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18話――逆境フィフス⑥

 でもそれは、私だけの話。こっちの世界、活版印刷の技術はある。それ故に、多少高額ながら本は出版されているし手に入る。

 しかしコピー機なんて物は無い。魔道具を組み合わせれば似たようなことはできるけれど、いくら貴族といえど個人で所有出来るモンではない。

 なのにこの大量の……手書きで無い書類の山。しかもフルカラー!


「あり得ない……。でもそうか、もしかしてこれ試し刷り? だとしたら何のために?」


「あ、姐さんどうしたんすか?」


 困惑するマリンをよそに、私は他のファイルもひったくる。どれもこれも意味があるように見えないが、殆どがフルカラーで……しかも右に行くにつれて印刷が綺麗になっていっている。

 やっぱり試し刷りの線は濃厚。でもそしたら、これは何のために……。


「あのー、イザベル様。ちょっと気になったことがあるんですけど、いいですか?」


「どうしたの、カーリー。今は何でも言ってちょうだい、少しでもヒントが欲しい」


「ユウさんのおっぱいが揺れるのってすごくエッチですよね」


「カーリーちゃん!? いきなり何を言ってるんだい!?」


「分かるわー。揉みしだきたくなるわよね」


「女神も乗っからないで!?」


 胸を押さえてちょっと恥ずかしそうに顔を赤らめるユウちゃん。彼女は一つ咳払いしてから、地面を二度ほど足でタップした。


「女神、マリンちゃん。二人は魔力を見れないんだっけ?」


 二人で頷くと、カーリーとユウちゃんが少し困った顔になる。


「じゃあこの違和感に気づかないのも当然か。この部屋には結界が張られているんだ」


「「結界?」」


 私とマリンが同時に驚く。結界といえば中に入るのを防ぐことが目的だ。しかし私たちは何にも障害無く、部屋の中で活動出来てしまっている。

 逆に一度入ったら出られなくするタイプの結界もあるらしいけど、そういうのはダンジョンくらいにしかないって言うし。


「そうなんだ、だから奇妙なんだよ。この部屋に張られている結界は――」


「特定の場所に侵入することが出来ないように、この部屋自体に違和感を覚えなくするための結界、なんですよね。つまりこの部屋、見えてないだけでどこかに隠し部屋の入り口があるんじゃないかなって」


 なるほど。

 言われてみれば、私がすぐにカラー印刷の違和感に気づかなかったのはその結界のせいかもしれない。納得しつつ、部屋中をぐるっと見てみる。


「その結界、解除できないの?」


「したらすぐに魔法使いがとんでくるんじゃないかな。――ああいや、待てよ?」


 そう言ったユウちゃんは執事服の上着を脱ぎ、例の剣を取り出す。ゴブリンキングから奪い取った、『ディグ・シーナリー』だ。


「何するの?」


「この部屋をダンジョン化して、解析してみる。それなら魔法を解かずに調べられるからね」


 剣を地面に刺し、ウインクを一つ寄越すユウちゃん。相変わらず絵になる子ねぇ……。

 そして彼女の剣が淡く光り、その光が部屋中に浸透していく。

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