第90話 感情爆発
アリシアはキャストの速さに、反応できずにいた。
これでも実力に自信があり、相手の動きなども気の力も相極まってか、余裕が出ていた。
しかし、その更に上の速さを目の当たりにし、未だ自身が無力であった事を酷く痛感していた。
「しまった!クソ!けど、黙ってなど・・。
クソが!私の雑魚が!」
自分を罵ってしまうほど、実力不足を感じていた。
「おい。どうしたっ・・。わかった。」
ロキリアが敵の頭を掴み、引き摺りながら来ていた。
「?そいつはなんだ?」
「ああ。弱いけど魔王級の女悪魔だよ。
ミレルミアの件は聞いたよ。
やけに感情的らしく、まともに戦えていないとは思ったけど、まさかね。」
「チッ。あのバカは。
こうしてはおられん。すぐにでも!」
「それは難しい。」
アリシアはロキリアの胸倉を掴み怒鳴った。
「どういう事だ!キサマ!それでも!」
ロキリアが今度は胸倉を掴んだ手を思いっきり握った。
アリシアの手から血が少し出た。
「調子に乗るなよ。ミスしたのはお前だ。」
「っ!」
何も言えなかった。
「ふぅ。行かないわけでは無い。
今、更にバラバラになると危険だ。」
アリシアはこれだけで、どういう意味か分かっていた。
「けどね。援軍も来たみたいだ。
とりあえず、集まったら速攻で追いかけよう。」
「分かった。」
ルシファルVSヴァルツー
「まだ戦うのー?」
「当たり前だ!この前の借りを返すまではな!」
「それ僕じゃないし。」
激しい戦いを両者繰り広げており、周りが焼け野原に。
「撤退って言われたんでしょ?
作戦無視は騎士道に反するんじゃないの?」
ルシファルはやる気がしなかった。
相手は強いが、負けない自負がある。
しかし、戦う内容がどう見ても、自分が関係したものではないため。
「(帰ってきたらお仕置きだな。もう。)」
ヴァルツーがあの中でも、かなりの実力者であるため、今回は有無も言わさずにヘルガーたちの元から切り離していた。
だが、内心はかなり後悔していた。
「はぁ〜。敵なのに何でここまで戦う気が起きないんだ。」
「何をため息など付いている!」
ヴァルツーは舐めやがってと、余計な気合いが入っていた。
しかし、すぐにその気合いが解けた。
「!!?こ、これは大魔王様!
はい。はい。かしこまりました。
すぐに軍に合流致します!」
「上に怒られたのかい?」
「違う!どうやら、貴様らの仲間を1人捕らえたと報告があったからだ。
すぐに護衛に当たれと言われたまでよ。」
「何?」
流石のルシファルも怪訝な表情をした。
気づいた時にはヴァルツーは去っていた。
「今度はどんな面倒事を起こしたんだい。」
そう言い、ヘルガーたちの魔力を探して転移した。
カイザル軍撤退中
「カイザル様。全軍無事合流できました。
道中、新たな援軍に追い討ちをかけられ、かなりの損傷を受けました。
更に、悪い報告が。」
「何だ?」
「魔王級の者が何名かやられました。」
「マジぃ?ヤバくね?僕怒られるじゃん。」
「いや。怒るとかそんな事よりも。
それぐらいの実力者がいた事と、ギベルを失ったのは大きな責任問題となりますよ。」
「あーあー。あの脳筋やりやがったよ。
何やかんや、いつもは勝って帰ってくるのに。
あのバカが!
僕に最後まで迷惑かけやがって!」
「カイザルくん〜いる〜?」
「?何だ?ラグエルって。」
ラグエルの近くには魔力封印手錠と全身に妨害魔法を付与され、ラグジュエリーな薄着を着させられていたミレルミアがいた。
「ーーー!ーーー!」
言葉が出ないようにもされていた。
「うわお。凄い綺麗でエロいね。」
「カイザル様。素直過ぎます。」
「やっぱー。そうだよね。僕凄いだろう。」
フフンと鼻を高くしたラグエルだ。
「ああ。凄いけど、それで?僕にくれるの?」
「あげるってか、まぁ、調教してほしいのよ。
今だと、噛みついちゃうしさ。
それに、僕これ得意じゃないからさ。」
ミレルミアの背中を押して、カイザルの元まで倒した。
ミレルミアは何もできずに、ただ横たわる事しかできずにいた。
「なるほどね。
でも、僕の物になっちゃうよ?」
「そこなんだよね。そこを何とか頼む!
代わりと言っては何だけどね。
そいつのダークエルフの里の事を教えるからさ。」
「ふーん。まぁ、やってみるよ。
ダークエルフが代わりに手に入るなら。それでいいしね。
しかも大量にという事なら。」
「!!ーーーー!」
何かを言っているが、何も聞こえない。
「一応、声出させてあげたら?」
「すぐ舌を噛んで死ぬと思うよ。」
「怖っ。・・・。
けど、人の物を盗るって興奮するよね。」
ミレルミアは涙を流していた。
これから起こることではなく、自分の不甲斐なさに。
騎士である事を誓っておきながら、捕まり、生かされている。一生の恥を抱えていた。
「すぐに、気持ち良くなるからさ。」
カイザルがミレルミアの胸を触った直後に馬車部屋の外で大きな音が鳴った。
「!!なになになに!」
「この感じは。まさか!」
メイビスが外に出て確認した。
そこにいたのは男は。
「よう、テメェら。
面白い事しようとしてんじゃねえか。」
キレキレのキャストがいた。
「すげぇ。気分が悪いわ。」
「何だ!キサマ!」
その言葉を皮切りに周りから魔族が襲ってきた。
「邪魔だ。ザコ。」
動かずに、気だけで魔族どもを気絶させた。
『・・・・・。』
キャストの気は『気天極』によって更に上がっているが、怒りのせいで体内の気力がどんどん放出されている。
このまま使い続けると、身体が大きな気力に耐えきれず、最悪の場合、破裂死する可能性がある。
解放された本来の気力は使いこなせていないのに等しい。
「分かってるよ。分かってんだ。マジで。
でもよ。理性と本能は違うんだよ。」
そう言いつつ、頭から血が流れている。
『わかりました。目的だけ遂行して帰りましょう。
ミレルミア様は恐らく、あの大きな馬車にいます。』
「分かってる。豪華な上に、如何にも趣味の悪そうな奴が乗ってそうだからな。」
「下等種族風情が!魔王様方をバカにするとはな!このアークデーモンのわっ!」
ムカついていたので、気弾1発で頭を弾けさせた。
首から下がなくなりドサッと倒れた。
「次来るか?こないなら、進ませてもらう。」
「そうはいかせん。」
2振の魔剣が俺に迫ってきたが、避ける事はせずに2本の腕で受け止めた。
「なんと!」
「驚くことか?」
2本の腕で『化頸』をし、剣を外側にズラして懐に飛び込み、両腕で腹部を殴った。
鎧越しではあるが、浸透系と『化頸』の回転力を加えた一撃を入れた。
「ぐふぅ!」
二刀流の悪魔剣士はそのまま吹き飛んでいった。
「な、なに!テンガイ様が!」
「退け。」
ムエタイ流の飛び膝蹴りを喰らわせ、頭をへし折ってそのまま通った。
更に歩いて、馬車へと一直線に進んだ。
やがて、その手前で何人か待ち構えていた。
「うーわ。テンガイ吹き飛ばしたよ。あいつ。
ただのガキじゃないぞ。」
「おかしいですね。
魔力反応を感じないのにあの強さ。
是非、調べてみたい。」
「久しいな!少年!ん?少し変わったか?」
「貴様ら、ここで食い止めるぞ。
カイザル様が危ないからな。」
手前に右から、ラグエル・サバト・ヴァルツー・メイビスが並んでいる。
「おお〜。魔王級がこんなに!これなら!」
「いけるぞ!いけるぞ!」
急に元気になった周りの兵士たちだった。
「うるさ。ってか邪魔だな。」
「なに?お宅。ミアの彼氏?」
「気安く呼ぶとはな。ああ、なるほどな。
振られた男ってやつか?やめてくれよ。《《俺の女》》だぞ?僻んで気安く呼ぶなよ。」
「・・・。オーケー。ぶっ殺す。」
「たく。挑発に乗りおってからに。」
眼鏡悪魔が目の付け根を押さえ、やれやれ感を出している。
「今頃は犯されてると思うぜ。
俺らがお前と遊んでる間にはもうっ!」
面倒だったから、目の前の奴らに馬車ごと超広範囲弾をぶちかました。
4人のいた場所は大きなクレーターができ、馬車がひっくり返っていた。
「ゴッホ!ゴッホ!マジかよっ!
アイツやりやがった!」
ラグエルは転移したが、少しの衝撃波は受けていたらしく汚れている。
「ぐっ。す、すまない。ヴァルツー。」
「ごっは。き、ぎにずるな。」
口から大量の血を流し、腕が一本無くなっていた。
「サバトは・・。アイツは死んだか。
いや、正確には肉体が死んだだけか。
今頃は大魔王様の領地で、新しい身体に目覚めているだろうな。」
ヴァルツーは息を整え、高速自然回復を体内で発動していた。
その後、腕も生えてきた。
「!カイザル様!」
「うげーー!死ぬかと思った!」
首輪に鎖を繋いがれたミレルミアと一緒に出てきた。
「周りの兵は死んでるし、メイビスの護衛兵まで・・。
一体なん・・だっ・・て。」
「よぉ。さっきぶりだな。
ところで手を出したか?」
「いや。出してません。」
「いえ。胸を触られました。」
急に話せるようになったミレルミアから、真実が話された直後に。
「ぶっあ!」
カイザルの顔面がキャストの膝蹴り、ムエタイの『カウ・ロイ』によって打ち抜かれた。
そのまま後方に吹っ飛んでいった。
「だ、旦那様・・・!
申し訳ありません。私が・・。」
「何も言うな。
愛している女1人守るのは男の務めだ。
ならば、黙ってそれを受け入れるのも女の度量だ。」
「は、はい。ありがとう・・ございます。」
ミアは泣いていた。めちゃ泣いている。
小さい頃から知っているが、ここまで泣いているのは初めてだ。
「本当に大きくなられました。」
「そりゃどうも。
今はここから抜け出そうかい。」
お姫様抱っこした。そして。
「どうやって逃げようかな。」
苦笑いの表情をしていたのであった。
『アホですね。
そんな事もあろうかと、プランを考えていました。』
流石です!よっ!知恵者!よっ!天才剣!
『バカにするならこのまま死んでもらいますよ。』
何で、主人脅してんの?
『ではまず、空だと狙い撃ちされます。
かと言って地上戦だと戦力的にキツイです。
ですので、ミレルミア様を一旦置いて下さい。
そして、爆発的なエネルギーを全体に放射して下さい。』




