第72話 黒龍の里へ ブラック労働ナウ
「じゃあ、決めようか。またメンバー選抜するよ。
この国には俺たちの最高戦力を残しておきたい。その気持ちはわかってくれるか?
普段から俺の心配をしてくれて嬉しいが、これは耐久力と速さが勝負の鍵となる。」
「今回は我ら一同、ご理解しております。」
ミアの返事を聞いて、話を続けた。
「だからこそだ。速さで進みたいから。
あれ?ロキはどこへ?」
「ロキリアは国の中心で索敵と情報収集に防壁の設置などを、今現在も行なっております。」
おい。ここに集まった誰よりも、縁の下の功労者じゃないか。シアといい勝負だな。
しかし、働いている者に再び別の指令出すほど、俺はブラックな人間なのかもな。
「だが、ロキがどうしても必要だな。」
「であれば、そこに肉塊女をぶち込みましょう。」
名前が引っかかるが、適材適所とはこの事だ。
ロキの代わりはミアかシアだが、ミアは全体を任せたい。そうなるとシアか。
「分かった。頼めるか?シア。」
「頼むなど。勿体なきお言葉です。
一言命じて下されば、どのような任務も遂行致しましょう。
その任、私にお任せあれ。」
「よし。よろしく。
でだ。耐久チームが全支援のハイネと遊撃のルルに任せたい。」
「むぅ。また僕を置いてきぼりかい。
けど、分かるよ。
ここの奴らより僕が強いからね。僕が遊撃なら安心かな。」
「先ほどは何も役に立っていないがな。」
おい。シアよ。余計な事を・・。
ああまた、ほぼゼロ距離でメンチ切り合ってるし。
「ほっといて続きを決めようか。ブラスは斥候だな。」
「かしこまりました。」
「ミアは全体の指揮だな。
指揮官系統の奴が適任だがいないからな。
ミアなら引けを取らないでしょう。」
「かしこまりました。
ご期待に応えて見せましょう。」
しかし、ロキと俺だけか。
「ダーリン。私はどうする?」
「そうだな。まずは、マナポーションを誰かから分けてもらってくれ。
後方攻撃担当として、ここに残ってほしい。」
「分かったわ。初の協力クエストね。
ちょっと緊張するわ。」
「大丈夫だ。グレースならできるよ。
信じてるよ。
周りもサポートしてくれるからさ。」
「不本意だが、旦那様が言うからにはそうさせてもらう。」
「そう。素直にありがとうと言っておくわ。」
ほんで、勇者たちは対魔族型特化だからな。当然残ってもらう。
「ヘルガーは俺と来てくれ。
俺、今弱いから頼むよ。」
「かしこまりました!
必ずやお守りして見せましょう。」
「チッ。」
誰かの舌打ちが聞こえたがスルーだ。
「ロキには追って通達しておいてくれ。
しばらく休んだら、『フライングボード』で出発するよ。」
そして解散し、それぞれで打ち合わせを行なっていた。
俺は疲れた。
とりあえず、一室だけ借りてベッドで横になっていた。
メビウスと指輪はハイネに預けてある。
行く前にもらい予定だ。
つまり、現在1人である。
少しだけ目を瞑り、睡眠を取った。
大体時間になったと思い目を開けた。
これ社会人の必須スキルよ。
すぐに部屋を出て、出発地点へと向かった。
「おはようございます。キャスト様。」
「おはようロキ。
すまないが、今回も頼りにさせてもらうよ。」
「そんな!勿体ないお言葉です。
私を扱えるのはあなた様だけです。なんなりと仰って下さい。」
シアと言い、ミアと言い、ヘルガーと言い、なぜ同じようなセリフを言うのに、仲があんなに悪いのだろうか。
独占欲が強いからか?
「ご気分はいかがですか?」
「元気とはいかないが、多少なら戦えるようになったかな。」
コンコン。と扉から音が鳴った。
「失礼致し・・・いたのか。」
「いたよ。いつからか知りたい?」
「どうでもいい。時間も差し迫っている。
おはようございます。キャスト様。
出立が近づいておりますが、ご体調はよろしいでしょうか?」
「おはよう。ヘルガー。
大丈夫では無いけど、少しは戦えるようになったよ。
早いうちに出立しよう。
敵さんは待ってはくれないからね。」
「「かしこまりました。」」
そして、城門近くの『フライングボード』に乗り込み、ロキが操作をして向かった。
『なんだが、この国だけで何回か意識が途切れますね。』
偶然だ。気にするな。
『マスターはお身体と共に健康ですが、気だけが回復しておりませんね。
戦いになれば、最悪魔力を無理矢理ですが、気に変換致します。』
そんな事できんの?やるじゃん。
『ただ、ハイネ様の魔力は濃いので、なんやかんやで内臓が圧死します。』
なんやかんや!?何それ!
なんでそれで死ななければいけないの!
いやーー!
「??キャスト様?」
「んん。気にするな。俺は気にしない。」
「はぁ。かしこまりました。
ところで、その石化や封印された村へと向かっているとか。」
「そうそう。どうしたの?」
ヘルガーが考え込みながら、話してくれた。
「いえ、石化を解く魔法というのはあるのですが。
恐らく、龍が関係しているので普通の魔法ではどうにもならないかと。」
ああ。なるほどな。
行ってどうすんだよって事だよな。
エリクサーも予備で1本ずつしか無いんだっけ?俺は自己再生あるから要らんけどね。
「確かに、ヘルガーの言う通りかと。私も石化を解く魔法はありませんので、一体どのように・・。」
「まぁ、それは着いてからのお楽しみで。」
「「おお〜!何か手があるのですね!
って被せるな!」」
仲がいいのか悪いのか分からんわ!
『実際、アテはあるんですか?』
あるよ。さっきの魔力をもらうの。
『死ぬ可能性がありますが・・?』
いや。大丈夫だよ。
魔力を気に変換は俺も手伝うよ。
『承知しました。
では、これ以上は言うことはありません。』
後は着くのを待つだけか。少し横になるか。
「キャスト様。キャスト様。」
「ん?あ、寝てた。」
「申し訳ありません。起こしてしまい。
到着致しました。」
あのー。なんで裸なの?2人とも。
「あ、これは!申し訳ありません。
お身体を温めようとして・・。」
ッポ。じゃないよ!
普通毛布だろ!肉布団って俺は悪代官か!
「キャスト様。そろそろご準備を。」
「あ、はい。」
ロキは裸だが、冷静に報告してくれた。
見つめていたら、ッポってなった。
なんやねんこれ。
「さてと、服は着たね?外に行くよ。」
乗り物から出ると、一つの小さな集落が早速見えた。
「少しお待ちを。結界が張られています。」
「マジか。なんで報告に無かったんだよ。」
報連相は大事!これ絶対!
「後で、龍人どもを問い詰める必要があるな。」
ヘルガーさんもおこだよ。
ロキが結界解除を試みてくれている。
「問題ありません。これなら解けます。」
ロキが手をかざすと、包んでいた結界が解けた。
「流石。お見事だね。」
「ありがとうございます。
ご褒美にほっぺにキスしてくれるとやる気ゲージが10上がります。」
何格ゲーの必殺技ゲージみたいな。
「ちなみに参考までに、どれぐらいのゲージの長さなの?」
「はい。MAXで10までです。」
「全開やん!やる気全開やね!」
いいか。
ほっぺにキスと思ったら、不意をつかれて唇を奪われた。
「フフ。」
美人悪魔さんや。興奮します。
はっ!殺気が!
「羨ましいです!私もお願いします!」
素直か!早く進みたいんだが!?
なんやかんやで、ヘルガーにもしてあげた。
やる気ゲージ全開になったっぽい。
「にしても、自然豊かで平和そうだが。」
「そうですね。
さっきから魔物1匹いませんね。」
「確かに・・。何かある?」
ヘルガーが遠目で見ている。
近づいてみると集落の中心地だ。
確かに、話通りに無残な姿の龍人たちがいる。
しかも石化プラス酷い状態のオンパレードだな。
元に戻しても、手足の修繕とかも必要だな。
「もう少しってか、あそこに、いかにも巨大な岩があるんだが。」
「祭壇?ですかね。
魔族や部族系になると、よく儀式まがいな事をするという話は聞いていますが。」
「何か不自然な岩ですね。
あれだけ途轍もなく厳重です。」
そしてなぜだろう。
弱々しいが、生命力を感じ取れる。
あれも石化とか言わんよね。
『あれは封印ですかね。
第10禁忌式指定封印です。』
おい。急にすごい強そうな名前だすな。
『マスター。あの封印法は厄災級のものに施される術式です。』
おーい。聞きたくなーーい。
よし。触らぬ神に祟りなしだな。
見なかった事にしよか。
『そこまでする必要はありませんが、優先順位的には得体の知れないものよりも、目の前の龍たちの解放ですね。』
「そうだな。檻の中から丁寧に運んで並べようか。」
ゆっくりと少しずつ運び出し、丁寧に手や足が触れ合うように並べた。
「じゃあ、これから解いていくけど、気をつけてほしいのは、ポーションで回復できる人たちはポーションで。
ヤバめな人は俺がやるから。」
「「かしこまりました。」」
全員は無理だ。
解除するだけで、またスッカラかんだ。
『そうですね。
ですが、魔力を使わなくて良かったです。』
「じゃあ、始めるか。」
トレー◯オン!
『(また、バカな事を)』
この呪いは気でないと払えないな。
厄祓いのようにと。魔法だと反発するように組まれてるのか?
魔法をよく知らんが、受け入れないようにされているようだ。
パキパキピキピキと少しずつ肌が見えており、少しずつ元に戻りつつある。
「ロキ!ヘルガー!頼んだよ!」
ささっと2人で石化解除された人を診断し、必要ならポーションを、ヤバめなら俺に回すように応急処置を施していた。
まだ目は覚めんか。当たり前か。
何百年間寝ていたんだって話だからな。
それから、数時間後
ふぅ〜。何とか無事治療等終えたな。
後はデカ岩だけか。
はっきりとわかんだね。開けたくねぇ。
『こちらは確実に魔力変換を行わねばいけません。
ただし、不純物を取り込むのでリスクはありますが、よろしいでしょうか?』
よろしいも何も、戦場では俺は役に立て無いからな。
ここら辺で無茶しとかないとな。
そのまま大きな岩へ向かって行った。




