第四話【両親は元冒険者】
‥‥‥ちょうどいい機会だし、ちょっと色々とこの人に質問してみることにする。
「ねぇ、まえからきになってきたんだけど、おかあさんってなにものなの?」
まず最初にそう聞いてみると、母親はこちらを振り向かずに口を開く。
「昨日お父さんも言っていたけど、お母さんは昔冒険者をやってて、いろんな人から疾風の拳って呼ばれていたのよ」
「へぇ、そうなんだ。かっこいいね‥‥‥でもしっぷうってよばれるほど、はやかったの?」
「まあ、あくまで昔のことなんだけどね。まず冒険者の説明からしよっか。レインは頭がいいから理解出来ると思うわ」
おー、こういう情報は聞いておきたいな。
「うん。ききたい」
「えーっと、冒険者にはね、それぞれランクがあるの。種類は下からF、E、D、C、B、A。そしてS」
ふむふむ。よくあるパターンだな。
「なるほど。で、おかあさんのらんくはいくつだったの?」
「お母さんは残念だけど、A止まり」
おーん? Aで残念なのか? 普通によさそうに聞こえるんだけど。
「それって、つよいほうなんでしょ?」
「一般的に見ればね。けどやっぱり上には上がいた。お母さんはAランクだったけど、その中でも下の方だったわ」
「そっか。‥‥‥あ、ちなみにおとうさんは?」
「お父さんはSよ! それもかなり上の方の」
げっ、まじかよ。俺、そんな人から剣術を教わってたのか?
どうりで勝てる気がしねぇ訳だ。
「ほ、ほんとう?」
「ええ。‥‥‥子供のレインに言うのもなんだけど、お母さんは昔一人でAランクのクエストを受けてて、敵に殺されそうになった経験があるの。もう駄目だと思って死を覚悟したその時、たまたま通りかかったお父さんが助けてくれてね、それ以来お母さんはお父さんのことが好きになったわ」
なるほど、そんな事情があったとはな。やるじゃねぇか親父。
「おとうさん、すごいひとだね」
「うん」
「あ、あとさ。かいものとかをしているおかねって、どこでかせいでいるの?」
これは生まれた時から気になってたわ。
お母さんはずっと家にいるし、お父さんも家で特訓しているか魔物を狩りに森へ行っているか、のどちらかだもんな。
「お金については問題ないわよ。お父さんとお母さんは二人共、一生分のお金を冒険者時代に稼いでいるんだから」
二人共が一生分って‥‥‥。
さっきAランクが残念みたいに言っていたけど、十分凄いわ!
まじで両親二人共何者だよ!! 化け物じゃねぇか。
「へぇ、‥‥‥さっきからおどろいてばかりだよ」
その後、俺と母親はかなりの距離を歩き、やがて村へと到着した。
いや、まじで遠かったわ。俺は普段から体を鍛えているから来れたけど、普通の三歳児は無理だぜ?
あといつも母親が買い物に行っている時間は、今日ここまで来た片道の時間と同じくらいだと思う。
つまり、かなり移動速度を落としてくれているのだろう。
このことから、母親の化け物っぷりがよく分かる。
そして道中の戦闘。
圧倒的だった。
何種類かの魔物を戦っているのを後ろから見学していたけど、うん、何も言えねぇ。
因みに俺がゴブリンと戦うっていう話だが、念の為帰り道の家の近くでやるらしい。
「じゃあ、行きましょ」
村の中へ入ると母親がこちらを振り向き、手を差し伸ばして来た。
「ん」
俺は頷いて手を繋ぎ、一緒に歩いていく。
迷子になりそうな森の中では繋がなかったのにも関わらず、村の中だと繋ぐんかい。
しばらくして‥‥‥。
買い物が終わったらしく、母親は木のかごを持って再び森の中へ足を踏み入れる。
「レイン、疲れたの?」
森の中を進み始めてすぐあまり元気がない俺を心配してか、話しかけて来た。
「うん。しらないひととはなすのって、けっこうたいへんだね」
いや、まじで大変だったんだぜ?
まず最初におばさんが「この子が奥さんの子供? あらー、可愛いわね~」と言って、頭を撫でて来る。
次に別のおばさんが「ぼくは何歳なの?」と顔を近づけて聞いて来る。
次にまた別のおばさんが「まだ三歳なのに凄いね~。このコミュニケーション能力だったり、きっとお母さんの育て方がいいんだね~」とか色々と俺を褒めて来て、再び頭を撫でて来る。
その度に俺は愛想笑いで丁寧な言葉を使い、母親と一緒にその場を離れた。
これを何回繰り返したと思っているのだね?
俺、もう人間不信になるかもしれんぞ。
「それはお母さんも一緒よ。よく長話をしてくる人がいるんだけど‥‥‥大変だもの」
へぇ、そうなんだ。
「おかあさんもたいへんなんだね」
「ええ、でもやっぱり人と仲良くしておいて損はないと思うわ。だからレインも、友達とか近付いて来てくれる人がいたら、ちゃんと優しくしてあげなさい」
「あ、うん。わかった!」
母親の言葉には妙な重みがあった為、俺は素直に返事をした。
きっと過去に何かあったのだろう。
あえて聞いたりはしないけどな。
それからしばらくの間歩き続けた。
正直全く方角が分からんわ。
この人、どうしてそんなに迷うことなく進んで行けるんだ?
数時間後‥‥‥。
「さぁて、じゃあそろそろゴブリンと戦おっか」
母親が不意にその場へ立ち止まり、こちらを振り向いて言った。
「この辺にいるの?」
「ええ。あそこの茂みから出て来るわ」
その言葉と同時に指を差した方向には、植物があるだけだ。
しかし母親がそう言っているんだから間違いないだろう。
そう思い数秒待っていると、
ガサッ!!
という音が聞こえて来た。
よし、来るぞ。気を引き締めろよ、俺!
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