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レベルアップ

久しぶりにステータス確認したらすごいことになってました。


 色々あったが夜はギルドの空き部屋に休ませてもらうことになった。


「考えることはまだあるが、詳しいことは明日決めるとしよう。今日はもう休め。部屋はギルド内に用意してやる」


 とガドーさんも言ってくれたしな。

 実際疲れていたのは確かだから、そう言ってもらえてとても助かった。

 今から宿屋に戻るのも大変だし、部屋がバレてるのはやっぱり不安だったからな。

 というわけで俺たちはギルド内で夜を明かすことにしたのだった。



 朝食もギルド内でいただくと、俺たちは朝も早くからまたガドーさんの部屋へと集まっていた。


「よく眠れたか」


「おかげさまでぐっすりです」


 ギルド内は多くの冒険者がいるおかげで安全だからな。

 奇襲される心配もないし安心して眠れる。

 それに上等な部屋というわけでもないが、昔はよくギルドに寝泊まりすることも多かったからな。なんだかんだで慣れ親しんだ部屋でもある。


 もっとも、正直にそう答えたらガドーさんは苦笑していた。


「あんなことのあとでも普通に眠れるなんて、相変わらず神経が太いな。俺なんて胃が痛くて寝付けなかったよ」


「他人の心配して眠れなくなるなんて、アタシには想像できないわね」


「人間の姿で寝るのはまだ慣れてなくて新鮮だったナ」


「そもそも睡眠は必要ない」


 うちのパーティーはどうしてこう、変わり者が多いのだろう。

 ガドーさんも肩をすくめるだけだった。


「お前らがうらやましいよほんと」


「クマみたいな顔してるくせに気が小さいのね」


「世界の命運を握ってるんだぞ。俺たちの行動によっては国ひとつが滅ぶかもしれないんだ。これが普通の感覚だ。お前が大雑把すぎるんだよ」


「そんなんじゃ世界を救うなんて夢のまた夢よ。勇者の資格はないわね」


 エリーの遠慮ない口調にもガドーさんは慣れた様子だ。

 むしろ罵倒じゃないだけ優しいとすら言える。

 ガドーさんには俺もエリーもお世話になってたからな。エリーなりに気を遣ってるのかもしれない。


「まったくだ。俺みたいな一般市民にそんな重責は耐えられん。そう考えたら、エリーみたいなやつの方が勇者には向いてるのかもな」


 ガドーさんがため息をつく。


「それにしてもイクス、お前ギルドに入る気はないか」


「なんですかいきなり」


「いきなりじゃないだろう。昔から何度も言っている。俺はお前のことを高く評価してるんだ。ぜひうちのギルドに来て欲しい」


「それでしたら昔から何度もお断りしてるでしょう。俺はエリーについていきます。エリーがギルドに入るなら俺も入りますけど」


「今ならすぐ副ギルド長になれるぞ。なんならギルド長をゆずってやってもいい」


「それガドーさんが辞めたいだけでしょ」


「そうだよ。前から思ってたがこの仕事は面倒なばかりで損な役回りだ。さっさと引退させてくれ。イクスなら実力は十分だし、エリーと一緒にいるおかげで大概のトラブルにも、面倒な冒険者の扱いにも慣れている。ギルド長向きだろう」


 確かにそう言われればそうかもしれないけどな。


「せっかくお誘いいただき光栄ですが、辞退させていただきます」


「……イクス、昔からそんなこと言われてたの」


「ああ。入る気はないっていつも言ってるんだけど、ガドーさんがしつこくてな」


「いっつも『俺は心に決めた人がいるから』って言って断るからだろう」


「ふーーーん」


 エリーが意味ありげなつぶやきと共に、ニヤニヤと俺を見つめる。


「なんだよ」


「べつにー」


 明らかに「べつに」って顔じゃないんだが。

 なんだろう。今さら知られて困るようなことでもないのに、なんだか無性に恥ずかしい……。

 エリーもちょっと嬉しそうにも見えるのが唯一の救いかな。


「お前たちは相変わらずか。なら諦めるしかないな」


「ちょっと、なんでアタシは勧誘しないのよ」


「勧誘したら入るのか?」


「もちろんイヤだけど」


「じゃあなんで聞かせたんだ……」


「イクスは聞かれるのにアタシは聞かれないと、なんだか負けたみたいじゃない」


「勝ち負けじゃなくて、お前は組織に入るような人間じゃないだろ。というか入られでもしたらトラブル続きでこっちの身が持たん」


「なにいってるの。アタシだってトラブルの解決は得意よ」


 誇らしげに言うエリー。

 多分本気で、自分はトラブル解決が得意とか思ってるんだろう。


「お前のは解決じゃなくて、殴って黙らせるだけだろう。それは解決とはいわん。個人の冒険者としてはそれでもいいかもしれないが、組織としてはそういうわけにはいかないんだ。ましてや、こういう大きな都市の中ではなおさらな」


「クマみたいな顔してるくせに細かいのね」


「よく言われるよ。なりたくてなったわけじゃないけどな」


 実際ガドーさんは見た目通りの高レベル冒険者でもある一方で、実務作業も得意なんだよな。

 昔は所属していたパーティーの財務担当とかもしてたらしい。

 俺はどうもそういう計算は苦手なんだよな。エリーのせいで金銭感覚が麻痺してるというか……。


 やっぱギルド長はガドーさんしかいないな。

 申し訳ないけどもうしばらくは頑張ってもらうとしよう。


「まあイクスはもう、うちのギルドに収まるような器でもなくなったか」


「そんなことはないと思いますけど」


「実感してないのはイクス本人だけじゃないのか。レベルだってかなり上がっただろう」


 そういえば、色々ありすぎて自分のステータスを確認したことがなかったな。

 レベルだけじゃなくて、色々と増えているかもしれない。


「ステータス」


 久しぶりに口にしたその言葉と共に、俺の視界にステータスが表示された。



イクス=ガーランド

レベル86

職業:奴隷王

攻撃:42(+520)

魔力:20(+520)

防御:39(+520)

精神:61(+520)

素早:39(+520)

幸運:21(+520)


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― 新着の感想 ―
[一言] +520ってかなり強くなってますね。 シェイドの隷属化成功が大きかったのかな?
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