6話――我儘の錬金術師⑦
「まぁ、冗談は置いておいて」
「あ、やっぱりボクが騎士団長なのは冗談なんですね」
「ええ。団長は私であんたは副団長よ」
「状況がそんなに変わってない!?」
変わるわよ、リーダーが私なんだから。
取り合えず私はレイラちゃんに正対し、背筋を伸ばす。
「というわけで、話聞くわよ。なにがあったの? 騎士団ってことは魔物関連? それとも野党?」
「野盗ですよイザベル様。議会制民主主義は元の世界に置いてきてください」
ちょっと間違えただけじゃない。
「魔物です。ゴブリンってご存じです?」
「そりゃ知ってるけど」
一メートルくらいしかない、緑色の小鬼。単体でも成人男性を片手で引きちぎるほどの腕力を持ちながら、群れる。
それも数体から十数体体単位で群れる上に、どんな生物の雌でも孕ませる能力を持っているから一匹でも逃すとすぐに増えるというゴキブリみたいな魔物だ。
しかし、強いと言ってもそれはあくまで非武装の人間からしてみればという話。冒険者じゃなくとも、数が少なければ村の自警団レベルでも対処出来るという……まぁ、厄介ではあるが騎士団が出張るほどの魔物ではない。
「でもそれがどうしたのよ」
「……あ、まさか」
「はい、カーリーさんの予想通りです。巣が出来ました」
「「あちゃあ……」」
私とカーリーは同時に頭を抱える。
ゴブリンというのは決まった巣を作らない性質があるので、一定以上の数からは増えない。狩りを続け、出産を続けながら移動しているうちに大きい魔物や冒険者などに全滅させられる。
だが、巣を作ったならば話は別だ。ゴブリンは他の生物のメスを捕らえて苗床とし、どんどん増えていく。
増えたゴブリンで苗床をさらに捕らえ、また増えるという無限ループ。そして最終的には強力な変異個体とともに領地を落とすようなレベルの集団――ゴブリン・レギオンと化すのだ。
当然、そうなったらもう第一騎士団が出てくるか、一級以上の冒険者パーティー複数であたるか、超級と呼ばれる人智を越えた実力を持つ冒険者が相手をしなくてはならない。
「まさかゴブリン・レギオンになったの?」
そうなれば流石に私も一人じゃどうにもならない。作中最強クラスの肉体を持つと言えど、数を薙ぎ払う魔法は無い。
(いやまぁ無いわけじゃないけど……疲れるし)
私の不安をよそに、レイラちゃんが首を振る。
「まだまだですよ。でも既に三級の冒険者パーティーが全滅してます」
三級と言えば、中堅以上。才能抜き、努力だけで上がれる最高位と呼ばれている。ここに列せられている冒険者は、一流の冒険者と言ってもいい。
それが全滅――私とカーリーもごくりと生唾を飲む。
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