第91話 終戦へ
難易度高くね?
とりあえずは、ミアを巻き込まないようにしないとな。
「ミア。すまない。
抱っこしておいて何だが。俺の背後にいてくれ。絶対に離れるなよ。」
「か、かしこまりました。」
すぐさま背後に回ってくれた。
ふむ。大きな胸の感触が直に伝わる。
しかも薄着のため、より生々しく感じます。
別の聖剣が発生しそうだ。
『クソでも食ってろ。』
すいません。まじめにね。
イメージはあれだな。
ベ◯ータさんのシーンだな。
『お別れは言わなくていいので。
別に死なないので。』
あ、はい。
少し空中に浮いてと、背中に美人さんを引っ付けた状態で。
「ハァァァァァァ!!!!」
俺の周りに気を張り巡らせ、ターゲットを広範囲に設定する!
ミアは巻き込まないように。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
過去1叫んだ。
それぐらい気合いというか、声出さないと成功しない技だったから。
周りに高エネルギーを掃射した。
遠くから見ると、花火のように綺麗で光り輝いているだろうな。
爆発的な光が周囲を包み込んだ。
能力の高い奴なら対処可能だが、そうではない奴らは光の奔流に飲まれて消えていった。
やがて、光が少しずつ収まった。
「うげーー。ゲロゲロ〜。流石にキツイ。」
『演出で済んでいるので大分マシですね。』
マシなのこれ?
もう何回目かのエネルギースッカラカンコースだよ。
「旦那様。大丈夫でしょうか?
私が不甲斐ないばかりに、申し訳ありません。」
後ろから顔を覗かせてきたミアだった。
「大丈夫だ。問題ない。」
『チョロ。』
「それよりも移動だな。トンズラこくぜ!」
今のうちに、離脱するようにミアを背中でおんぶしながら超ダッシュで逃げた。
しかし、生き残りの魔王級や魔族が他にもいたのか、魔法砲撃がやってきた。
「うぉっ!危ねぇ!」
流石にシールドとか器用な技は俺にはできないため、1ダメージも喰らわないように『気来視』で避ける方法しか無かった。
「だけど数が!多過ぎ!」
ミアは呪いと妨害系のせいで最早、戦うどころの問題では無かった。
そのため、当たったら確実に致命傷となる。
「くそっ!これ結構強硬策じゃんか!」
『当たり前です。
敵地の中心から逃げる行為なんて、リスク無しではできませんから。』
しんどい。
気力も空になりかけで何やかんや、俺にダメージが蓄積されつつあるし、ミアを抱えての逃走だ。
「最後まで保つか・・。」
手放しそうな意識を何とか繋ぎ止め、ひたすら前を向いて逃げていた。
「旦那様!私を捨てていっ!」
「それはダメだ!
今度こそ約束してっからな。
大切な物から目を逸らすなって。」
ミアはキャストの後ろ姿から、彼が大きく変わった事を悟った。
「(また大きくなられましたね。
子供っぽいところから、急に大人なのような雰囲気を感じられる。)」
「ああ。でも俺はもう1人じゃないみたいだ。」
前から緑の龍が見えてきた。
「あ、あれは!」
「初めて見るな。アイツの《《本当の姿》》を。」
巨大な緑の龍はキャストを守るように前に立った。
「『久しいな、若よ。おや?随分と成長したか?』」
「お前ほど変わってないわ。」
「『フッ。変わるというか、こっちが本当の姿でな。
前は人間如きにしてやられたが、今度はそうはいかんという所を見せねばな。』」
この巨大な緑龍の姿はエラルドさんだ。
「ほう。随分と無様を晒しているな。」
この凄く誰かさんディスる感じは・・・。
「お久しぶりです。神よ。私です。
あなたのヴィシュヌでございます。」
出た信者だ。うわ〜。
「お、お久しぶりです。」
「なぜお前がいる。」
ミアが怪訝そうに聞いている。
「簡単です。私たちが参戦するという事は、有り体は整ったという事です。」
この透き通るような綺麗な声は・・
「お久しぶりです。キャスト様。
大変長らくお待たせしていまい申し訳ありません。
この不始末を如何ような、処分も受けましょう。」
シェリオさんだー。サンダー!
見た目変わらずイケメンなんですね。
くそっ。
『小物感が凄いですよ。』
「ひ、久しぶりだね。」
「大将っ!よっす!」
この軽快さはグラディエか。
変わらずだな。この男前イケメンが!
『妬むのか、感動するのかどちらかにされては?』
「もう。お姉さん感心しないな。
2人共、そんなにボロボロになって。」
この姉反応はナタリアさんだ。サンダー!
『うるさ。』
「ごめんよ。俺初めてだったからさ、こんなに自分を見失ったのはさ。」
「それだけ仲間が大切なのでしょう。」
イケメン騎士のウェインや。
チクショ。イケメン率高くね?
俺にトドメを刺すつもりだな。
「割と多いね。」
「僕もいるよ。」
「おわっと!ルルか。ビックリした。」
いつのまにか、俺をお姫様抱っこしてきた。
ん?ミアは?
エラルドさんの背中に思いっきり投げられていたし。
ミア何かこっちに向かって叫んでるし。
「この面子なら申し分ないだろうね。
じゃあ、ボス。撤退の指示を。」
ルルに言われたので、仲間に号令を出した。
「よっし!お前ら!逃げるぞーーー!」
「『そんな元気に言う事でも無いだろうに。』」
途中途中で仲間を拾いながら
「逃げろ〜♪逃げろ〜♪俺た〜ち♪」
歌っていた。
エラルドさんの背中で。
「『その歌をやめろ。力が出なくなる。』」
「何を言うか!エラルド!
神の歌だぞ!神聖な歌声だぞ!」
「そうだぞ!キャスト様を侮辱するなら、ここで叩き切るぞ!」
ヘルガーさんとヴィシュヌさんが意気投合しながら何か言っている。
「全く元気だね。お前たちは。」
ロキが魔法障壁を張りながら、カウンター魔法も放っていた。
「凄いなロキ。
そんな器用な事までできるとはな。」
「そんな!勿体なきお言葉です。
このような匙、キャスト様なら容易い事でしょう。」
ヨイショしないで下さい。できませんから。
後、前を見て前を!攻撃来てるから!
「しつこい奴らだ。
折角のキャスト様とのお時間を邪魔するとはな。大魔法を入れ込んでやろうか。」
「『やめろバカ。俺にまで被害が出るだろうに。
お前たちバカどもを乗せて動いとるんだ。
安定性が保てなくなっても知らんぞ。』」
確かにふと思った。
そんなに揺れないし、向かい風もない。
平行姿勢を保ちながら飛んでくれているみたいだった。
「ありがとう。エラルド。」
「『気にするな。
俺以上に働いたではないか。』」
本当にそれな。
自ら行ったのもあるけど、俺に矛先が向いてくるのはどうにかしてほしい案件だ。
「帰ったら休んで祓いだな。」
「旦那様。改めて、ありがとうございます。」
横からミアがお礼を言ってきた。
呪いやらとかは解除されたようで良かった。
あのダークエルフ魔族と何があったのかは、敢えて俺は聞いていない。
タブーな内容臭いからだ。
「いや。いいよ。気にしないで。
さっきも言ったけど、俺がそうしたいからしただけだ。」
「主様!!」
うぉっ!ビックリした!顔近っ!
「申し訳ありません!」
泣きながら謝らないで。
シアも悪い事してないのに。
「わ、わだじが!づいていながら!
ごんなごどに!」
泣き過ぎだから。ハイネかよ。
頭をヨシヨシしてあげながら。
「そ、そうか。そんな事はないよ。
いつも助けてくれてるし。
むしろ、こちらこそごめんだよ。」
泣きまくるシアをヨシヨシしながら、今後を考えていた。
もっと強くなるか。
この身体がとかじゃない。
知識や技術が足りない。
『知識は私がいるかと。』
俺個人も知っておきたいからな。
それに、聖剣の使い方も教えてもらわんとな。
龍国到着
「着きました。足元にお気をつけて下さい。」
ヴィシュヌが先に降りて、手を取ってくれた。
俺お姫様かな?っと。
ん?あれ?身体から力が抜け・・・・・・。
『お疲れ様です。少しお休み下さい。』
そのまま目を閉じた。
「やはり。ご無理をなさっていましたか。」
ヴィシュヌがお姫様抱っこをしながら、キャスト顔を覗いていた。
「おい。やましい事を考えるな。」
アリシアが突っかかってきた。
「ほう。これは、主を1人で行かせた、ポンコツ先輩ではありませんか。」
アリシアからギリっと歯軋りが鳴った。
「・・・・・・。」
「あまり責めないでくれ。私が悪い。」
己を恥じていたミレルミアだった。
「その話は後で構わんか?」
エラルドが一度この空気を断ち切った。
「エラルドの言う通りです。ヴィシュヌ。
キャスト様の身を整えさせ、ベッドまでご案内しなさい。
護衛は数十人体制で、それぞれの隊のメンバーで選抜しておく。いいな?」
「承知した。シェリオ殿。」
そしてそのまま、その場を去っていった。
「やはり、アイツと2人は危ない。私がっ!」
「ああもういいから。とりあえず休め。
俺が付いとくよ。」
グラディエもそのまま部屋を出ていった。
本来なら、アリシアたちは戦争の連日でかなりの疲労が溜まっている。
その中で、奇襲作戦・敵陣にて主の保護など、1日にしては詰まり過ぎるできごとに、疲労感を忘れてしまっていた。
「そう、だな。少し休むか。」
「ああ。僕は遠慮なく寝るよ。じゃ。」
ルシファルは躊躇せずに部屋を出ていった。
「アイツはある意味、図太いというかなんというか。」
「ブラス。お前も動いたそうじゃないか?
しっかり休んでおけ。
後でまた動いてもらうぞ。」
「これはこれは。
過労死せぬように、一足お先に休ませてもらうとするか。」
エラルドの一言でブラスもまた去って行った。
そんな中で、ミレルミアは何か言いたげな顔をしていた。
「今はいいです。ミレルミア。
とりあえず、休みなさい。
貴方に何が有ったのかはわかりませんが、今はゆっくりと休みなさい。」
シェリオに諭されたミレルミアは、暗い表情をしながらも頷いた。
戦争編あと少しで終わります!
長い章となってしまいました。申し訳ありません。
キリ良くって案外、難しいですね。
今後も何卒、よろしくお願い致します!




