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第七十一話【反抗期?】

「あ、あのさ……」


 俺が静かにそう問いかけようとすると、

 

「ん?」


 悪気のなさそうな顔で、ティナさんは疑問の声を上げた。

 

 ‥‥‥やっぱり言えない。

 こんな顔をされて言えるはずがない。

 

 いくらこちらが少しばかり迷惑だと思っていても、向こうはただ仲良くしたいだけなのかもしれん。

 

 中々喋り出さない俺を見て、ティナさんは首を曲げる。

 

「あ、いや。やっぱり何でもない」

「そっか。じゃあ遅れそうだし、急ごう?」

「‥‥‥うん」


 結局、今日も伝えることが出来なかった。

 

 

 次の日。

 

 

 今日は、美術室目指して広めの廊下を歩いている。

 横には勿論ティナさん。

 騎士コースで唯一まともに話が出来る友達だからな。

 

 けど俺たちは、昨日に比べて口数が少ない。

 おそらくティナさんも薄々そのことに気付いていると思う。

 

 多分、俺が話し掛けないせいでこうなっている。

 

 いつも会話を始める為に話題を振るのは、ティナさんが七割、俺が三割。

 つまり俺が黙っていたら会話の数が三分の二程度になってしまうのは、数学的に考えれば分かることだ。

 

 と、その時。

 

「おい、あいつ。魔術コースのリーフ=リランディさんと付き合っている平民じゃね?」

「あ、ほんとだ。別の女と歩いているぜ」


 そんな会話が耳に入って来た。

 

 ‥‥‥あ?

 

 声のした方を向いてみると、壁際にいる男子二人がこちらをチラ見していた。

 

 知らん顔だ。

 今まで一度も見たことがない。

 俺と同じ二年か?

 いやこの際、上級生でも構わん。

 

 俺は無言でティナさんの横から離れると、そいつらに向かって歩き出す。


「レインくん、どこに行くの?」

「ごめん、先に行ってて」


 心配そうな表情で聞いて来たティナさんに俺は軽くそう答え、壁際へと寄る。


「えっ、でも───」


 そんなティナさんの声が聞こえて来るが、無視。


 何故こんなに腹が立つのだろう。

 ただ子供から馬鹿にされているだけなのに。


 去年までは軽く無視出来ていた。

 けど、最近こういうことがよくある。

 何て言うんだろう、すぐ頭に血がのぼりそうになるのだ。


「おい、あの平民‥‥‥近付いて来てないか?」

「俺たち貴族に勝てると思ってんじゃね?」


 うるせぇよ、親の肩書き以外に価値のねぇゴミども。

 

「あのさ、俺に何か用?」


 おそらく同学年であろう二人組のそばまで近付き、かなり優しく尋ねた。

 すると、

 

「は? 誰が平民に用があるって?」


 冴えない顔の野郎が、左右非対称に眉間を歪ませてそう言い返して来た。

 

 何だこいつ。

 誰に口聞いてんだ?

 

 俺は顔を近付けるとともに、下から睨みつつ威圧する。

 

「お前だけど?」


 するともう怖気づいたらしく、冴えない顔の野郎は一歩後ろに下がり手を壁につける。

 そして必死そうな顔で、


「おい、近付くな、汚ねぇ」


 は?

 

「うるせぇよ」


 小さくそう呟いて、靴の裏を相手の太ももに当てると、潰れない程度に押し付ける。

 肉が圧縮されていく感触がする。

 気持ちいい。

 もっと押したいな。

 けど、やっちゃったらこいつの足が使い物にならなくなるだろうし、我慢してやるか。

 

「い、痛い痛い!」

「もう一度聞くよ? 俺に何か用?」


 二回目のチャンスをあげる俺って、優しい。

 

「な、何でもない。痛っ! ご、ごめん」


 もう負けを認めおった。

 相手は冴えない顔を歪めつつも、両手で俺のすねをズボン越しに掴んでいる。


 もう一人の奴は怯えた表情で、俺と冴えない顔を交互に見ている。

 どうしたらいいのか分からないのだろう。

 

「足から手を離してくれない?」

「‥‥‥」


 冴えない顔の野郎は、言われた通りにズボンから手を離す。

 無言であることからして、相当余裕がないのだろう。

 痛みに慣れてなさすぎだろ。

 

 俺は柔らかい太ももから足を退けてあげた。

 

「次に陰で何か言っているの見つけたら‥‥‥殺すから」


 そんな俺の言葉に対し、二人は無言で頷く。

 その表情は、まるで一般人がドラゴンと出会った時ようだ。

 

「あー、あとさ。このこと誰にも愚痴らない方がいいと思うよ? 平民ごときに無様な姿を見せたとあったら、恥ずかしいのは自分たちでしょ?」

「‥‥‥わ、分かった。忠告ありがとう」

「もう関わらないから、安心してくれ」


 二人はそう言うなり、どこかへと去って行った。

 

 はぁ~。

 全く、俺が平民だという情報はどこまで届いてんだ?

 別にバレても全く問題ないけど、それをどうこう言われるのは流石にイラついて来た。

 陰でごちゃごちゃ言われるのはなおさらだ。

 今度からは、見つけ次第ボコす。

 そしたらいずれ誰も馬鹿にして来なくなるだろ。

 

 てか正直、学園主催の武闘大会に出てある程度少し勝ち上がるだけで、絡んで来たりごちゃごちゃ言う奴はいなくなると思っていたんだけど‥‥‥。

 やっぱりいるにはいるんだな。

 

 ‥‥‥というか今気付いたんだけど、俺が平民っていう情報を公に流したのって‥‥‥もしかしたら武闘大会の実況をしていた教師じゃね?

 声だけで誰かは知らんが、やたら俺のことを平民、平民と連呼していた。

 

 普通に学園生活を送っているだけだと、別のクラスにまで知れ渡ることはない。

 つまり、あの実況のせいだ。

 おい。

 いい加減にしろよ。

 

 ‥‥‥。

 あ~。

 ダメだわ。

 最近やっぱりすぐにイラついて来る。

 反抗期か?

 いや、もしかすると生理の周期が回って来たのかもしれん。

 っていう冗談は置いといて、まじで色々とうざい。

 あまり感情的になるのはよくないって分かってんだけどな。

 主に体の細胞たちがいうことを聞いてくれない。

 気に食わないことがあると、すぐにうずうずしたり手が出そうになる。

 

 自身の反省をしつつも、俺は再び美術部方向へ向かう。

 

読んでくださりありがとうございます。

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