37話――ふしぎ友誼③
シアンは大きくため息をつくと、さっきの書類をこっちに渡してくれる。数値も合ってるし、問題無さそうね。
「ありがとう。それと、昨日頼んだ件やってくれた?」
「ラピスラズリ商会で雇われている人のリスト化ですわよね。あともう少しですわ」
「おっけー。それじゃあ明日には人員の再配置に取り掛かれそうね。業務量が変わるから負担増えるから大丈夫かしら」
人員の再配置……部署の統廃合なんて上役が『仕事をやってる感』を出すためにやってるって思ってたけど、いざ運営する側になると適宜やってかなきゃいけないのが面倒ねぇ。
今回は財務や経理、人事を統合しちゃうから絶対に必須事項だから仕方ないけど。
「これが終わったらやっと、ジーナと会いに行けるから頑張りましょう。……って、シアン。どうしたのよ突っ立って」
もしかして、ハグでもされたいのかしら。甘えん坊さんねぇ。
私が立ち上がって彼女を抱きしめようとすると、シアンははっとした表情になって振り払う。
「何するんですの」
「突っ立ってるから、ハグでもされたいのかと思って。カーリーはよく撫でられ待ちでこっち見てるわよ」
撫でてあげると腰に手を着いて胸を張るから、非常に可愛い。もう無限に愛でていたい。
シアンもその様子を想像したのか、少しだけほっこりした顔になってから……ぶんぶんと首を振った。
「違いますわよ! ……いや、貴方って仕事出来たんだなぁと思いまして」
「……収支報告書見せてあげようか? あんたの作った借金がどれだけ減ったのか」
私が言うと、シアンはぶんぶんと首を振る。この前、勝手に見た挙句に真っ青な顔になって『もう私が勝てる部分なんて無いんですのね……』って悲壮感マックスな顔で泣いてたのは伊達じゃないわね。
シアンは少ししょげた顔をしつつ、指をツンツンと突いた。
「だってあなた、知性があまり感じられませんし……」
「言うに事を欠いて、よくもまぁそんな侮辱が出来たもんねぇ。借金令嬢のくせに」
「否定は出来ませんけれど、その言い方だとなんか夜のお店に売られそうですからやめていただきたいですわ!」
確かに借金令嬢が体を売るエロ漫画なんて腐るほどあるものねぇ。流石にこっちの世界じゃ、貴族の令嬢を娼婦にするとか打ち首じゃすまないからあり得ないだろうけど。
あって商人の娘かしらね。親が商人ギルドで失脚して……みたいな。
「というか、この前アンタんところの商会と交渉したでしょうが」
「いやネゴシエーションと経営って別分野じゃありませんこと?」
そりゃね。どっちかっていうと、交渉は苦手分野だし。




