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独立宣言と襲撃者たち

「モンスターを操る恐ろしい女が現れたらしい」

「しかもモンスターの国を作ると独立宣言したらしいぞ」

「そいつは前に要塞都市も襲った奴らしい。捕まったって話だったが、逃げだしたのか」


 シャルロットが魔物王として名乗りを上げたことは、あちこちで話題になっていた。


 同じことは市長でもできたんだが、そうするとこの街に迷惑がかかってしまう。

 市長1人ならともかく、この街に住んでいる多くの人に迷惑がかかってしまうのは良くないからな。

 だからこの作戦はあきらめていたのだが、シャルロットを奴隷としたことで代わりに宣言させることができた。


 戦力はこのあたりで手懐けたモンスターたちだ。

 冒険者を襲うモンスターは多いから、そういったものを討伐するクエストを片っ端から受けてまわり、強制的に奴隷としてシャルロットに従わせた。

 エリーやシェイドがこの辺りで活動してたのは、そういったモンスターを集める役割もあったんだ。


 もともと人を襲う凶暴なモンスターたちだ。

 どうせ討伐するくらいなら、世界平和のために利用したほうがいいだろう。


 おかげでこの辺り一帯にモンスターを使役するモンスターマスターがいると恐れられるようになったが、まあそれはそれ。

 それくらいの肩書きがあったほうが帝国に対する宣戦布告に説得力も出るだろう。


 今回の作戦の目的は2つだ。


 まずは戦争自体を延期させること。

 戦争がいつ始まるのかはわからないが、女神様がいうには数日以内ということだった。

 今すぐにはじまってもおかしくない。

 だがこれでもう数日は時間が稼げるだろう。


 そしてもうひとつの理由は、俺たちの名前を隠すことだ。

 表向きはシャルロットの命令で動いていることにする。だけど裏では俺たちが操っているという構図だ。


 奴隷王のように表に堂々と出る案もあったんだが、そういうのは俺には向いてないと思うんだよな。

 別に世界を支配したいわけじゃない。

 だからシャルロットに表に立ってもらうことにしたんだ。


 正直、懲罰的な意味もあった。

 なにしろ一国を相手に正面から戦いを挑むんだ。無事に済む可能性は低いだろう。

 シャルロットがこれまでにしてきたことは俺たちも調べて知っている。

 許されることじゃない。


 だけど本人は今回のことに乗り気というか、むしろ喜んでいるというか……。

 まあいいか。


 それから数日もしないうちに、帝国が進軍を開始したという情報が流れてきた。

 軍をひとつ派遣するにしては早すぎる。

 やっぱり準備をしていたということだろう。


 俺たちはシェイドのダンジョンを通じて、さっそくシャルロットがいる場所へとやってきた。

 そこには簡単なテントで拠点が作られているはずだった。

 しかし。


「燃えているわね」


 エリーがその惨状を前にしながら人ごとのようにつぶやく。

 実際エリーからしてみれば人ごとだからな。

 シャルロットを助けにいくことも反対していたくらいだし。


「イクスはやけにあの女を助けたがるわよね」


「シャルロットにはまだ利用価値があるからな」


「……やっぱりああいう女が好きなのね」


 わざと冷たい言い方をしたのに、相変わらずご機嫌斜めのようだ。

 とはいえ助けにいくのは当然というか、例え極悪人だったとしても見捨てるのはさすがに目覚めが悪いというか。

 エリーなら躊躇なく切り捨てるんだろうけど……。

 やっぱり俺は悪人に向いてないんだな。


 拠点にしていたはずのテントは、ことごとくが炎を上げて燃えていた。

 帝国が攻めてきたのだろう。


 その中で一カ所だけ燃えていないテントがある。

 他よりも一回り大きくて、いかにも偉い人が中にいますといった雰囲気だ。

 あそこにシャルロットもいたはずだ。


 俺たちは周囲を警戒しながらそこへと向かう。

 途中襲われたモンスターたちがいたのだが、どれも一撃で倒されていた。

 凶暴なモンスターばかりを集めたはずなのだが、モンスター以外に倒れている者は見当たらない。

 相当な手練れが襲ってきたようだな。

 警戒した方がいいだろう。


 テントの中を進んでいくと、やがて傷だらけとなったシャルロットを見つけた。

 顔色にも疲労の色が濃い。

 相当消耗しているようだ。


「シャルロット、俺だ!」


 俺に気がついたシャルロットが、ほっとした安堵の表情を浮かべた。

 シャルロットだってかなりの実力者だ。

 それを一方的にここまで痛めつけるなんて……。


「大丈夫か、いったいなにがあったんだ」


 シャルロットが荒れていた息を整え、やがて静かに告げた。


「わんわんわん!!」


「うん、人間の言葉でいいぞ」


「突然謎の男たちに襲撃されたのです。まったく気配もなくて、気がついたときには囲まれていて……」


 いきなり流暢に話されると、それはそれで違和感があるな……。

 とはいえ。


「やはりきたか」


 俺はつぶやく。

 いつか俺たちを宿屋で襲った帝国の暗殺部隊だろう。

 ついに奴らが来たんだ。


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― 新着の感想 ―
[一言] わんわんわん!!には流石に笑いしかw
[一言] またもや暗殺者たちとの勝負ですね。
2020/05/14 23:24 退会済み
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