アンヤク 前篇(20)
琉星 ???
星の海を渡る流れ星、それはたった独りの住民を乗せて揺蕩う。
夢創世界──イベント世界と今は呼ばれる世界を通り、今は何も無い宙海へ。
「やれやれ、彼も無茶なことをする。七等星の君、君は自覚が無さ過ぎる……あのままでは、刺激が強過ぎるんだよ」
たった独りの住民である青年は、思案し閉じていた瞳を開く。
上を仰げば広がる星々──その中で禍々しさを放つ凶星が、少しずつ輝きを落とす。
外なる世界の存在、神々の使徒、そして意図せぬ無自覚の紛い物。
いくつもの存在が集えども、現状であれば許容の範疇に収まっていた。
だが、限界を迎える。
イレギュラーな存在──究極術式、星落としの姫、器足り得る複製の入れ物、そして彼女と彼女を見守る存在。
「君は星を導く……ことはないとも。そう、君はただ巻き込むだけだとも。そして、その輝きに手を加える」
かつて見た光景を青年は忘れていない。
超人、異能者、寵愛持ち……目的は違えど多くの者が求めた、彼女という存在の権利。
彼も星々と共に、彼女を求め──敗れた。
否、それは敗北とは言えないもの……無効試合、あるいは不戦敗とも呼べるもの。
どれだけ優れた力を持とうとも、それを振るう場を違えれば意味を成さない。
結果、勝る力を一つとして持たずして、彼らの頂点にその男は立った。
「凶星は未だ眠るまま。だけど、外から光に晒されれば寝ぼけ眼にそれを見てしまう。そしてそれが、興味深いものであれば……君は本当に、罪作りな星だ」
青年はただ、星に語りかけた。
それは願い事ではない、それは頼み事。
そして一つの星がそれに応え──結果として、夢創世界に隕石が落ちてきた。
ちょうどその時、ある星では局地的な災害が発生して星の一部が欠けたのだが……それが隕石とどういった関係があるのかは、誰にも分からない話だ。
「……そうか、ここに。分かった、なら少しだけ語らいは中断だ」
青年は言葉を止める。
彼にだけ聞こえるそれは、この地に現れるであろうソレを気づかせた。
青年は新たな住民を拒まない……が、現れるであろうソレの目的は違う。
住民では無く侵略者、であれば彼はただ授けられた力を振るうのみ。
「──“降り注ぐ流星雨”」
それは【天体王】が持つごく限られた攻撃技──複合非戦闘職の職業能力。
魔力に星としての性質を与え、それを敵に向けて放つ。
ただし性質が与えられる、それ以上の効果は存在しない。
それを活かし、強めるのが【天体王】の他の職業能力となっている。
──が、青年はそれを使わない。
「──“スターヒストリー”」
与えられたもう一つの力。
頸木が失われ、抑制されることの無い願望の器──『アストロマスター』が力を発揮、流星雨を彩るように光をもたらす。
「忘れ去られし君の名は『二律の双盾』。守護と排除、相反する概念。君を紡ぐ輝きを今ここに」
星を模した魔力が光で繋がれ、それは星座のように星の海で輝く。
するとそこには、立体的な姿を以って星座が現れる。
動物でも魔物でもない、とある星において象徴とされた存在。
知る人が失われ──遺された意を、青年は汲み上げ、組み上げた。
放たれた守護者は、排除者は侵略者の下へと流星の如き速度で飛んでいく。
結果は言うまでもない……琉星は今日も、星の海を漂うのだった。
※“スターヒストリー”
要するに、「ぼくたちのかんがえたせいざ」を再現する
ただし、個人が妄想して適当に作るなどは、可能でも性能が超低スペック
逆に大衆認識が成されている星座、休人や原人(【天体王】系列の職業の影響で概念は存在する)が知り得る星座の型ならばそれなりに効果を発揮する
──発現者の場合、他ならぬ星が知る遺失した星座を紡いでいる
知る『人』が居ないため補正はあまり無いが、『星』自体が語った内容(構成する星や物語)を正確に再現しているため、基礎スペックがとんでもない状態
p.s. 無字×1218
numb finger な作者です
テレビで観ました、指が悴む……的な意味らしいです
暖房……つけようかな?
なかなかその決断ができない作者でした




