26話――DRAGONTAIL⑥
私のヒールが突き刺さった手のひらを見ると……何故か、鱗のような物で覆われていた。まるでトカゲのような皮膚にギョッとしていると、お爺さんは目を見開いて口の端を曲げる。
何よその表情――
「ふぁっふぁっふぁ! なに、腕試しじゃよ!」
――いきなり笑い出すお爺さん。あ、さっきの顔は笑顔だったのね……。
ちょっと引いていると、お爺さんは私の方へ歩いてくる。そして拳を振り上げると、勢いよく振り下ろしてきた。
ガードも何もない大振りの一撃……私はそれをよけながら、カウンター気味に側頭部へ左足のハイキックを叩き込む。
「ひゃっ! い、イザベル様! 手加減しないと死んじゃ――」
心配するようなカーリーの声――ただ、まるでトラック同士が正面衝突したような音が響いているのに、お爺さんはビクともしていない。
ジェイソンの時のように『衝撃が無効』にされている感覚は無いけど……効いてない。純粋に耐えられているわね。
今度はお爺さんが蚊でも払うように左腕を振るう。私はすぐに足を降ろし、右足の膝でその腕を受け止める。今度は巨大な石が落下してきたかのような衝撃が周囲に伝わるが……お互いに微動だにしない。
(……いや、結構痛いんだけど)
ちょっと足が痺れる。私は足を降ろし、楽しそうに笑うお爺さんを見上げた。
「腕試しってか、足試しになっちゃってるけど……腕の方が良い?」
「ふぁっふぁっふぁ! 足技の方が得意なら止めんわい。どれ、そろそろ抜くかのう」
そう言って、腰に提げる剣を二本とも持ち上げるお爺さん。どっちも見た目、百キロくらいありそうだけど……よくそんなもん片手で振り回せるわねぇ。
流石にアレを素で受けるのはマズい。私は服に『エンベッド』をしようとしたところで――遠くの方から、女の子が走って来た。
「お、と、う、さん!!!!!!! 何やってんの不敬罪で捕まりたいの!?!??!?」
「あら、かわいい子ね」
年齢は十二歳くらい……カーリーより少し年上くらいかしら。金髪をツインテールにした釣り目の可愛い女の子がこっちへ走って来ていた。
「ワシの娘じゃ。やらんぞ」
「えっ、割と欲しいんだけど」
「ならワシに勝たんとなぁ」
なるほど、ちょっとやる気が出たわね。
私は服に『エンベッド』し、カーリーとユウちゃんに声をかける。
「ねぇ、もうちょい暴れるから――そのツインテの子、保護しといて!」
「えっ、あっ、はい」
すぐに転移して、走って来た女の子を捕まえるカーリー。女の子は目をまん丸にしながら、ジタバタと抜け出そうとする。
「な、何考えてるの!? あ、あの人死んじゃうわよ!? 私のお父さん、超級冒険者なんだから!」
――なるほど。
なんか強いと思ったら、それのせいなのね。




