4話――暴れん坊悪役令嬢①
いきなり笑い出した私を見て、オルカはさらに笑みを深める。
「……狂いましたか。大丈夫ですよ、正気に戻すことも可能ですからね。くくく、それにしても……その魅力的な肢体は一度、味わってみたかったのですよ」
厭らしい……なんて次元を越えて、修復作業が失敗して台無しになった絵画のような表情になるオルカ。舌なめずりし、楽しそうに愉しそうに口元を三日月に歪める。
「あはははははははははははははははは!!!」
でも、私の笑いは止まらない。この笑いは、止まらない。
「チッ、いつまでも笑ってんじゃねえぞキチガイ!」
彼の部下はいきなり笑い出した私が不気味だったようで、突き飛ばして地面に転がす。腕を擦りむいたが、どうでもいい。
笑いが、止まらない。
「おい、何をしている! 彼女はもっと丁寧に扱え。うちの商会が貴族と太いパイプを得られるかどうかの瀬戸際なんだからな。それに、抱く時に傷があったら萎えてしまうだろう? はっはっは」
太い腹を揺らして上機嫌に笑うオルカ。本当に嬉しそうな笑顔ね。
私は地面を見ながら……ゆっくりと立ち上がる。
「初めて、知ったわ」
笑いながら、嗤いながら。
周囲を睨みつけ、沸々と煮えたぎる真っ黒なマグマのような感情を押さえつけながら。
私は、嗤う。
「人間……あんまりにもキレすぎると……笑うしか出来なくなるのね」
「はっはっは、ご安心くださいイザベル様。すぐに心から笑えるようになりますとも。うちのクスリは優秀ですからね」
目を細め、楽しそうに部下の肩に手を置く。指示を受けた部下が、後ろ手に縛られる私の方へ歩いて来た。
その瞬間に、私を縛る縄にAIを付与して使い魔にする。久々に呼び出す、『バインド』だ。
「さぁて、それじゃあ最初の一発はオレが打たせてもら――あべしっ!」
縄で出来た蛇といった風体のバインドの尻尾が、男を打ち付けて吹っ飛ばす。同時に私は近くの壁をぶん殴り、穴を開けた。
「人として越えちゃいけない一線ってのがあんのよ悪党! 弱者を踏みつけ、利用する――まさに『吐き気を催す邪悪』なのよあんたは!!!」
部屋の中に声が響き、全員の注目が私に集まる。しかしオルカは余裕綽々の表情のまま首を振る。
「悪? 悪と言いましたか。はっはっは、これはこれは。我々は全て善意で行っているのですよ」
「善意ですって?」
私が問い返すと、オルカは相も変わらずいやらしい笑みを浮かべている。
「お金に困った者に手を差し伸べ、世に絶望した者に快楽を贈り、世に退屈している人には新しい娯楽を提供する。良いですか、商売とは需要があるから成り立つのです。それらを満たしているだけで、悪と罵られる謂れはありません。施しの結果、どうなろうと相手の落ち度でしょう。むしろその責任を転嫁する態度こそが悪であrぶべらっちょ!?」
空気が撓み、衝撃波が部屋中に響き渡る。私の蹴りがオルカのぶよぶよした脂肪に思いっきり突き刺さったのだ。
血の混じった咳をしながら地面に這いつくばるオルカ。彼の部下が駆け寄るが、私はそれを無視してサングラスを投げつけた。
「ごたごたうるさいわね! アンタたちの行いが善行? 善意? 施しの結果、どうなろうと相手の落ち度? あっそー、分かったわよ!」
吹っ飛んだオルカを睨みながら、私は拳を握る。
「じゃあ今から『善意』を執行するわ。その結果、あんたらは踏み潰されることになるけど、あんたらの落ち度ってわけね!」
バインドを呼び戻し、懐からアクアとフレア、ウインを取り出す。
オルカたちは使い魔を4体も出した私に一瞬怯むが、すぐににんまりと笑って両手を広げた。
「しかしどうしますかな? 私が命令を出せば、貴方の言うか弱い女性たちを殺すことも更に苦しめることも出来るのですよ」
「知ったこっちゃないわよ悪党! 同じ悪役令嬢として、あんたに格の違いてやつを見せてあげるわ!!」
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