10話――ゴブリンマーダー①
「後天的ダンジョンマスターって何よ!」
ダンジョンには聞き覚えがある。とてつもなく強大な力を持った武器や道具――魔道具を隠すために、強力な力を持った魔法使いが作った迷宮。
魔物が大量にいて、最奥にはその隠された何かがある……みたいなあれよね。
「正確には違います。ダンジョンっていうのは、その強大な力を持った魔道具そのものが意思を持ち自らが隠れるために生み出す物なんです!」
道具や武器が意思をって……。随分とファンタジーじみているわね。いや実際にファンタジーなんだけれども。
私はゴブリンどもを捌きながら、カーリーの解説を聞く。
「そしてその最奥にいるのが、ダンジョンの守護者ダンジョンマスター! 主である魔道具を用いて侵入者を撃退する化け物です!」
「おっけー、そこまでは何となく分かった。それで!? 後天的ダンジョンマスターって!?」
「普通はあり得ないですけどね! 強力な魔道具を持った魔物や人間が、そのままダンジョンマスターになって住処などがダンジョンに変異する現象です!」
振り下ろされる剣。私たちは左右に飛びのくけれど、地面から隆起してきた岩に弾き飛ばされた。なんとか体勢を立て直したところにすぐさま飛んでくるゴブリンキングの蹴りを、こちらも蹴り返す。
「よくわかんないけど!」
ゴブリンキングの筋肉が盛り上がり、私は吹っ飛ばされる。飛ばされながら地面に手をついて勢いを殺し、三度ほどバク転して着地。そしてしゃがんでブーツに手を当てる。
「ゴブリンロードがダンジョンマスターになって強化されてるって認識でいい!?」
「はい!」
ただでさえ強力なゴブリンロードが、ダンジョンマスターになって巣穴をダンジョン化。そこでさらに苗床を増やしてゴブリンを増やし、ゴブリンレギオンならぬゴブリンダンジョンを作ろうとしているってわけね。
「んっとに面倒ね! こっちは楽に領地経営してたいだけだってのに!」
巣穴をどんどん広げて、いずれはこの領地を支配しようって思ってるのかしらね。
いいじゃない、いいじゃない。悪いわね、シンプルに悪役ね。
――舐めてんじゃねえわよ!!!!
「アンタはねぇ、悪役として致命的なモンが欠けてんのよ!」
ゴブリンキングは地形を変え、大穴を作る。そこから無数の――蜂の巣をつついたように無茶苦茶な数のゴブリンが出てくる。
「数に任せて、強い武器に任せて! アンタ本人には恐れが足りない、怖れが足りない、懼れが足りない、畏れが足りない! ウイン!」
「びゅう!」
ウインが鳥の魔人から、巨大な怪鳥となってゴブリンの群れに突っ込んでいく。千切れ、肉片となって消し飛ぶゴブリンども。ああほんと、汚いわねぇ。
「でも私は違う。あんたに本当の悪役ってのを、支配者ってのを見せてやるわ! 『エンベッド』!」
ブーツと服に魔法をかける。すると魔力が立ち昇り、『ブーツ』と『クロス』が目を覚ます。私本人が、戦闘を行うための使い魔たち。
身体能力を強化し、防御力を上げる――私の本当の戦闘装束。
「私の大事な女の子を凌辱して……あまつさえ、支配者気取りの悪役もどき。アンタには閻魔様の作った地獄すら生ぬるい、この私が直々に地獄に叩き込んであげるわ!」
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