死天の試練後 その10
アルス・ナギマの行動基準は術式。
存在するありとあらゆる術式を、より良くより使えるように……改良と開発を続け、いづれ来る刻に備える。
そのためならば手段を択ばない。
本来であれば外部からそれを抑制する星の意思も、俺というバックドアが機能してしまい今は無かった。
「よっ、ほっ、それっ……いや遠い!」
俺が向かう先、それは建物の屋上から周囲への支援を行うルリの下。
そこには【傾界魔王】も佇んでおり、だからこそ何かあると思っている。
……のだが、転移阻害だけでなく魔力で生み出した複製体たちを送り込んできた。
異形やら使徒やら、障壁を足場に宙を移動する俺を攻撃してくる。
なお、ホテルからの脱出時に行っていた偽装工作はアルス・ナギマが行ったホテル破壊の余波で解除されていた……再展開も可能だが、コストの関係で今は素の状態だ。
「『SEBAS』、何とかしてくれ」
《畏まりました──『ゲートコネクター』を代行でインストール、“トンネリング”を緊急発動します》
状況の打開を求めて『SEBAS』にお任せすれば、『プログレス』をインストールして目の前に穴を開かれる。
知り合いの原人、【仙王】も発現させている『ゲートコネクター』。
空間に穴を開いて、ここではないどこかへと繋ぐ擬似権能。
転移阻害は今なお発動中だが、擬似的なモノとは言え権能による理のごり押し。
術式よりも優先度の高い、権能パワーで開かれた空間の通路を通り抜ける。
「仕様上、長距離移動はできないのが欠点だな……そもそも生物が通れなかったモノを、かなり誓約を付けることでどうにか可能にしたのがこれだし」
トンネル、ワープでもジャンプでもなくその単語が使われているのは、それが理由だ。
壁抜けなど、超短距離での転移を可能とするのが現状での限界だった。
それでも、物理的にも魔力的にも穴へと干渉することは困難。
最初は穴に向けて攻撃してきたが、それを理解した複製体たちは俺への攻撃を再開。
しかしとっくにトンネルの中へ居るので、内部への攻撃は通じない。
ならばと俺と同じように穴を通ろうとするのだが、『SEBAS』がそれを閉ざす。
展開、閉鎖、そして再構築。
それらを超高速で繰り返しながら、俺の道のりを確保してくれる。
「“神持祈祷:ゲートコネクター”×2」
それを可能とするのは、女神プログレスの庇護者という特権。
複数の『プログレス』を同時に使う権利、今回はそれを単一の『プログレス』で行使。
それぞれに異なるキャストタイムが設定されているため、同じ能力であっても同時に使うことができる。
つまり──
「“トンネリング”、“トンネリング”、“トンネリング”……」
元より、超短距離であるためそこまで長くは設定されていないキャストタイム。
それでも数秒存在する隙を塞ぐように、多重行使でトンネルを維持し続ける。
その甲斐もあって、空間の穴を通り抜けた先──そこはルリたちの居る屋上だった。
※虚弱な生産士の『プログレス』事情
複数を同時に使える
インストールの場合、[アライバー]などの専用機体を介して
“神持祈祷”の場合、女神プログレスの庇護を介して
ただし、どちらも現状において……という話
総出力に限界が存在し、今はそれが下回っているから可能
これから先、『プログレス』の持ち主がより性能を強化させていくことで、同時数やそもそもの使用に制限が発生する
p.s. 無字×1207
寒さに負けることが多い作者です
仕事中も、これまでは平然としていた環境に耐えられなくなりました
……早く暖かくなってほしい、そう願う作者でした




