第九十七話【一人を選ぶ】
冒険者たちは全員立ち止まり、俺を睨んでくる。
普通に怖い。
「ここはB級の魔物、コモルドラゴンが生息している場所よ? 見たところ君は子供みたいだけど……Cランク冒険者程度の子が来れるような所じゃないわ」
青い閃光さんは険しい顔でそう言った。
子供みたい? ……それって身長が小さいということかね?
にしても、ここってコモルドラゴンが生息している洞窟なんだな。
全然いなかったぞ?
まあ多分、赤いコモルドラゴンのオーラに危険を感じて、ほとんどの魔物たちが逃げて行ったって感じかな?
実際途中に、逃げ遅れたであろう魔物の骨があったし。
て、今そんな分析はどっちでもいい。
俺は少しの間、どうすれば怪しまれずにここから立ち去れるのか? を無言で考える。
考えた結果。
「あ、そうだったんですか。ちょっと山まで薬草を取りに来たんですけど……気付いたらこの洞窟に辿り着いちゃって。でも、特に魔物なんていなかったですよ?」
俺の言葉に、全員はえっ? という表情。
適当な嘘を言っている間も、なるべく目元を見せないようにする。
あまり顔を覚えられたくないんでな。
「そもそもCランク程度が辿り着けるような場所ではないと思うけど、まあそれは置いといて。奥に魔物がいないというのは本当?」
「はい。けど途中で怖くなって最奥までは行ってないので、詳しくは分かりませんが」
すると、青い閃光さんは顎に手を置き、
「そう…………じゃあ行く価値はあるわね。カールさんはどう思います?」
「俺も同じ意見だ。……だけど、どうも腑に落ちねぇ。お前はどうやってここまで辿り着いたんだ? 山の中には強い魔物がたくさんいただろ?」
あ、俺こうやって深く掘り下げて来る人嫌い。
「まあ、こう見えても結構腕には自信があるので。……ですが草原とかと比べてこの山や洞窟には魔物が少なくないと感じるんです。何かあったのでしょうか?」
何も知らないですよアピールをしてみたが、これが凶と出るか、大凶と出るかは知らん。……て、どっちも悪いやんけ! せめて凶にして。
俺の問いかけに対し、カールさんは不思議そうな表情で口を開く。
「お前、最近この辺りで起きていることを知らないのか?」
赤い魔物についてかね?
ギルドの受付の人に聞こうと思ったけど、教えてくれなかったんだよ。
「え……ああ、はい」
「じゃあ一応説明してやるが、ここら辺に今までに前例のない赤色の魔物が出たんだよ。そのせいでこの山付近から普通の魔物のおおよそが逃げてしまっている。ある程度は残っているがな」
カールさんがそこまで言ったところで、青い閃光さんが横から割り込んで来た。
「カールさん? それはあまり言わない方がいいかと。……秘密事項ですし」
「おお、そうか。悪い悪い」
だろうな。
Cランクって言ったら受付の人……赤い魔物の位置を教えてくれなかったもん!
カールさんは頭を掻きながら青い閃光さんに謝った後、更に続ける。
「……お前さん、悪いな。というわけだ……じゃあ俺たちは先を急ぐが、一人でも帰れそうか?」
おお、ありがたい言葉。
俺は若干嬉しさを顔に出してしまいつつも、
「あ、大丈夫です!」
これで別れることが出来れば、よかった。
そう、過去形だ。
つまりよくならなかったんだよ!
俺とカールさんのやり取りを横で見ていた、緑髪の眼鏡を掛けた女性が突然喋り始める。
「あの~? 誰か一人がこの子を街まで送り届けた方がいいかと……」
おい! うるせぇ。
やめろー。
少しだけ予想していたけど……それ、一番いらない言葉。
向こうは親切心のつもりだろうが、こっちからすると邪魔でしかない。
なんで別の人と一緒に帰らないといけないんだね?
ここから街まではかなりの距離があるんだぜ?
なのにその間、ずっと顔を見られないようにしないといけないのかね?
その間の質問も、全部答えないといけないのかね?
不都合ばかりだよ、この野郎。
大凶だ、馬鹿野郎。
俺の心の声と同時進行で、向こうの会話が進んで行く。
「確かにそう言われたらそうだな。いくら魔物が減っているからと言っても、万が一強い魔物に出くわしたら死ぬ可能性がある」
「で、誰が行きますか?」
「あの子に直接選んでもらうとか?」
「おお、それいいじゃねぇか。……まあ、このカール様を選ぶだろうがな」
「「…………」」
「「…………」」
「おい! 何故みんな黙る!?」
勝手に話を進めてやがる。
そして俺に選ばせると?
ミスターおっさんのカールさんは、絶対に選ばん。
そもそもこの話題を出して来やがった緑眼鏡さんも嫌だね。
つまり……。
美人で綺麗で美しい青い閃光のレイナさんで! と行きたいところなんだが……断ろう。
そもそも、断れるかどうか分からんが。
「という訳で……誰がいい?」
緑眼鏡さんが俺の方を向いた。
「いえ、一人で大丈夫です」
「そういう訳には行かないわ。君がここまで辿り着けたのはあくまで偶然だと思うし、帰りも安全だとは限らないわ」
偶然じゃねぇよ。
正直あんたより強いわ。
にしても、やはり一人では帰らさせてくれない……か。
となると誰かを選ぶしかないな。
「では……そこの青髪の女性で」
レイナさんを指さしてそう言った。
するとレイナさんは、えっ? という表情で口を開けつつも、
「わ、私?」
「はい。お願いしたいです」
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