27話――アブサン~のんべ竜①
さて、場所を変えて応接間。でっかいお爺さんと小さいツインテールが、私の前に座っている。
「紅茶です。ジルさんはお酒の方が良いですか?」
「ふぁっふぁっふぁ。気が利くのう。うちの娘も見習ってほしいもんじゃ」
「お父さん、お願いだから仕事中にお酒飲まないで……」
「酔わんからよかろう?」
カーリーが持ってきたのは、この前……カムカム商会の娼館に贈られてきたお酒。なんか女の子のファンが持ってきたらしいんだけど、度数が高すぎて誰も飲めなくて処分に困っていたらしい。
その度数は驚異の六十度。薬草などのハーブで作られているリキュールだから……前の世界で言うところのアブサンみたいな物かしら。
カーリーはそれをビンごと彼の前に置き、グラスを手に持つ。
「割り方はどうされますか?」
「ワシはそのままでいい」
そう言ってビンを持ち、グイっと呷るジル。そのまま一気にそれを飲み干すと、楽しそうにテーブルにビンを置いた。
「ふぅ、思ったより良い酒じゃったな。こんなもんをポンと出せるとは……流石は子爵家じゃ」
「……アブサンをビンで一気って人間じゃないわね」
蟒蛇か、はたまた大蛇か。まぁ人じゃないのは分かりきっていたけど、ここまでとはね。ドラゴンを主食としてるだけのことはあるわ。
カーリーがお代わりを――と言って部屋から一度退出すると、ジルが私の方を見て首を傾げた。
「ところで、アザレア子爵はどこにおるんじゃ。お嬢ちゃん」
「目の前よ」
私がすんなり言うと――ツインテールの子が思いっきりジルを殴る。そして机に頭をぶつけん勢いで謝罪してきた。
「すみませんでした! お父さん!? さっき不敬罪になるって言ったじゃない! なんでそんなこと言うの!?」
「いや、アビゲイル。お前も見とったろ? ワシと殴り合えるような生き物、人間じゃないぞ。それがまさか貴族のはずあるまい」
「うっ……た、確かに……じゃ、じゃあ影武者……?」
失礼すぎる。
私がどう説明した物かと思っていると、背後に立っていたユウちゃんが前に出てお辞儀する。
「恐れながら……彼女は私どもの主であり、このマータイサの領主であるイザベル・アザレア子爵ご本人でございます。決して影武者ではございません。リリックスワイル家の三女として保証させていただきます」
そう言いながら、自分の冒険者手帳を取り出して彼らに見せるユウちゃん。
冒険者は年に一回の更新さえ行けば、クエストを受けなくても冒険者としての身分が保証されるらしい。逆にそれにすら行かなかった場合は冒険者としての身分も権利も消失するようだけど。
だから冒険者に登録しつつも、彼女のように普通に働く人も割といるんだそうな。




