死天の試練後 その14
クローン魔獣、力は持てども魂を持たない空っぽな器。
それを【傾界魔王】の力を借り、動くようにしてアルス・ナギマの勢力とぶつけた。
当然解析は行われるだろうが、俺としてはさして痛むものは無い。
それは【傾界魔王】も同様のはず……そうでなければ、そもそも乗ってこないだろう。
「おおっ、一気に戦局に変化がありました。さすがは【傾界魔王】さん」
「世辞は結構。それにしても……やはり、貴女はいいですわね」
「あら、それは光栄です」
クローン魔獣たちは数の暴力、そしてルリの支援によって蹂躙を行っている。
異形の複製体はもちろん、部分的に強者を模したであろう影法師たちもやられていた。
俺が用意したクローン魔獣、【傾界魔王】が行った仕込み……それらにもそれなりの意味はあるだろうが、やはり一番デカいのはルリが行ったバフなのだ。
限界を超えた身体強化、システム的判定による攻撃の無効化、そして現人神であるルリの権能の限定的な付与……それらすべてが、無数の力で強化された形で与えられている。
ゆえに【傾界魔王】も興味を持つ。
彼女は面白いものに関心を抱き、そしてそれを基にした行動を取る。
「…………」
「ふふふっ、貴女の旦那様が睨んでいますのでここまでにしましょう。とても愛されていますのね」
「ええ、愛されてます!」
「…………」
「あら、大丈夫? 蘇生魔法でいいかしら」
くっ、動悸が……落ち着け、大丈夫だから緊急[ログアウト]は勘弁して!
蘇生魔法を浴びて死にながら、少しずつ冷静さを取り戻していく。
ルリが素敵な女性であることは言うまでも無いし、俺もそれに見合うよう励んでいる。
がそれはそれとして、やっぱり彼女の口からそれを言われると……うん、恥ずかしい。
いやもちろん恥ずべき言動とかそういうことではなくあくまでも俺の中で抑え切れない衝動とかそういう感じでありルリ自身に悪い点などいっさい無いのは当然だが(早口)。
……全然冷静になっていなかったな。
ともあれ、【傾界魔王】はルリから視線を外し上空を眺める……アルス・ナギマは今なお、無数の術式を構築している。
「アレはどうすれば満足するんですの?」
「満足しませんし、終わりません。少なくともアルス・ナギマ自身で、これを終わらせることはありません」
「となると……これの目的は」
「ここに居座るための術式は、上空のアレです。魔導世界側から終了させられないのであれば、こちらから遮断する他ありません。問題は、魔導世界との関係悪化を避けるため、下手に動けない者が多いという点のみです」
情報を抜かれているのだから、相応の対応に出ることはできる。
また、魔導世界はアルス・ナギマの存在を公表していないので関係無いとも言える。
……が、それを真に受ける純情ピュアなヤツは、残念ながら上の連中には居ない。
謀略では嘘偽りはなくとも、知らぬ存ぜぬが正当化されることが多々あるからな。
「ということで、他の方々と協力してどうにかこの状況を終わらせましょう」
「おー!」
「……ハァ、どうなることやら」
俺とルリはノリノリで、【傾界魔王】は額に手を当てやれやれと嘆息。
まあいいさ、形はどうあれ手伝ってくれているのだ──居てくれるだけで意味がある。
無字×1211
不味い……よくもまあ、ここまでピンチにするな自分!(自虐)
大慌てです




