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琥珀の涙  作者: 紫木
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ここを旅立つ理由

ある日私は一人になりました。

これは旅立ちでしょうか、それとも飛び立つ日が来たという事でしょうか。

未だに分からないまま、分からないなりに生きています。


ある日私は公園で泣いている子供を見かけました。

何に嫌気が差したのか、何に途方に暮れいてるのか。

それとも、ただ転んだだけなのか。

嫌なものです、これではまるで彼の言い回しではないですか。

私は子供に手を差し伸べます。

どうして泣いているのかは知りませんが、それは楽しいのでしょうかと。

泣きじゃくった子供は聞く耳を持ちません。

身に降りかかった不幸を享受するのみなのです。

困りましたね、私は飴も玩具も持ち合わせていません。


だから私は再現しようと思いました。

綿菓子の様に受け止め、砂糖よりも甘く頭を撫でたのです。


それは奇跡の始まりでした。

翼のもがれた鳥は飛び立つ夢を見たのではなく、帰れる巣を見つけたのです。

空の青さは忘れてしまいましたが、巣の暖かさは覚えていたのです。


だから、同じ事をしようと動いただけの話です。


子供は泣くのを止め、手を振り去って行きます。

見送るつもりはありません、しかし懸命に手を振る姿は焼き付けました。

なんだ、これだけの事で彼は満たされていたのかと。

なんだ、これだけで幸せな気持ちが持てるんだなと。


一筋の涙が流れました。


親鳥ともつがい鳥とも違う関係でした。

だからでしょうか、彼は一人で飛び立ってしまいました。

何も私に要求せず、何一つ誰にも求めませんでした。

そんな姿が見ていられなくて、いつしか彼と同じ方向に視線をやりました。

するとどうでしょうか、そこに彼の姿は無かったのです。

背負った分だけ、彼は自分を見失ってしまっていたのです。


なんて馬鹿な人なんだろうと。


ありがとうと素直に受け取れば良かったのにと。

その言葉を糧に、次の足を踏み出せば良かったのにと。

何がそこまで彼を突き動かしていたのだろうかと。


さあ、私の旅は始まったばかりです。

多くの人に出会うでしょうか、多くの挫折を味わうでしょうか。

旅路の果てに、この想いを貫き通すことが出来るのでしょうか。

それでも今度こそ、幸せを叩き込んでみせますから。

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