照れてるエルリック王子! かなりかわいい!

 すらっとしてるんだけど筋肉がしっかりついて骨ばった脚が短いスカートからのぞき、カチッときれいなラインを描く鎖骨がレースの襟からちら見えするのが、なんだか背徳的ですらあるっ……

(ちなみにメイド服のデザインはサクラだ)

 

「いよっ! ミス学園!」


 ここで俺は、ちょいちょい、とサクラからつつかれた。コソコソと耳打ちしてくる。


(ほかの人もほめてください! 王子の好意値だけ上がっちゃいますよ!)


 な、なるほど。


(けどさ) と、俺はサクラに耳打ち仕返した。


(イヅナは、サクラから誉められた方が嬉しいだろ?)


(わたしのことはいいですから! ヴェリノさんの好意値のほうが大切です)


(サクラってほんと、いいひと……!)


 俺はちょっと感動した…… でも、イヅナの気持ちは?

 前の看板デザインの投票では、イヅナはサクラを選んでいた。その後の態度からも、イヅナはサクラが好きなのが、明白……!

 ほめられるなら絶対、好きな子からがいいよね!


 俺は、手を上げて呼んだ。


「おうっ! イヅナ!」


「ん? なんだ?」


「サクラがなー、イヅナのそのカッコ、超似合ってて素敵だって!」


「……えっ!? まじか?」


「まじ、まじ!」


 ほら、めちゃくちゃ嬉しそうな顔してるぞ、イヅナのやつ! なにしろ、さっきから、ずっと目でサクラばかり追ってたしね!

 ふっ、俺、いい仕事した……


「ちょっ…… ヴェリノさんっ!?」


 サクラが慌ててる。

 けど、イヅナには恥じらってるようにしか見えてないよな。だってサクラって普段落ち着いてるぶん、慌てた表情がすごく新鮮なんだもん!

 イヅナは嬉しそうにスカートの両端をつまんで、ヒラヒラさせてみせている。


「じゃあオレ、ずっとこのままでいよっかなー!」


 うん、それもいいと思うぞ、イヅナ!


 さて、次はジョナスか ―― たしかジョナスはエリザ推しだったよな。


「エリザもジョナス、ほめてあげたら?」


 「ふっ、ヴェリノ。あなたわかってないわね!」


「いやわかってるよ! 看板の投票も、ジョナスはエリザだった 「だ・か・ら!」


 磨かれたブーツのつまさきを苛立たしく上下に動かしながら、エリザは俺の耳元に唇を寄せた。


(逆ハーレム作りにNPCの気持ちを(おもんばか)る必要など、なくってよ!)


 ええっ、それはちょっと……


(タイプは違えど、ほめられたら好意値が上がる、イージーなオトコばかりなんだから、このゲームは!)


 いいかた!

 ―― まあつまり、エリザはジョナスをほめるつもり皆無、ってことだよな。

 しょうがないか…… なら俺が、ほめてあげよう、ジョナスを。

 って言っても ―― この人なんだか俺に敵意持ってるっぽいし、ほめても逆にキレられそうで怖いんだけどな!?


 それに、なんだろう。

 特に骨太ってわけでもなく、どっちかといえば、細い銀縁眼鏡が似合う繊細なカオしてるんだが……

 正統派ロイヤル男子のエルリックよりも、ワイルド系日本人系男子のイヅナよりも、こいつが一番。

 メイド服、似合ってねぇ……。

 ―― なんていうか、雰囲気はもの柔らかなのに底にある冷徹さが隠れてないっていうか、隠すつもりもない…… よな?


「何をじっと見ているんですか?」


「うっ……別に…… その、こんなメイドさんいたら絶対に本職疑っちゃうなとかなんとか」


 しまった……!

 ついウッカリ、本音が……っ!


「い、いや、そうじゃなくてだな! その、キリリとしすぎた感じが怖いな、……いや! 違うんだっ!」


 俺のバカぁぁぁぁっ!

 またしても、本音が出ちゃったじゃないか!

 いくら、ジョナスが苦手だからって、これはない!


「つ、つまりその、高貴(こーき)っていうの? そんな感じだから……」


 しどろもどろで言い直す、俺。

 ―― ちゃんとフォローになったかな、と上目遣いで反応を窺えば。


 ふっ、とジョナスの口元が緩み、その手がすっと俺のほうに伸びる。


 やややヤバい!

 ……どう考えても、胸ぐら掴まれて 「フザけるのも大概になさい」 とか言われそうっ!

 もー俺、ほんとコイツ苦手かも!

 と、とりあえず、覚悟を決めよう。

 ―― 俺は、ぎゅっと目をつぶった。

 頼むから、あんまり痛いことしないで、ジョナス……!

 


 ………ぽん。


 軽い感触とともに手の重みが、俺の頭のうえに乗った。意外と温かい手だ…… って。

 これやってるの、もしかしなくても。

 ―― ジョ、ジョナス様っ!?

 アンタ何、冷酷キャラに似合わない真似をしてらっしゃるんですか!?

 ……びっくりしすぎて思わず敬語になっちゃったよ!


「高貴なのはあのお方です。間違えないように」


 ジョナスは俺の髪をすっとなで、当たり前のようにエルリック王子の隣に戻ったのだった。


―― このジョナスの反応で、このあと学園祭での予定がちょっと変わってしまうことになるのだが俺は、まだそれを知らなかった。



7/26 誤字訂正しました!報告下さった方、ありがとうございます!

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◆日常系の異世界恋愛作品です◆ i503039 

バナー制作:秋の桜子さま
― 新着の感想 ―
[一言] ふああああ、もうめちゃくちゃ面白いです。 こうやって男の子が意図せず女性キャラになってしまうのがとても可愛らしくて、ニヤニヤしてしまいます。もふもふし放題なサポート役も可愛すぎる。腹に顔を埋…
[良い点] うーむむう……。 女子の男装はともかく、男子の女装は基本ネタにしかならんと思うておったのですが……。 イケメンはそれすらもなんとかするというのか……恐るべし。 そして、むむ、ここから至る…
[一言] ヴェリノは根っからのお人好しだから、良かれと思って引っかきまわしちゃうんですよね。
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