3.「カクヨム」に寄せられた期待の内実について
【本話の要点】
・(問題提起)①「作品の多様性が保障されること」と②「ブックマークの格差が大きくならないこと」の2つが、ユーザーがカクヨムに対して求めていることである。しかし、ユーザーのこのような期待を、「カクヨム」は十分に満たしてくれるのだろうか?
さて、項目2.で『オレオ』について詳述したのは、「カクヨムの仕様に対する不満」を具体的に確認するためだったことを思い出してください。『オレオ』という作品は、「カクヨムのランキング制度には、著しい不備があるよ」ということを、自らがランキングに君臨することをもって、カクヨムのユーザーに示したのです。
実に切り口の鋭い問題提起ですが、では「カクヨムの仕様に対する不満」は、いずれ解消されることがあるのか、ということについて検討してみましょう。
しかしその前に、「カクヨムの仕様に対する不満」を、そもそも解消する必要があるのかどうかについて考えてみましょう。
回りくどい言い方をしましたが、そもそもカクヨムに対して期待が寄せられていたのは、「既存の小説投稿サイトが持っているような弊害から、カクヨムは自由な可能性があるのではないか」と多くの人が考えたためです。つまり、大切なことは「カクヨムの仕様がAになるか、Bになるか」といった問題ではなくて、「カクヨムの仕様変更によって、カクヨムは他の小説投稿サイトにはびこる弊害から自由になるのか」といった問題なのです。
いかにカクヨムの運営が張り切って仕様変更をしたところで、その変更がユーザーの期待に直接応えるものでなければ、大して効力を発揮しません。それどころか、運営が「変わった、変わった」といくら喧伝しても、肝心の問題が解消されることのないまま残存すれば、むしろユーザーの苛立ちはより根深くなるでしょう。そのくらいならば、仕様を変更しない方が良いかもしれません。
「既存の小説投稿サイトの弊害」については、1.の項目でも指摘しました。ここでは「小説家になろう」に限定して話をしますが、「小説家になろう」においては、一部のジャンルの作品にブックマークが大量につく一方、ジャンルが異なると全くブックマークがつかないという、ブックマークの格差の問題があります。もちろん小説の好みは人それぞれですし、作者の力量によってブックマーク数にグラデーションがつくのは当たり前ですが、その格差の割合が著しいところに、大きな問題が潜んでいる、と捉える方も多いはずです。
カクヨムに期待を抱いていたユーザーとは、とりもなおさず上記の問題について一番関心が高かったユーザーと同一ではないかと考えられます。つまり
①ジャンルを横断して、それなりにブックマークがつく、緩やかな多様性が生み出されるのではないか、という期待
か、あるいは
②一部のジャンルが主流になろうとも、そのジャンルは「小説家になろう」とは異なったものであり、かつブックマークの格差も「小説家になろう」ほどには大きくならないだろう、という期待
の、いずれかの期待(あるいは両方とも)を抱いていたのではないでしょうか。
もし仕様変更によって、①ないし②の期待が満たされるようであるのならば、カクヨムの運営は仕様変更を行なうかもしれません(もっとも、今のカクヨムは、このエッセイで論じている以上になすべき仕様変更点をたくさん抱えていますが)。しかし、①ないし②の期待が、仕様変更の次元では満たすことのできないものであるのならば、仕様変更そのものに大きな意味はなくなります。




