第98話 シン・お家騒動 2 本家に
「そ、そんな・・。ハサンは当家でも腕利きの騎士なのに。
殴られただけで、ひっ!」
アマギが睨んでいた。
死ぬぞ。止めとけ。
「失礼致しました。あまりにも不敬であったのでつい。
アレは、他の者が回収しに行っておりますがゆえ、大丈夫かと。」
どこが?と聞きたいが。それよりもだ。
「話が止まったが、なんでそこまで切羽詰まってんのか理由を聞かせてほしい。」
「かしこまりました。
では、お嬢様に代わり私めが。」
マルティネスさんの解説ではこうだ。
お嬢様の名前はカーチャ・ファイストで、第5女という残念下っ端の存在だ。
結婚相手は誰もおらず、名家との相手は大体上の兄姉たちときた。
たまたま、エンバイス伯爵家のミソッカス息子の俺に白羽の矢が刺さった訳だ。
ファイスト家はこれが上手くいけば、名前や貴族としても拍が上がる。
逆に失敗しても、所詮は5女と笑われるだけだからか。
カーチャさんは最初で最後のチャンスのために、命を賭け、自身を磨いてきた訳だ。
しかし、肝心の俺は消えてしまったと。
確か・・4年経ったぐらいかな?
そのせいで、カーチャさんは婚約取り消しになりかけてしまい、1人でに絶望していたということ。
しかし、実は生きており、王国にいる事が知れたと。
『キッカケは、戦争と名前が冒険者や龍国を通して知られたことかと。』
結局は、昇進、出世と共に、次の災いが来ただけである。
『人の事を嘲笑っていたからですよ。』
んな1週間前の陰キャへの笑いが、こんな形で返ってくるとは思わなんだ。
「なるほど。それでも家に戻らんよ。」
「な、なんで!」
「なんでも何も、戻るメリットがないだろうに。
それにな。こんな俺でも必要としてくれる人がここにはいるからな。」
「お館様・・・。」
アマギがウットリ目で見ている。
今夜抱くか。
『話に集中して下さい。』
「けど!私は!私は!・・」
カーチャは泣き崩れた。
あーあ。こういうのって狡いと思うんだ。
よくよく考えてみれば俺も悪いな。
あまりにも世間に疎かったな。
まさか婚約者とは。
「結婚はしないが。
どれ。いっちょ本家とファイスト家に話を聞きに行くとするか。」
『巻き込まれるの好きですよね。』
ちげーよ。女の涙に弱い漢さ。
俺もこの力が無ければどうなってたんだろうなって。
他人事のような気がしなくてな。
『だから巻き込まれるのですね。』
もうそれでいいよ。
とにかくだ!親父を一度ぶっ飛ばしに行く。
こんな面倒事を放置しやがってってな。
「お館様。では、メンバーと隊の準備をして参ります。」
「いらん。てか多すぎ。」
「し、しかし!」
「アマギ。何も1人では行かないよ。
ただね。大所帯は余計な事件を引き起こすだけなんだ。
分かってほしい。戦争の後なんだ。」
「お館様・・・。狡いです。
そんな愛らしい目で見てくるなんて・・。
今夜呼んで下さい。」
同意してもらった。俺の夜を引き換えに。
『良かったですね。』
これで枯れるな。
ここ最近夜どころか、暇さえあれば情事に迫り来る奴らが増えた。
『今は非常に無力ですからね。
ある意味、沢山蹂躙されていますね。』
卑猥な意味なのに、卑猥に聞こえないってどういうロジックなのよ。
「よ、よ、夜とは!
な、結婚されて・・あわあわわわ。」
パニくり過ぎやろ。
それでよう俺と結婚とか言えたな。
そこはお嬢様って事か。
「結婚はしてない。それよりもだ。
本家に向かうには向かうが、準備を必要だ。
勿論、時間をいただくよ?」
「かしこまりました。
我々も・・ハサンを拾わなくてはいけませんので、そうですね・・・。
2日後はどうでしょうか?」
妥当か。
「それで行きましょう。
では、私は準備があるので、これにて失礼致します。」
「分かりましたわ。
私たちも引き上げますわよ。」
「かしこまりました。お嬢様。」
「では、門までご案内致します。」
アマギはそのまま、カーチャお嬢様とマルティネスさんと共に部屋を出た。
俺も同時に隣の寝室へと準備をしに入った。
「さてと。誰を選ぶかな。」
『かなり慎重に選ぶ必要があるかと。』
「その通りだ。」
『下手したら戦争が起きますので。』
「ああ。全くもってだ。」
『・・・・・。戻りたくなさそうですね。』
やっぱ分かる?そりゃ、お前さん。
あんだけデカい顔して出て行ったのに、ちょっとした事情で親元を頼るってのはなんかこう、情けないというか、何というか。
『実際にお会いした訳ではありませんが。
記憶を見る限りでは、とてもそうは思えません。
むしろ、親という存在は子供に頼られた方が嬉しくもなる存在かと。
逆に、今まで黙っていた結果、すれ違いが起きたのでは?』
「痛い所突くよね。」
その通りだ。
前回の家出は、確実にコミュニケーション不足によるものだ。
単純に話す勇気が無かっただけという。
「でも、言い出したからにはやらんとな。」
『カーチャ様と自分を照らし合わせましたか。
家出がなければ、ああなっていたかもと。』
「間違いない。結婚に関してかは分からん。
ただ、似たようなことにはなっていただろうな。
それよりもだ。メンバー選抜しないとな。
当たり前だが、常識人で固める。
今回は他家にも乗り込む予定だしな。
一応、皇国内に入るかもしれないし。
となるとだ。」
『下手に国で騒ぎを起こす人よりはですね。』
「そういうことよ。
それと、兄上や姉上たちは元気かな。」
『確か、お二方は計算上では、既に卒業して国の軍属かエンバイス伯爵領にて勤務されているかと。』
「それな。文官とかだといいが。
戦争を経験してから分かったが、ありゃ簡単に人が死ぬ。
前世からだが、戦争ってのは嫌いだよ。」
『それが分かってるなら、いいではありませんか。
どちらかというと、マスター以外のこの世界の住人は、戦争に慣れしたんしでしまっていますから。
マスターも全て、こちら側にならないようにして下さいね。』
偉く説教のような、説法のようなもんを説かれた。
けど、言いたい事は分かる。
戦争に慣れるのは怖いな。
ちょっとばかりは、シアたちの暴走が頼りになるな。
コンコンと寝室のドアからノック音がした。
「どぞどぞー。」
「失礼致します。ミレルミアです。」
何だ。嫁か。
『早速戦争が起きるので、余計な一言は控えて下さいね。』
ガチャリと寝室に入ってきた。ミレルミア。
おや?その白の制服は。
「?ああ。この服ですね。これはギルドの制服です。
今朝方届いたらしく、全員がこれに着替えております。」
んー。俺知らないんだけど。
そう言われてみれば、アマギとクロエの服が黒の着物から、白色の着物になっていた。
装飾品もなんかあったわ。
『鈍感過ぎます。』
「なるほどね。規律みたいなもんかな?」
「そこら辺は何ともですが。
ただ、ギルドも大きくなり『Aランク』にもなりました。
他のギルドメンバーとの見分けや、我々の存在を更に認知してもらうためかと。」
「割と奥深いのね。」
『見分けは大事ですね。
侵入者対策で服に刻んだであろう、刻印と顔が一致しなければ入れませんし。』
え?何それ。すご!
「んーてか。俺のは?」
「そ、その。申し上げ難いのですが。
旦那様の制服は特注で作らせていますので、暫くは時間がかかるかと。」
あ、そうなん。ハブられていなのなら。
でも気まづいな。
他のギルドさんたちから見たら、アイツだけなんか違うぜ。的なね。
『言われ慣れているでしょう。』
棘を差し込むな。
慣れたから言われてもいい訳でないです。
僕か弱い人間なの。ガラスの少年なの。
「それはそうと。先ほど、カーチャ様をお見かけしましたので、何事かと参った次第でした。」
「あれはね。そうだね。ミアは知ってたかな。
なんか、あの人が俺の、エンバイス家としての俺の婚約者らしくてね。」
「やはり、それ関係でしたか。」
流石はミアだ。
ポンコツになる事もあるが、元は冷静なお姉さんだ。頼りになりますね。
「それで、旦那様的にはどうされますか?
私的には放置してもいいかと思いますが。
今更、話を掘り返して何になるのかと。」
「そうなんだけどね。
アレね。なんか似ててさ、俺に。
ほっとけないというか、無視したら自分に許せなくなるってかさ。」
災いに首を突っ込む訳では無い。災いかもしれんが。
今回は確実に一個人の私情だ。
そんなことに、メンバーも必要なのかと思っている。
「お気になさらずとも良いかと。
我々は、あなた様に皆ついて行く所存です。
一言命じて下されば、即時行動を開始致します。
どうぞ、ご遠慮なくお命じ下さい。」
このお姉さんたちは俺を甘やかすプロだ。
そんな真っ直ぐに見られてしまったら、こっちは何も言えない。
『皆、覚悟は昔から決めています。
マスターもそうではありませんか?
1人で生き抜けるほど、この世界は甘くはありません。
何人が束になろうとも、失敗する時もあります。』
わかってるよ。
だから、人数を増やしたり、自身たちの自力アップをしている事もな。
「よし。なら頼るか。
どうせ、俺は力無いから何もできないしな。」
「かしこまりました。
どなたをお連れ致しますか。」
「そうだな。
交渉役でマートンとキュルキを連れて行くのはまず決定と。」
「マートンですか。もしかして・・・。」
そうです。そうなんです。
クックックック〜。私悪い顔してます。




