降り続く雨と
ある日私は雨に会いました。
しとしとと降る水の流れに、上手く言葉をかける事が出来ません。
これが透明だというのなら、どうして私はその先を見通す事が出来ないのでしょうか。
これがやがて止んでしまうというのなら、そこで気付く事が出来るのでしょうか。
私はひとり雨に向かって問い掛けます。
いつまであなたは降り続けるつもりなのかと。
彼女は表情を変えること無くこう言います。
何も理由が無いから、その虚無感が無くなるまではと。
私は重ねて問い掛けます。
自然の恵みとはよくいったものだが、それを君が背負う必要はあるのかと。
彼女はそれでも気丈に振る舞います。
誰かに必要とされるなら、誰かを支える事が出来たなら、それで私は幸せだったと。
自分が必要とされない世界がそこにあったとしたら、あなたがどうするのかを想像しなさいと。
残念なことに私はその問いに対する答えを既に失ってしまっている。
私は既に必要とされていない人間なんだと理解して欲しい。
雨はより一層強さを増し、地面を打ち付けます。
彼女は私に問い掛けます。
あなたはどこまで自分ことを理解出来ているのかと。
私はその問いにこう答えます。
理解する必要はありません、酷く不格好なこの姿のどこを考慮する必要があるのかと。
彼女は重ねてこう言います。
どれだけ晴れが強くても、どれだけ雨を降らせても、あなたの目は盲目なのねと。
他人をそれだけ理解しておきながら、肝心な心だけが欠けているのねと。
雨は止む気配も無く、私を打ち続けます。
私は彼女の言葉をもう一度噛み締めます。
故に私は孤独なのだと、いえ、孤独すら感じない人なのだと。
だからこそ、求めずに求められるままに答えを返す存在なのだと。
それではまるで狂気の塊であり、救い様の無い愚か者だ。
追い求めることはせず、追い詰められる者だけに手を差し伸べる。
それではまるで、私の理想の姿ではないですか。
雨はいつまで経っても止む気配がありません。
彼女は透明な体を不透明にし、こう言います。
何があなたをそこまでそうしてしまったのかと。
それではまるで、私の願いは叶わないじゃないと。




