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気ままに気のままに〜無力な俺を苦労が襲ってくる〜  作者: ennger
第7章 龍魔戦争 一難去ってまた一難
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第76話 魔族軍の侵攻

 龍国


「こうも軍備環境の悪さや兵の練度が悪いとはな。」


「仕方ないだろうに。龍脈頼りの奴らだ。」


「アリシア、ミレルミア。

 偵察から今し方戻ってきたが、開戦まで間もないぞ。」


 ブラスは斥候として、キャスト一向が村へ向かったのと同時に偵察へ赴いていた。


「そうか。ご苦労。それで後どれくらいだ?」


「すぐにでも攻め込むだろう。」


「侵攻速度が速いな。

 奴ら・・恐らくは、全員人質諸共殺してきてるな。」


「そうだね。僕もその可能性は示唆されると思うよ。」


「はわわわわ。そ、そんな事って。」


「あるんだよ。

 むしろ、犯し、奪い、嬲りながら来てもらった方が時間稼ぎにはもってこいだったが・・・。」


 ミレルミアは心にも無い事を平気で言っている。

 ここにいるメンバーは皆、キャストの事以外どうでもよかった。

 そのため、躊躇いなく見捨てることができる。


「主様がお戻りになるまで、どれくらい保たせそうだ?」


「ざっと5日あれば理想だが、下手したら1日で終わる。」


「僕が空中から攻撃を繰り出してもかい?」


 ルシファルが翼を広げてアピールしていた。


「それでもだ。

 奴らが遮蔽物を囮に、どのルートで本丸を攻めてくるのかも分からない状態だ。

 それに、こちらには備蓄もそうだが、使える人員が極端に少ない。」


「個々が強くても、戦争となれば隙はいくらでもある。頭を取られたら戦争はお終いだ。」


「ならば、我らは去るだけだな。」


「ぶ、ブラスさん・・。そんな・・。」


 冷徹だが、そうなる手筈になっている。

 無理をして仲間を失えば、キャストが悲しむためでもある。


「だからこそだ。

 どう編成するかが、この戦を長引かせる鍵となる。」


「とすると、ミレルミアさん大役じゃないですか!」


 ハイネは1人で今更驚いていた。


「さっきからそうと・・・。まぁいい。

 ただ、旦那様にここを任された以上は守り抜く。」


「私も守ることには異論は無いわ。」


 新しく仲間になった魔女のグレースだ。


「ほう。守ることはか。」


 鋭い目つきでアリシアは見ていた。


「おい、お前たち。今はやめておけ。」


「ブラスもよく頑張るよね。

 僕的には勝手に、争ってればいいのにって思うけどね。」


 ルシファルは欠伸をしながら呑気に答えていた。


「そろそろ準備に取り掛かるぞ。

 各々は指示された通りの配置に付け。

 総指揮は私が取る。」


 アリシアたちは部屋をゾロゾロと出ていき配置へと向かった。

 1人残ったミレルミアは。


「ふぅ。前までは一介の副騎士の私が、今では旦那様と共に国を守るために戦うか。

 出世したのかな?

 そんな事はどうでもいいか。

 全ては愛する人のために・・・。」


 胸に思いを秘め、戦場へと向かって行った。



「おい、勇者共。あまり出過ぎるなよ。

 ここの防衛が1番の要だ。いいな?」


 アリシアの守る正門は法国・龍国の勇者たちで固められていた。


「な、何で俺までここなんだよ!

 普通後衛だろうが!」


「男のクセに情けない。」


 メイが鋭い一撃を放った。


「う、うるせ!

 俺はお前たちみたいに身体能力は高くないんだ!」


「もう。いいじゃない。

 私だって、こんな事になるなんて思っても見なかったからさ。」


「何でお前たちは逃げないんだ?」


 マナミが率直な疑問をマイにぶつけていた。


「本当は逃げる予定よ。

 残る理由は、あの子が頑張ってるのもあるけどね。1番は、メイが残るって言ったことよ。」


「割と大胆な事をするんだな。」


 アリシアがメイを見ていた。


「む。キャストが私たちを守ってくれた。

 それにあの子は嫌いじゃない。」


「本当にそれだけか?」


 アリシアは急に殺気を感じさせた。


「やめろ。今はそんなことよりもだ。」


 大量の魔族軍が見えた。

 先頭から、さまざまな武器や鎧を装着している。

 大量に龍人の死体を十字架張りにして上に掲げながら進んでいる。


「悪趣味だわ。」


「お姉ちゃんの言う通り。」


「なるほどな。

 あの呪物と珍しく意見が一致した訳だな。」


「??どういうことだ?」


「簡単だ。

 相手は頭が相当切れる強者だってことだ。」


「!!おいおい!

 魔族なんて大体、殺すか食うか犯すしか脳の無い連中だって言ってたぜ!?」


「アホか。そんな訳ないだろうに。

 しかし、この状況は向こうの目論見通り、こちらの龍人の士気を一気に下げやがったぜ。」


 周りの兵士たちは怯えていた。

 次は自分がああなるのではと。


「おい!俺も効果的面だ!下がっていいか!?」


「なら、私が貴様を介錯してやろう。」


 アリシアが刀を出した。


「申し訳ありません。

 すぐに戦闘準備を整えます。」


「こいつは・・・。」


 バーナードの切り替えしの早さに、頭を抱えるマナミであった。


「コントやってないで、早く号令を出して。」


「皆の者!敵が目前まで来ている!

 だが、安心しろ!ここには勇者様がいる!」


「おおー!」「勇者さまー!」などと言った声が聞こえてきた。

 なんとか攻撃できるレベルまで、士気を上げられた。


「各龍人は魔法とブレスによる遠距離攻撃をしろ!残りは私たちの援護に回れ!」


 アリシアはアイコンタクトでマナミに号令係を任せた。


「皆!突撃ぃ!!」


 正門から開戦の合図がなされた。

 門から離れない程度に敵へ向かって行った。


「オラッ!」


 マナミの炎の拳で相手を殴った。

 殴られた箇所から炎が全身に広がり、燃え死んでいく魔物もいた。

 魔力量によってはそうなるケースもある。


 バーナードが司ず、援護系魔法に炎系広範囲魔法を展開していた。


「はっ!やるじゃねえか!」


 バーナードは無詠唱でそれをやって見せた。


「うるさい!僕を守れ!

 その分、援護なりなんなりしてやるから!」


「ったく。よっと!

 お前はそういうところがなければ・・なっと!」


 話しながら、向かってくる敵に攻撃やカウンターを仕掛けていた。


「キリがないな。」


 すぐ近くで、雷による放電攻撃が見えた。


「アイツらも派手にやってんな。

 こっちも負けてらんないぜ!」


 マナミは拳を再び握りしめ、敵陣へと攻撃を仕掛けた。



 アリシアは他の龍人たちを連れて戦っている。前線には自身が1人で出ている。


「(魔力自体は問題無いな。

 いざとなれば主様のお力の一端をお借りするか。)」


「アサギリ流 三の型 『流水静剣』」


 刀がしなるように、バラバラの敵の首を器用に切っている。

 音もなく、静かに首が落ちている。


「おおーー!凄いぞ!アリシア隊長に続け!」


 1人がその光景から鼓舞され、皆も戦う意志に火をつけたが。

 その直後、火をつけたが1人の首が刎ねられた。

 次の攻撃をアリシアが防いだ。


「ほう。なかなかの腕前だな。魔剣使いよ。」


「そんなオマエは普通の剣士か。

 つまらんな。」


 髑髏が付いている剣の柄に、黒く大きな刀身を握っている魔族がいた。

 その魔族はツノが2つ生えており、漆黒のベールが包まれている。


「デーモンか。」


「その通りだ。上位のアークデーモンだ。」


「フッ。変わらんな。貴様は虫の種類を細かく見るタイプなのか?」


「いい度胸だ。女。俺の奴隷にして泣かし、堕ちる姿をみて見たくなった。」


「ゲスだな。

 私を好きにめちゃくちゃにできるのはあのお方のみだ。それ以外に興味などない。」


「なるほど。

 なら、あのお方とやらの前で堕としてやろう。」


 有無を言わさず、アリシアが刀を振るっていた。


「なかなかの斬り込みだ。私でなければ・・!」


 肩に傷が入った。


「チッ!」


 ブンっと魔剣を振り、距離を離した。


「ちなみに、さっきは二撃入れたつもりだが、反応が悪いようだな。」


「面白い。

 魔装『デーモニック』魔剣解放『グラム』」


「ほう。展開したか。構わない。それで来い。」


 明らかに先ほどよりは姿形が変わっているアークデーモンに対して、アリシアは刀しか構えていない。


「死を決心したか!女!」


 途轍もない速度で距離を詰めてきた。


 魔剣『グラム』による、自身を軽くし、斬り込む際に重くするよう、重力操作を行なっていた。


「フン!」


 その重力による一撃を簡単に正面から防いだ。


「なっ!なにぃ!」


 流石にアークデーモンも驚いていた。


「普通ならこの一撃で死ぬが、私には愛の加護がある。」


「あ、愛・・だど・・。」


 何を言ってるんだコイツ。という顔をしていた。


「簡単っだ!」


 魔剣を弾き返した。

 その際に重力操作によるせいか、重い状態で後ろに剣を飛ばされてしまったため、バンザイ状態に。


「し、しまっ!」


「『生命断絶ライフエッジ』」


 刀でアークデーモンを真っ二つに斬った。


「ば、バカめ!

 聖者の攻撃以外は・・!どいうことだ!」


 真っ二つにされたアークデーモンの身体が再生せずに、徐々に崩れている。


「知らないか。無理もない。

 これが《《愛の力》》だ。」


 正確には気を込めた一撃だ。

 生命や存在するエネルギー自体を斬ったため、絶命に至っている。

 アークデーモンはそのまま消えてしまった。


「大した敵では無かったな。

 さて、待たせたな。次はお前たちの番だ。」


 刀を改めて構え直し、怯えた魔族の大群に向い、突っ込んでいった。



 魔族軍後方


「ご報告!

 アークデーモンのイビル様が討ち死に!」


「すごいね。向こうにも強い奴がいるんだ。

 勇者では難しいかな?って思ったけど。」


「カイザル様。それよりもですが、どうされますか?」


「うん。このまま正門は数による進行でいいんじゃないかな。

 他の進行経路は強者の名前を聞かないから、多分この二方向に将軍級の戦力を入れるといいんじゃないかな。」


 指揮しているのは、キャストと同じくらいの子供姿の悪魔上位種のヘルデーモンこと『カイザル』である。

 直接戦闘よりは搦手や作戦が得意とされている。大の女好き。


 側近の女性は近接力に最も長けた、アークデーモン内でも屈指の強さと言われている。名は『メイビス』。


「ジリ貧になりそうかな。何日かは。」


「確かに見た感じそうですね。

 現場の指揮官だけでもやれそうな感じですが。」


「けど、攻め手には欠ける。

 だから、時間がほしいなら時間を与えようじゃないか。

 こっちも《《準備》》があるからさ。」


 カイザルはメイビスの腰に腕を回し引き寄せ、そのままベッドへと向かって行った。

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