17話――ヴァルキリー・ドライブ・ヴィランズドウタ―③
「証拠らしい証拠は出ず……か」
夜会が終わり、深夜に片足を突っ込んだ時間。
私は念の為、ドレスの下に戦闘用の衣服を着て館の最奥に来ていた。重ね着してるから、季節も相まって暑いわね。
ユウちゃんが主に使用人達に聞き取りを、私とカーリーが貴族達に聞き取りを、そしてマリンが館に忍び込んで色々探ったけれど……それっぽい証拠は出てこなかった。
こうなってくると、普通に探せる場所や情報として『組織』が出てくることは無いのだろう。
であれば、虎穴に入らずんば虎子を得ず。多少危険だろうけど、本人から直接問いただす。
……つもりだったけど。
「これもう、普通ならアウトよね」
時間は夜。
呼び出された場所は、男性の個室。
普通の貴族なら、この時点でツーアウトだ。しかも相手は、女好きで有名なレギオンホース家。スリーアウトでゲームセットね。
『貴族の女は、当たり前だけど貞淑が求められる。嫁に行くまで婚前交渉など以ての外。女神、これは既に罠だよ』
さっき、メイドから呼び出しの連絡が来た時にユウちゃんから言われた言葉だ。
『旦那様から伝言で御座います。明日からまた買付が始まるが、もしかしたら自分は今回は出られないかもしれない、とのことです』
迂遠な言い回しだが、言いたいことは分かる。
要するにお前んところの領地の作物を買わんようにするぞ、ということだ。
(舐めてるわねえ。でもまぁ、ちゃんと嫌なところを抑えてる辺りは流石かしら)
一応マングーから輸入している作物もあるけど、国の法律で輸出を制限することは出来ない。要するに(作物に関してだけは)欲しい物を売らない、ということはやってはいけないようになっている。
そうやって領地同士のパワーゲームが起きないように国は動いているけどなかなか上手くいかない。抜け穴や抜け道は常に存在しているからね。
(経済は回ってなんぼ、回してなんぼ。停滞は避けたい)
輸出じゃなくて輸入を止めるーーこれが外交カードになる場合とならない場合がある。うちみたいに領地自体の経済が上手くいってないと、割と効果は覿面。外需を伸ばしていきたい時期に、これは割と辛い。
「まぁ、たぶん外交カードじゃないんでしょうけど」
ため息が出る。強権を奮ってやりたいことが、女一人手籠めにすることだなんて。
私だって馬鹿じゃないし、この手の女としてのピンチに陥ったことはごまんとあった。
故にこそーー苛立ちよりも、呆れが先にくる。
「輸入が六年前から増えたのも、このため……なんでしょうね。ここまで周到にやって、やることが私に手ぇ出すためだけなんて」
貴族としての立場も財産も、領地の地位も。それらを駆使して女漁り。はっきり言って、プライドが無いのか。
「ま、大事なことは人それぞれだしね。……それに私の杞憂って可能性もあるし」
すっかり頭から抜けていたが、ガースリーは原作にも出てきているキャラだ。かなりちょい役だったので、レイラちゃんに指摘されるまで気づかなかった。
役割としては中盤頃に「イザベルがあんなことをするなんて」と、彼女を昔から知っていて助言してくれる……つまり敵を倒すためのヒントを出してくれるキャラ。
関係性が深堀りされなかったから詳細は分からないが、ある程度親密な付き合いがあったと推測される。




