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10話――ゴブリンマーダー②

 剣を振り上げるゴブリンキング。あの剣に地形を変更する能力があるのか、それともダンジョンマスターの権限でダンジョン内を変形させているのか。

 どっちか分からないが、ともあれあの剣を振り下ろす動作がキーなのはほぼ間違い無さそうね。

 なら――


(あいつが剣を下ろす前に叩く!)


 ――地面を砕きながら跳躍し、一歩でゴブリンキングの懐に飛び込む。

 そして左足で踏み込み、空中で三回転してからその遠心力を込めて――ゴブリンキングの側頭部を蹴飛ばした。

 弾丸のようなスピードで壁に叩きつけられるゴブリンキング。さっきは微塵も効いてなかった私の蹴りだけど、今回は足にきているらしい。

 壁が崩れ、ゴブリンキングの頭に岩が落ちてくる。私はそれを見ながら、長く息を吐く。


(今まで戦う時は、この子たちを使ってイザベル(真)のような身体能力を再現してた)


 しかし今は、素で漫画のような身体能力を発揮出来る。そこにこの子達の強化を乗せたらどうなるか。


「軽く蹴っただけでこの威力だものね」


 首と肩を回しながら笑顔になる。さっきは全力で蹴りを入れても微動だにしなかったのに、今は軽く蹴るだけでぶっ飛んでしまった。

 足し算になるかと思ったけど、掛け算になっちゃったわね。

 ステップを踏みながら、人差し指で手招きする。


「鬼さんこちら、ってね」


「ゴブガァァァァァァアア!!」


 落ちてきた岩を振り払い、憤怒の形相で襲いかかってくるゴブリンキング。地形を変える剣を地面に突き刺すと、全方位三百六十度から岩の槍が飛び出してきた。

 これを全部迎撃するとなると骨だ。ウインやフレアの奥の手を使えば簡単だけど、あの子達には雑魚ゴブリンの相手を任せている。

 じゃあ迎撃しないでいいわね。


「ふっ!」


 気合一閃、私は鋭い踏み込みでゴブリンキングとの距離を詰める。

 相手は当然迎撃しようとするものの、私の攻撃力はさっきまでの比じゃない。飛び上がり、踵落としで剣を持つ右腕を斬り落とした。


「ゴブガァァァアア!?!?!?」


 剣と腕を失い、取り乱すゴブリンキング。すぐさま無事な左手で拾おうとするが――私は右足をまっすぐ真上に振り上げ、ゴブリンキングの左腕も切断してしまった。


「あら、これってI字バランスってやつじゃない。ホント、イザベルの身体って柔らかいわねぇ」


 ゆっくりと足を降ろしながらそう言うと、ゴブリンキングは憎々しげな表情で地団駄を踏む。

 そして口で剣を拾おうと身を屈めるが、フィンガースナップの音とともにそれが姿を消す。


「おー、業物ですね」


 剣を持ち上げようとしたカーリーがバランスを崩して、ちょっと照れたように笑う。可愛い。

 その姿を見たゴブリンキングは、鼓膜が破けんほどの咆哮をあげて私に噛みついてきた。

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