冥府の扉
「巨大な扉……冥府への門ってか?」
そう、坂を下りた先には、凱旋門のように巨大なアーチを描くオブジェクトがあった。
通るための場所は一つ。
だが、凱旋門とは違ってしっかりとした門扉が設置されており、締まり切った現状では通過できないだろう。
「装飾も冥府としては良いデザインだな。写真を撮っといてくれ」
《そう言うと思い、すでに行っております》
俺の視界を媒介として、『SEBAS』が凱旋門を写真として記録する。
ゲーム中の写真撮影だし俺が撮影しているわけでもないし、SSって説明でいいのか?
「デザインは良いんだが……BGMの方は趣味が悪いな。いや、確かにここで美声とかを流されても正直引くけど」
門柱とも言える部分には、金銀や宝石などの装飾もあるのだが……鮮やかな腕前で、人が嘆き苦しむ様子も彫られてるんだよ。
そこからは時々アーとかウーとか声を上げているのが耳に入ってくる。
《結界で音を遮断すればよろしいかと》
「……その手もあるんだが、いつ何があるか分からない場所で、こっちから五感の一つを潰すのもどうかなって? 『超越者』がいると困るし」
《軽率な発言、申し訳ありません》
「解析に処理能力を使わせているのはこっちだからな。それを割いてまで、俺の些細な問題を考えさせるのは筋違いなことだ」
『SEBAS』は常にさまざまなことを任せており、その負担はスパコンが何十台あっても補えないほどの処理能力が無ければ、支えきれない程になっているのが現状だ。
……俺、身の丈に合わないことばかりやっているからな。
世界の管理や貿易の調整、さらに:DIY:と技術の組み合わせなどなど……うん、やらせすぎたかもしれない。
故にこのタイミングで『SEBAS』が後悔の念を抱こうと、俺にはそれを咎めることはできないのだ。
今度、バージョンアップしてやろうか。
亡者の呻きはスルーにしておくとして、この先をどう進むかが問題だな。
仮定だと俺を呼んだわけでもないだろうから、門が親切に開いてくれるなんて展開はさすがに求められない。
「……あっ、一個だけ可能性があったな」
称号リストを開き、一度確認した一つの称号を調べ直す。
「これがあればどうにかなる……のかな? 詳細不明だし」
自分でもそれが、確実に上手くいくかどうかは分からない。
それでも、少しでも可能性があれば……そう思って門に近付く。
すると──
□ ◆ □ ◆ □
称号『生冥の迷い人』を確認
冥界への移動権(第一権限)を行使します
開門……成功しました
□ ◆ □ ◆ □
人々の悲痛の声を掻き消すように、重々しい音と共に扉が開いていく。
『生冥の迷い人』、まさか繋がるのが冥界になるとは……少し、予想はしていたけど。
「だが、これで確証が取れてしまった」
《この場は冥界、門の先は死の国となっているでしょう》
……さて、俺は帰ってこられるのかな?




