第84話 進化する個体 変革をもたらす者
俺はヨイショと起き上がった。
敵は右腕がぶらりと。
もう使いもんにならんな。
肩ごともって逝ってやったぜ。
「ぐぅぅ!ギィ!やるな・・。
まさかそんな特殊技で攻められるとはな。
勉強になった。
攻め過ぎれば、首が餌食になっていたのかもしれない。」
『フロントチョーク』、『サブミッション』、『三角締め』、『蟻地獄』などなど、首を絞める技は豊富だからな。
「へっ。その通りよ。」
「だが、その状態だからこの技が通用すると見た。
普通の力比べでは俺が上だ。
例え技術が必要な抜け方があったとしても、力でお前ごと叩きつけたり、吹き飛ばせばいいからな。」
ご明察通りです。
普段の俺はムリムリ。
この伝説のカチコチマンモードだからできるのだ。
『ついさっき、思いついたような技が伝説ですか?安っぽい伝説ですね。』
な、何を言うだーー!
例のセリフを変えてみた。
『バカな事してなてないで、相手に動きがありますよ。
相手は魔王級です。もう一波乱ありそうです。』
「くっ。まだだ。まだ俺は戦える。
俺は戦える。俺は!俺はっぁぁぁぁ!!」
急に叫び散らかした。
その時、雷のようなものが上から落ちてきた。
『こ、これは。神の加護!?』
は?なんでや!なんで魔王が加護!??
『元々、魔王側にも信仰している神々はいます。
邪神や悪魔神、亜神と言った類です。
しかし、加護を・・しかも、スキル自体を直接本人の答えに応じて贈るなど!
魔族の神々が彼を待っていた?何のために?
まずいです。もう勝てません。』
ふぇ!『知識の輪』さんやい!何だって!
『勝てません。
今まではこれならと思い、見守っていました。
ですが、ここで確実でかつ明確な差が発生しました。』
神に魅入られたか、神に仇なした者か。か。
『その通りです。
さまざまなオーガの特殊魔法や技を持ってしても、勝てる見込みはまだありましたが、これで無くなりました。
・・・・・。申し訳ありません。
やはり、私はポンコツでした。』
急に弱気になんなよ。
ピンチは今も昔もだ。
『し、しかし!今度ばかりは私のミスで!』
完璧なんてないんだっての。
魂が宿りし、生きし生きる者たちは過ちを犯すものなり。
お前も例外じゃないの。
だから、死んだとしても気に病むな。
むしろ、次に活かせ。
『そん・・な。次なんて・・・。
私には理解不能で・・す。』
知識や知恵じゃ、理解はできんわな。
そうこうやり取りをしているうちに、無事に進化を遂げたらしい。おめでとう。
「何だ?この感じは。
こう、新たな自分が生まれたみたいだ。」
煙から現れたのは。細マッチョの身長2m越えの冠のような形をした4本ツノの持ち主が現れた。
肌は赤黒い。メタリックはない。
しかし、透き通るような綺麗な肌に変わってる。
傷つくことが無いような雰囲気が伝わるぐらい、頑丈そうな肌だ。
そして、驚くべき事に黒き翼が生えてる。
種族変わったのか。
「随分と変わったじゃあないか。」
「そうだ。
だが、俺自身が生まれ変わったのはあるが、別に種族が変わった訳ではない。
圧倒的な力だ。
今なら、あの大魔王と一騎討ちができる?」
俺の事よりは大魔王様らしいな。
このままあっち行ってくれ。
「だが、決着をつけねばな。その前に。」
余計な一言共に、スッと右腕を触っている。
「治ったのかよ。完治早いわ。」
「ああ。お陰様でな。
神様ってのを少しは信じてみようかなと思ったぜ。」
「お生憎、俺は信仰心が無くてね。
冒涜者だからか。」
ギベルはニヤリと笑って答えた。
「ユーモアもあるのか。
やはり、生かして捕らえよう。
そして、フェルディラに頼む事にした。」
急に簡単に言うな。
「フェルディラって奴が従うのかも分からんがね。」
「従うさ。
アイツも死にたくは無いだろうからな。」
うわ。なるほどな。
魔王級の中でも飛び切りずば抜けた訳だ。
「さぁ、俺の女にするぞ。」
男だよ!まだな!ってこれからもだよ!
「では、行くぞ。」
カチコチマンモードの硬さでいける・・か?
いつのまにか、レーザーのようなもので、両肩と両腿を撃ち抜かれていた。
「なっ!」
そのまま力無く倒れた。
「こんな少しでも貫けたのか。強過ぎたか?」
言葉が出なかった。
何もしてないとかじゃない。何もさせなかった。
今までの反応できないからとか、できないならとかじゃない。
分からないんだ。これと戦う方法が。
「動けそうか。ならば、暫くは寝ろ。」
やば!
「ぐぉぉぉぉ!」
咄嗟にカチコチマンモードを解除して無理矢理飛び起きて、後方に下がった。
しかし、蹴られていた。
更に、後ろに下がっていったどころか、止まらない。
山に当たったのか、ようやく止まった。
「ゴフっ。」
血がまたしても流れた。
限界か・・・。足跡付いてるし。
内功が硬いせいか、強めに蹴りやがって。
跡残ったらどうすんだ・・よ。
『ま、マスター!!』
そのまま地面に倒れてしまった。
や、やべー。気を失う。
これはもうキツい。
サッと目の前にギベルが現れた。
「ふむ。予想以上に弱ってしまった。
すぐに、フェルディラに連絡して来させなくてはな。」
あー。更に俺の人生最大の末期が来る。
男に掘られる。
クソまずい。このまま死にたい。
『『ダメ。』』
なんだか聞いた事のある懐かしい声がした。
『『ダメ。』』
でも、今度こそ死なないと俺、辱めを受けてしまう。
『『そうじゃない。死んじゃダメッ!
私待ってる。パパ!私変わらないで待ってる。
だから、変わってもパパはパパなんだよ。』』
俺・・の。罪か。いや違うな、希望だな。
例え会えなくなっても、いつも思っていた。
理解されないし、理解しないだろうが。
けど、幻影か?は知らんが、確かに待ってくれているなら、俺は走り続けるだけだな。
会えるか分からないって?知らんがな。
パパなんだ。
娘の我儘ぐらいは聞ける存在なんだよ。
だから死なないし、負けない。
今はそんだけしかできない。
だから、それだけでも完璧にやってみせる。
俺は強い!娘に言われたらなお負けん!
娘の幻影から白い光が発生し、俺を包んできた。
温かい。
かつて感じた、赤ん坊の頃に抱っこしたり、笑ったり、泣いたり、ぼーとしたりしたあの温かさだ。
ありがとう
『『もう。ダメだよ。自分を責めちゃ。
怖がってたら折角の力も使えないよ。
怖がって、目を逸らさないで。
待ってるから。嫌いにならないから。大好きだから。』』
キャストの身体から、尋常ではないエネルギーが放出された。
「なんだ!これは!お前!」
キャストは元々、生命力豊かな子であった。
しかし、赤ん坊から成長期にかけて、徐々に解放されなければ、自身の身体がエネルギーにより爆発してしまう。
いち早く気づいたルシファルは下界に降り、契約術で自身と結びつけた。
その結果、勝手に人に干渉したとして、堕天となってしまった。
だが、正確には契約術ではなく、大元の根源が存在していた。
彼の大好きな娘の存在である。
この世界に来る前から、心にしまっていた記憶だ。
前世の無力な自分への負の感情が、久田 楽苦の経験値という、生命エネルギーを無意識に封印していた。
そこに、ルシファルが穴を開けたような感じになっていた。
そのため、少しずつ成長にするに至って、力が解放されつつあった。
今回は契約術そのものを自ら壊した。
正確には娘に呼び起こされた。
そして、前の自分の姿を取り戻す事ができた。生きた証と本来の目的を同時に。
これで本当の意味で転生が完了した。
これが本当の彼の姿。『完全なる人』。
「ヨイショと。」
身体の至る所の埃を叩いていた。
傷は秒で治しておいた。
アドレナリン、常時脳覚醒完了だ。
あー俺らしくなかったな。
正直に生きていたつもりが、いつの間にか、心にしまいながら、ボソボソと言っている感じ。
確かに、俺は俺を封印してたわ。
思った事を仕舞うのではなく、思った事を言うのが私だよ。良かれ悪かれね。
「痛えな脳筋が。TS趣味は俺にはねえよ。
女抱きてえからさ。」
「いきなり、ズバリ言うようになったな。」
「ハハハハ。そりゃそうだ。
さっきまで俺は俺を殺していたらしいからな。
また大好きなやつに教えられたよ。
つくづく未熟者だよ。俺は。」
「なるほどな。
しかし、この状況を覆せるのか?」
「もちろん。てか。簡単だよ。
五◯先生みたいな感じだよ。」
「は?」
『気活極』を改良した。
「『気天極』。」
「なっ!!なんだ。そのオーラは!?」
『ま、マスター・・。
私でも見えます・・。これは一体・・。』
「考えついてんだろう。
こいつが俺の気だよ。」
白色だが、確かに実在している。
俺の身体から山のように高く聳え立っている。
「全員視えるから多分わかんじゃね。」
「何をだ。」
「俺の勝ちってこと。」
サッと2人とも消えた。
ギベルンの右ストレートを軽く紙一重で避けて、代わりに、胴体にムエタイ流『肘打ち』を入れ込んでいる。
「がぁぁぁぁぁぁ」
吹き飛ばないように中で威力を浸透させた。
そのためか、血反吐を吐き散らしながら四つん這いで苦しんでいる。
「ぐぉぉお。おぇぇぇぇえあ。」
「かあ、きめぇ。」
1発でこれな。
本当今まで何してたの俺?これを使いこなす修行の方が大変だな。
これを機に、さまざまな技を融合したのを修めたりする必要もあるな。
「な、何者・・何者だ!きさまは!」
「俺は通りすがりのイケメンコロスキーだよっ!覚えとけ!」
顔面にサッカーボールキックを入れ、後ろまで吹き飛ばし返してやった。
た〜ま〜や〜!
それはそれは、よく飛んでいきましたとさ。




