第79話 リーダー到着
龍国の内戦の地にもなった王城へと入り、ミアがいる部屋へと突撃した。
「ミアっ!」
「!!だ、旦那様っ!」
こちらに凄い勢いで向かって抱きついてきた。
おうふ。む、胸の感触が直に。
『興奮するために来たんですか?』
辛辣な事を言わないでくれ。
不可抗力だ。
「お館様。そちらは?」
アマギさんの殺気が。
「おお。すまんな。
今回の指揮をとっているミレルミアだ。
我ギルドの一員でもあるぞ。」
「おや。これは初めまして。」
すいません。抱きしめながらご挨拶は・・。
器用に首だけ動かして、アマギを見てるし。
「お館様が苦しそうだ。離せ、山の部族。」
「ほう。その呼び名を聞くとは。
本当に古き龍族なんですね。」
「そうだ。だが、今はお館様の僕だ。
この身体を含め全てがお館様の物だ。」
聞こえはエロい。
しかし、主観的かつ客観的な意見を述べるなら狂信度が高くて怖いなり。
「そうか。
私は《《第1妃》》であり、《《第1騎士》》だ。そこは忘れる事がないようにな。」
「そんなに強調するほどの事ですか?しょうもないですよ。
本当の1番はお館様がお選びになるのですから。」
火花が散ってる。
見えないけど、見えない何かが2人の間を行き来している。
「てか現状は?」
「はい。正門のアリシアチームと城壁跡のアルマ様チームは依然として大きな動きはなく、前線を維持できております。
しかし、ルシファル率いる者たちが。」
「ルルの方はこっちで解決した。だが・・」
「だが・・・?」
「手がつけられなくてな。放置してきた。」
「はい?」
ミアが素っ頓狂な顔をしていた。
『間違ってはいませんが、間違ってますよ。』
分かってるわ。
けど、説明が難しいんだよ。
分かる事はこのまま放置してると、明日は力尽きてダメになるって事だ。
「であれば、私とミレルミアで向かいましょう。」
「アマギ・・。頼めるか?」
「はい。お前もそれでいいだろ。
戦場にお館様をお連れするよりは、貴様の方が何かがあっても後腐れもないからな。」
「ほう。悪くない話だな。
何があっても問題ないからな。」
怖いよママ。
でも確かに、ミアが行って止めてくれた方が何倍も被害を抑えられるな。
今頃はブラスが死にかけているだろうな。
南無阿弥陀仏。
両手で合掌ポーズをした。
『他人事だと偉く面白そうにしてますね。
性格悪いですよ。』
う、グサってくる事を言うよね。君。
「では私と黒龍で一度、席を外します。
くれぐれも護衛も無しに外を彷徨かない事です。
いいですか!?」
「は、はい。かしこまりました。」
ミアの凄い威圧に怯んでしまった。
俺は子供じゃないんだぞ。そんなすぐにフラフラと。あ、子供だわ。
『つい先ほど、やるなって事をやってきたばっかりですからね。』
えへへへ。
『照れないで下さい。キモいです。』
つい真顔に戻るような事をよく言いますね。
「では行って参ります。」
アマギの後ろをミアがついて行くように、風飛行魔法を使い飛んでいった。
俺も空を飛べるように回復しなくてはな。
『一朝一夕には無理です。
それに少し前まで、黒龍たちに気を回していたので、尚更無理です。』
そうだな。あれ?俺ただのポンコツやん。
誰もいなくなった部屋で、改めて自分を見つめ直していた。
夜になると、敵が退却して行ったのを機に防壁の補填と見張りの強化を行った。
一度、主要メンバーは王城へと集まっていた。
「主様っ!会いたかったです!寂しかったです!」
シアは勢いそのままで抱きついてきた。
「グヘェ。し、シア。
そんなに離れてはいないよ・・。」
「何を仰いますか。
片時もお側を離れたくないこの身としましては、その1分1秒が惜しいのです。」
俺のプライベートは無いの?
「そ、そうなのね。
最近、勢いよく抱きつくの流行ってるの?」
「こ、こらぁ!ご主人様!
イチャイチャしないで下さい!」
ハイネが頬を膨らましながら言ってきた。
「おい。お前には俺が絞め殺されそうな雰囲気が、イチャイチャ現場に見えるのか?」
「はぇ?そ、そうなんですか・・。」
何でこんなにもコロッと騙されるんだ。
そういうところは変わらないな。
「バカにしましたね!変わらないって!」
「心を読むのはプライバシーの侵害だぞ。」
「お館様。あまりそこのエルフとイチャつかないで私とイチャつきましょう。
だから、そこの筋肉女は消え失せなさい。」
クロエが1番噛み付いてはいけない人に噛み付いてしまった。
「誰だキサマは?
ああ。黒トカゲの首領だとか聞いたな。
すまないな。貫禄が無さ過ぎてな。
そんなんで主様を守れるとか冗談を言わないよな?」
ピキッと何かがひび割れた音がした。
人の姿から聞こえたのは俺でも初めてだぞ。
「お館様。そこの害虫を消してもよろしいですか?」
「奇遇だな。
主様。今回は龍のステーキ肉なんてどうですか?今なら、私がもれなく捌いてお出しできますよ。」
何料理をしようとしてるの?
クロエも売り買いしないでよ。今日で何回喧嘩が起きることやら。
そんな後ろを見ると、ぐったりしているルルとヘルガーがいた。
あれだけ暴れまくって、まだ起きてられるとか俺よか体力あるやん。
「んん!今日は皆ご苦労様だ。お陰で、今日は何とか凌げたな。
ただ、援軍が来たとはいえど、勝ったわけではない。
未だ、軍や主要メンバーはこちらの方が少なく圧倒的に不利だ。」
ミアが俺を見つめてきた。
何年一緒にいたと思っている。
そのアイコンタクトは報告の引き継ぎだな。
「そうだ。現状は不利だ。
だが、有益な情報をいくつか入手している。
まず、ロキが2人の悪魔から情報を入手した。
次に、シアとアルマ様チームが敵将を討ち取ったこと。
後ろでグッタリしている・・。
更に疲れまくっているブラスたちが、大暴れしてくれて敵戦力が削れた。
そして、魔王級の存在の視認だ。
しかも今回の指揮官が『残虐王』ときた。」
自分で言っていて、コノヒトダレカシリマセーン。
『『残虐王』。彼自身の力はそうでもないとされますが、頭脳や戦術、外道手法などで戦果を示す魔王です。』
この世界で1番面倒い相手が、脳筋派より思考派だ。しかも、相手は超絶頭がいいときた。
こっちは指揮官適性がないミアだが、頭脳適正のあるクロエがいる。
この加入は大きいが、果たしてそれだけでいいのだろうか。
『見えない答えに問答するよりは、目の前の方々に説明と今後の見解を聞くのがベストかと。』
「ってな訳で、こっからどう乗り切るかだ。」
「ダーリンの力はまだ回復はしないの?」
「グレース。そうなんだ。
というか、回復する前に使ってしまう。」
「あら。そういう状況を作るのが上手いのね。」
「あ、はい。」
「いいの。これからは私が側にいるから大丈夫よ。」
ウチの女子連は強くない?
俺ダメ男になりそうだ。
『現在進行形でダメ男ですが・・?』
何言ってんのお前?見たい風に言うのやめてもらってもいいですか?
「調子に乗るなよ。魔女風情が。」
シアは相変わらず狂気だ。
オブラートに包むつもりなど一切無し。
「へぇ。私は魔女呼ばわりは確かに嫌だけど、それを受け入れてくれる男に出会えたから、今はそんなに悪く聞こえないわよ。」
グレースとシアの間でも、見えないけど火花が散っている気がする。
「しゅ主人様。
とりあえずは、お休みされてはいかがですか?」
「いや、今のブラスには負けるよ。」
ルル、クロエ、ヘルガーの3人をカバーしながら戦い抜き、その3者を止めていた。
それは途轍もなく疲れますわな。
「ブラス、ヘルガー、ルルは休んでな。連戦だし。
クロエは悪いけど、ミアと打ち合わせだ。」
「「かしこまりました。」」
「分かったよ。」
「承知しました。」
とりあえず解散だ。・・・・。
おい。マナミはともかく、勇者の面々とスカーレット、スィーナ姫は会議室を去って行ったが、何で他は残ってんだよ。
「主様のお側が私のいるべき場所です。
どうぞ、私の事はお気になさらずに。」
無理じゃね。
人は自然との一体化は物理的になれませんよ。
ヘロヘロのブラス、ルル、ヘルガーも居残ってるし。
「早めに終わらせた方が良いか。」
「そうですね。」
「まずはクロエ。」
「はい。皆さん初めまして。
私は黒龍のまとめ役をしております。クロエと申します。以後お見知り置きを。」
綺麗なお辞儀後に、キッとアルマ様を睨んでいた。
過去の因縁か。
それでもクロエは抑えてはくれている。
「クロエ・・。」
「お館様。大丈夫です。
あなた様と共にと忠義を誓ったのです。やり方がありますからね。
何も、全てを消す事が正解ではありません。」
「分かってたならいいや。」
「はい。ありがとうございます。」
少しだけ元気が出たのかな。
さてと、ここは女性率が高いので席を外しますかな。
バレないように、そそくさに部屋を出た。
向かう先は酒場がいいかな。
あそこなら、何となく元気でてそうな雰囲気だしな。腹も減った事だし。
『お酒は飲めませんよ?』
つーか気になってたんだが、この世界では何歳から飲めるんだ?
『原則は18歳からです。
しかし、それは国のルールであって、少し外れればあまり関係は無いかと。』
へぇー。意外と設定してたんだな。
よし。飲んでいいって事だな。
『構いませんが、かなりお酒の耐性が下がってるかと。』
だろうな。
この身体ではまだ口にすらしてないからな。
チビっと飲んでダメなら諦めるか。
『まず、売ってくれないかと。』
じゃあ飯でも食いましょうか。
金はあるなり!
そうこうしている内に、ガヤガヤ騒ぎの酒場に到着した。
そして、西部風のドアを開け、中へと入っていった。




