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36話――涙の数だけ強くなりたい②

「いやそんな言い方されたら怯えるに決まってますわ!」


「……だんだん、申し訳ないことをした気分になってきたわ」


 ここまで怯えられるとは……。なんていうか、シアンの言う通りちょっと血生臭い世界で生きすぎてたわね。

 コホンと咳払いして、私は彼女らに頭を下げる。


「ごめんなさい、ホントに脅かすつもりは無かったの」


「……謝られると、それはそれで調子が狂いますわね」


 ふうと息を吐くシアン。彼女はマティルダさんとモナークさんの方を見ると、真剣な眼差しを向けた。


「でも、さっきの話は前向きに考えるのですわよね?」


「……まぁ、ええ」


「約束しましたしね」


 ちょっと怯えた様子のマティルダさんと、腹を括ったような顔になるモナークさん。こういう時に気合を入れられるのは、彼の方なのね。少し意外。

 シアンは二人に頷くと、私の方を向いて頭を下げた。


「怖がらせた分、ちゃんと守ってくださいまし」


「勿論よ」


 笑顔で頷いて、さてと腕を組む。そうは言うけれど、私たちが常に常駐していくわけにもいかない。当面は被害に遭うたび、嫌がらせに来たチンピラを潰していくしか無いわね。

 ……いや、待てよ。


「ねぇ、マリン。裏に噂を流したりって出来る?」


「もう姐さんは都市伝説になってるッスよ?」


「その都市伝説に、もう一つ付け加えるのよ。……って待って。都市伝説って何?」


 初耳すぎて聞き返すと、彼はやれやれと首を振った。


「だって姐さん、夜な夜な女の子を助けるついでにチンピラをしばいてるせいで……『女を使ったシノギをしていると、金髪の女が現れて地獄よりも恐ろしい目に遭う』ってまことしやかに囁かれてるんすよ」


 滅茶苦茶不本意過ぎる……。殆どナマハゲみたいな扱いじゃない……。

 というかそんなにチンピラばっかり狙ってるわけじゃ無いのに……夜遊ぶときは男の人だって助けてるのに……オッサンだってちゃんと助けてるのに……ちょっと雑だけど……。

 私が静かにダメージを受けていると、カーリーとユウちゃんが気遣うように肩に手を置いた。


「大丈夫だよ、女神。僕らはそんなことで恐れたりしない」


「ユウちゃん……!」


「正直、いつかこうなると思ってましたから」


「カーリー!?」


 カーリーに裏切られたので、やむなく彼女のこめかみをグリグリする。涙目で可愛い。


「ま、まぁ良いわ。――女を扱うシノギだけじゃなくて、ラピスラズリ商会に手を出した奴らが不審死を遂げてるって出来ない?」


「出来ると思うッスけど……」

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