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38話――からかい上手のイザベル様⑦

 ユウちゃんがボコボコに殴りつけ、オッサンをズタボロにする。


「がっぶっ……」


「う、動くなぁッ!」


 そんな叫び声が聞こえてきた瞬間、私の足元からもグラみたいに出てきた盗賊が私に組み付いてきた。

 盗賊は私の首に剣を突きつけ、血走った目で皆を睨みつける。


「う、動くなよ、動くなよ!! こいつが、テメェらの雇い主がどうなってもいいのか!?」


「ちょ、ちょっと! ねぇ皆、私のこと雇い主って! ほら、やっぱり私貴族に見えるのよ!」


「ちょっ、こらテメェ喋るな!」


 私がテンションマックスで皆に主張したのに、しらーっとした目で見てくる。


「たまたま近くにいたからイザベル様を捕まえただけじゃないですか?」


「姐さんじゃない人でも同じこと言ってそうッス」


「そもそも、先ほどの会話を聞いていただけではなくて?」


「テメェらマジで黙ってろよ!? こ、コイツの命がどうなってもーー」


 ぐっと剣を押し込む盗賊。しかし少し私が力を入れたので、押し込まれた剣が欠けてしまった。


「…………………え? いや、え? ちょっと押し込んだだけで折れた? は? なんで?」


「昨日は化粧水をしっかり付けたから」


「いや化粧水ってそういうもんじゃねぇからぶげぼっ!?」


 耳元でぎゃあぎゃあと五月蝿かったので、取り敢えず軽く足払いして蹴り飛ばす。

 そして馬乗りになっているユウちゃんに手を差し伸べた。


「ちょっと、逆鱗にふれちゃった?」


「あ、あはは……見苦しい所を見せちゃったね」


 照れた笑みを浮かべるユウちゃん。彼女は私の手を取って、立ち上がった。

 そして軽く膝についた土煙を払うと、困ったように頬をかいた。


「昔から、どうしてもね。ぼくの家は慈善活動もやっていたから」


 慈善活動、弱者を装う。その二つが繋がるだけで、もう何があったかは想像がつく。どっちがいいとか悪いとかは言わないけれど、彼女の逆鱗になるだけのことはあったのだろう。

 私は肩をすくめてから、彼女のお腹を軽く叩いた。


「一つ、良いことを教えてあげる。私もその手合いは嫌いよ」


「……女神」


「だから今度からそういうのをぶちのめす時は、剣を抜いて良いからね」


 ユウちゃんはパッと頬を綻ばせ、私に抱き着いてくる。何も言わないけれど、抱きしめる力がだいぶ強い。

 ……思ったよりも、溜まってる物がありそうねぇ。私は彼女の背をとんとんと叩いてから、顔を上げた。


「それじゃあレイラちゃん……が、いないんだった。カーリー、その辺の奴らの脳を読める?」


「はいはい」

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