第92話 事後処理 1
キャスト睡眠中
彼が倒れてから、2日ほど時が過ぎた。
戦争の痛々しい痕は今も残っている。
幸い、民間人の死人は抑えたが、代わりに多くの龍人兵が亡くなってしまった。
この2日は彼らの葬いを、アルマとスィーナを中心に取り行われていた。
代表として深くは関係しなかったが、エラルドとシェリオが出席していた。
そんな2日が過ぎ、3日目である。
「主様のご様態は?」
「アリシア様。依然として、眠ったままです。」
アリシアは一定時間毎に訪れては、自分の隊、神官フェリシアに聞いていた。
「おはようございます。アリシア神兵長。」
アリシア隊の鬼娘こと、トスカーネがやって来た。
「ああ。おはよう。
未だ目を覚さないのだな。」
「はい。残念ながら・・・。」
「無力だな。我々は。」
アリシアの一言に対し、何も言えなかった一同であった。
「また来てんのか。アンタも懲りないなぁ。」
キャストと仲間になる前に一乱闘した、龍人ハーフのベルナーレだ。
彼女はミレルミア隊の部下になっていた。
「悪いか?」
「んいや。全く。ウチの隊長も同じだしな。」
「だろうな。というか、殆どの奴らが、ここに来ているな。」
「仰る通りですよ。」
エルフ族のイケメンこと、アズドラがその場にいた。
「フン。主様にお仕えしている以上、当然の責務だ。」
なぜか威張ったアリシアだ。
アズドラはため息を軽くついてから。
「護衛は今食事を取りに行っている、ヘルゼンとセレストを含めた人数で護衛しております。」
神官のフェリシアによる身体メンテナンスにサポートでセレスト、ヘルゼン、サクヤで行っている。
アズドラ、ヴィシュヌ、ベルナーレは武装し護衛をしていた。
「私が側に入れないのは不満だが、我が隊のメンバーがいるのなら少しは安心だな。」
アリシアは不満だと主張したが、理解していない訳では無かった。
「申し訳ありません。アリシア様。
ですが、事後報告と今後の事に関しては、我々では対応できないかと。」
「分かっている。フェリシアよ。頼んだぞ。」
聞きたい事と言いたい事が終えたアリシアは部屋を出た。
その足で会議の舞台となる、王城の王の間に向かった。
「『ファミリア』1番隊のアリシアだ。」
「かしこまりました。どうぞ中へ。」
大きな扉が開き、中に入った。
中では、既に待機しているメンバーも数人いた。
まだ来ていないのが、ルシファルとハイネだった。
「フッ。遅いな。自称1番隊さん。」
ヘルガーは挑発していた。
「今はお前と遊んでやれるほど、元気がある訳ではない。」
「そうか。分かってるならいい。」
こちらを試したようだ。
少し苛立ちはしたが、黙ってミレルミアの横に並んだ。
「す!すいません!遅くなりまひた!」
ハイネが飛び込みで入ってきた。
「カッカ。そうでもないぞ。
まだ1人おらぬようだしのぉ。」
アルマが優しく諭してくれた。
「ふぇ?あ、ルシファルさん・・・。
マイペースなんだから。」
「フフ。愉快な方々ですね。」
スィーナを中心に少し笑いが生まれた。
「バカなだけだろう。」
バーナードが愚痴ると、『ファミリア』側から複数の鋭い視線が飛んできた。
ビクッと反応したバーナードはマナミの後ろにサッと隠れた。
「アホだろ。お前・・。」
憐れむように、バーナードを見たマナミだ。
「戯れてないで、ささっと始めた方が良かったんじゃないの?」
「姉さん。せっかち。」
マイとメイも既に出席していた。
メイはまだ足がおぼつかないのか、杖をついて立っている。
「アンタが心配なの。
無茶するなって言ったのに無茶して。もう。」
「うん。ありがと。」
「シスコンバカが」
「何よ。筋肉女。」
「あん?」
マナミとマイは相変わらず仲が悪いようである。
「俺の安全地帯は無いのかよ。トホホ。」
横でバーナードが泣くという始末である。
「そっちの方が、カオスだろ・・。」
エラルドはため息をついた。
「おや。みんな集まってたのかい?」
程なくして、ルシファルがやってきた。
「いや、時間まで少し有ったからの。
暇であったから談笑をしておったわ。」
「そう。ならいいや。」
「さて、役者も揃った事じゃ。
会議を始めるかの。」
アルマは王の席には向かわず、横に立った。
「ほれ。早う座らんか。娘よ。」
「!は、はい!」
スィーナはバーナードの手を咄嗟に引いてそのまま上に登っていき、王の席に着席した。
その光景をクロエとアマギは睨んでいた。
王の席の隣に人がいるのは、専属の者である証である。
アルマは今回、進行とまとめ役を引き受けていた。
そのすぐ後ろには、龍人の宰相が数人ほど顔に薄いローブをしながら待機していた。
「では初めに。
この度、戦にご助力していただき、誠に深く感謝を申し上げます。
それと褒美・・というよりは、依頼料に関してですが、望みの物はありますでしょうか?」
エラルドが代表して前に出た。
「本来なら跪くべきだが、どうもそういう体制は整っていないようだ。
無礼を承知で、このまま話させていただく。」
よろしい。とスィーナは頷いた。
「ありがとう。
では、こちらは金銭は要求したいが、無理に今寄越す必要は無い。
幸い金は沢山ある。支払いの裁量はそちらに任せる。期間もだ。
次に、ドラグ鉱石を我がギルド宛に輸送していただきたい。」
龍脈を多く吸った鉱石が、この龍国周辺には存在している。
その土地権と採掘権を管理している国が龍国である。
「お母様。」
「なに。よかろう。その程度。
どちらにせよ。
我らが使う事の方が少なく、儲けのための物資でしかなかったからの。」
宰相たちも頷いていたため許可された。
「それはよかった。
では次だが、魔物や魔族の素材は要らない代わりに、こちらで冒険者活動の権利を約束してもらいたい。
今素材をもらうよりは、こちらから未発見のダンジョンを探索し、武器や素材を手に入れた方が良さそうだからだ。」
「ふむ。確かに。
今までの此奴らは、ダンジョンを放置しておったがため手付かずの宝の山か。
よい。良かろう。思う存分探索せよ。」
かなりあっさりと認められたかと思ったら、宰相が。
「な、なりません!
見ず知らずの者たちの権利を認めるなど!」
「そうですぞ!
いくらアルマ様でもどうかと・・。」
スィーナがスッと手を横に出した。
「これは我らの罪のはずです。
本来、探索して問題を解決していけば良かったものを。
そんな今までしなかった我々が、果たして今もなお多く存在するダンジョンを探す事ができるとでも?」
「ですが!」
「では聞きましょう。
沢山の・・大勢の同志が亡くなりました。
それをあなた方が補っていただけるのですか?」
「なっ!いや。その。」
「それまでじゃ。
分かりきった内容をグチグチ言うでないわ。」
不満そうに下がる宰相であった。
「いいでしょう。
むしろ、お願い致します。
ダンジョンの取り分はそちらで構いません。
龍脈の解決にも取り組んでいただけるのであれば、別で報酬を用意致します。」
「ありがとう。それで構わない。
実際行かんと何ともだからな。そこは追々で大丈夫だ。
では最後はそうだな。
私よりは彼女たちの方が良いだろう。」
エラルドは後ろにいる、クロエとアマギに目配せをした。
「ありがとうございます。エラルド様。
代表して、黒龍の長をしている、このクロエが話させていただきます。」
途端に周りが騒ついた。




