第71話 苦労が絶えない
国内のテロを解決した後には、このボロボロの国を守るため、魔族との戦争が始まります。
ふざけてます。とてもふざけてます。
毎度毎度の事ながら、災いがこちらにウェルカムしてくるような感じが。
決して俺がウェルカムしている訳ではない。
「聞きたくないが、この後は?」
「はい。他勢力の鎮圧と『光明の旅立ち』というテロリストを捕らえます。」
「それは難しいわ。
己の目的のための集団だから、既に転移石による撤退をしていると思うの。」
グレースは元組織だからな。
「悪いが、グレースはやらんぞ。」
「大丈夫ですよ。
ですが、組織の実情や内情、人物等はお聞きしたいです。」
「それは俺も聞きたい。いいか?グレース?」
「構わないわ。
ダーリンはお願いしなくても良いのよ。」
美人さんにダーリン呼ばわりされると、それだけで白ごはん3杯いけますな。
「貴様。余計な事をしたら、私の奥義を手向にしてやるからな。」
シアさんがご機嫌斜めや。
「ええ。結構よ。
今は何もできないけど、これから先もするつもりもないけどね。
ダーリンと共に生きていくと決めたから。」
「き、貴様!妻である私を通さずして、その呼び名は許さんぞ!」
いや、いつからやねん。
「あら、じゃあ、心の狭い奥さんなのね。
時期に私に心が傾きそうだわ。」
「コ、コロスゥゥゥ!」
おい!人間やめてんぞ!
さっきの戦いより人ではないぞ!
「いい加減にしなさい!
今はそれどころではないでしょうが!」
マイが声を珍しく荒げていた。
「戦争がまた始まるのよ。
しかも、誰かさんたちが壁を沢山壊してるから、入場口が沢山あるのだけれど。」
「な、ど、どういう事だ?それ?」
「マ、マナミ。落ち着きな、なさい、な。」
姫さんもな。
「おい!ガキ!まさか本当に壁が・・・。」
「何で俺!?
いや、俺のような違うような気もするが・・。うーん。階段とかも違うしな。」
「「「か、階段!」」」
あ、口が滑っちった。
「やってる。」
おいコラ、メイ。
俺がやったみたいな目で見るな。
「主様。そのような事は些細なことではありませんか。お気になさらずとも良いかと。」
ありがとう。気を遣ってくれるが、意外と些細ではないのそれ。
「もう。こんな開けた場所では何もわからないわよ。
軍の再編とこちら側の陣営を再把握しないと。」
「そ、そうでした。急ぎましょう!
では、また後ほどお会いしましょう。」
「あ、姫様!おい!いくぞ。もやし!」
「なっ誰が!っ!!
すいません。もやし行きます!」
鬼のような顔をしたマナミに従順だなアイツ。
「アイツ背中の傷は大丈夫なのかよ。」
「スィーナ様が治して下さってたわ。」
「そうか。そんなマイたちも大丈夫か?」
「全然。その女にこっぴどくやられるし、第1王子には飛ばされるしで、勇者としてのメンツの方が丸潰れよ。」
その割には随分と饒舌な。まぁいいけど。
「こちらも合流しようか。ってヘルガー大丈夫なの。シア?」
「ああ。あれは気にしなくていいです。
というか死んでくれたら良いですね。」
仲間にしれっと、そこまで言える君は凄いよ。何したんだよ、ここに来るまでに。
「そんな事言わないの。仲間だし家族だろ。」
「も、申し訳ありません!私とした事がつい。」
まぁ、分かってるけどね。
いくら個人的な干渉が強くても、こういう戦場では彼女たちの判断や連携力は凄い事を。
俺がとやかく言える立場ではない。
だから、ヘルガー1人でも大丈夫だと判断されたのだろうな。
ヘルガー自身も個人的にはともかく、理解はしたのだろうな。
「いいよ。土下座しなくても。顔を上げて。」
ってうおっ!ガチ泣きしてんじゃねえか!
土下座しながらガチ泣きって。俺怖い?
「も、申し訳ありません。
主様にき、きらわれたのかと・・」
「な訳無いよ。
お前たちの事をしっかりと理解しているからこその確認をしたかっただけだよ。
気にしなくていいよ。」
「うううう。何と慈悲深い!
ありがとうございます。」
俺の手を握って頬でスリスリすな!
「バカしてないで早く行きましょう。ダーリン。」
俺の手をとって、そのまま階段へと向かっていった。
そしてもう片方の手が握られた。ってか綱引きみたいになりかけてるよ。
「おい。その汚い手を退けろ。私がお連れする。」
「あら、先ほどの戦いでお疲れでしょう?気にしなくていいのよ。
それに、呪われてるかもしれないわ。」
「ほう。そんなに死にたいのか。」
新たな戦争しないでもらっても?
「だ、旦那様っ!」
「ごはっ!」
急なダイビングハグをミアにされた。
というより最早、ラグビーのタックルぐらいある。
「ぶ、無事で何よりです!」
今死にかけてます。
振り解けない腕力に締め付けられています。
「み、ミア。元気でよかっ、たよ。」
「はっ!申し訳ありません!
嬉しくてつい。テヘ。」
かわいいので許す事にしよう。
ヘブっ!だ、誰だ!頭に石を投げたやつは!ゆ、許さんぞー!
そこにはハイネが立っていた。
そして、その背後には黒い翼の褐色お姉さん事、ルルがいた。
「キャスト。また、新しいメスを引っ掛けてたね。悪い子だ。僕がお仕置きしなくちゃね。」
「優しくしてね。」
ニコニコとしてるがドス黒いオーラが背中越しに感じ取れる。
俺がニュー◯イプなら速攻で反応するな。
「きゃ、キャスト様〜〜!」
ぐおっ!またしてもダイブ抱きつき。
「このヘルガー!とてもとてもとてもとても心配しておりました!
ご無事で何よりです!うう!」
「へ、ヘルガーも無事なのね。よかったよ。」
「はい!旦那様を守るためにこのヘルガー。
地獄の果てでも付いて行く所存です!」
あ、うん。
君、特に腕力強いからこれ以上力を込めないで。骨折するから。
「おい!お前たち!
主人様を殺したいのか、助けたかったのかどっちだ!」
いいぞ。ブラスさん。言っておやりなさい。
「ふう。助かったよ。」
「いえ。お気になさらず。
それよりも、これからの事です。」
「ああ。そうだな。偵察結果は?」
「ハッ!ただいま正門に向けて魔族軍が進行しております。
ただ、もう2箇所ほど壁が崩れており、そこから分散して進軍する恐れが危惧されます。」
「へ?ヒューヒューヒュ〜♪」
おい口笛できてないぞ、駄女。
「なっ!誰が駄女ですかっ!べぇ〜だっ!」
典型的か。
まぁ、魔力はありそうだから指輪の補填を後でしてもらってと。
「とりあえず、このまま戦争に巻き込まれる事は確定だな。」
「ですが、数が数です。勝てないかと。」
「国も麻痺してるときたな。」
「しかし、主様。スィーナ様の母親を呼び戻せ。とか言うお話をお聞きしましたが?」
だが、それだけで救われるとは限らないが、戦力的にはめっちゃ強いのだろうな。
「強いぞ。妾は実際にな。」
「だから、何で心をってうぉう!」
いつの間にか俺の背後におり、後ろから抱きしめていた。
大きなバストが頭に乗っかっております。
「久しく人里まで降りてきたが、こんな事になっておるとわな。カカカ。
あの黒龍も厄介な事をしよったのう。」
スィーナと同じく、綺麗な金髪ポニーテールで身体は娘よりセクシーだ。
背も高く、尻尾もある。翼は隠してるのか見えなかった。
なんと言っても、この胸の大きさは我がギルド内でもそうそうはいない強者よ。
すると、刀の斬撃が飛んできた。
俺には当たらないようになっているが怖すぎる。
「カカカ。そう慌てるな。
別にとって食ったりはせぬよ。
かわいいからな。つい。」
なんですとー!
食べる意味を教えてくださーい!
「コラっ!」
ハイネに怒られた。コイツは俺の心が・・。
「キャスト。ダメだよ。僕がいるんだ。
僕で満足してよね。」
「うん。」
そういって、胸を揉んでいた。
あ、手が勝手に。
ドゴッと頭を殴られた。めちゃくちゃ痛い。
「ハイネよ。なぜ石で殴った。痛いじゃないか。」
「この場で、それで済んでるのは不思議に思わないですか?ご主人様?」
あ、あれ?般若が背中から見える。幻覚か!?
「んん!ところで、母親のお主がなぜここに?」
ブラスが切り替えてくれた。ありがとう。
「簡単じゃよ。妾を呼んでいる気がしたのでな。同じ星龍じゃぞ。
それぐらいは未来視せずとも分かるわ。」
「なるほどな。でだ。どうすればいいのだ?元女王陛下よ。」
ミアが聞き返した。
「まず、妾1人でも無理じゃ。そなたたち含めても。魔族が、かなり本気で攻めて生きているからの。」
「なら。」
「そうじゃの。キャストと言ったかの。
最後にあやつの話した村へ行くがいい。
そこで色々と終えたら、こちらに戻って来い。」
なんと曖昧で無茶な指令だ。
「無茶ではない。曖昧ではあるがの。
そこに行けば勝てるアテがあるのじゃ。
妾はそれまで時間稼ぎを筆頭に動いておくからの。」
「はいはい。行けば分かるやつね。
でも流石に、仲間全員って訳には行かないぞ。ここにも戦力は必要だ。
時間稼ぎならもっとな。」
「旦那様。援軍をお呼びしましょうか?」
「いや、呼ばなくていいんじゃない?
エラルドたちは余計な事だと思って言ってこないけど、ウチのギルドも急激に大きくなったからね。
内的要因は時間が解決するだろうけど、外的要因は簡単に解決する事はできないでしょ。」
「申し訳ありません。仰る通りです。」
いや、別に怒ってないよ。
決して仲間外れにされてとか思ってないよ。
ちょっと寂しいだけよ。
「だからこそ、今現状の戦力だけで乗り切る事を前提に考えよう。」
「「「「「かしこまりました。」」」」」
うちのメンツは直ぐ跪くから困る。
俺ただのギルドマスターです。
王様とかではありません。元貴族ですがね。
「ほう。配置や戦術はお主らに任せようかの。」
「おいおい。国内の関係者じゃないぞ。大丈夫か?」
「ええ。お母様の言う通り大丈夫かと。
我が国の有力な兵士は殆どがおらず、下手に裏切りの可能性がある人よりは、あなた方のように、命を賭けていただいた方の方が信頼できます。」
「まぁ、姫様と同じく、キャ、キャストなら信頼できるからよ。」
マナミよ。なぜ噛んだ。
そして、俺の後ろからくる殺気はなんだ。
そして、いつの間に戻ってきてたの。
「お前んとこ、血の気が多いな。
流石に、そのハーレムはやだな。」
「いや。あげるつもりも無いので。
ご自身で頑張って下さい。」
「こ、こんのっ!クソガキ!」
「まぁまぁまぁまぁ。
バーナード様には私が居りますのでご安心下さいな♪」
やはり、ヤンデレの素質があったか。
冷汗出まくりの陰キャ君だ。
ハハハハ。良い様だ!
「もう!喜んではいけませんよ!」
ハイネお母さんに注意された。
「だ、誰が!お母さんですか!そんなに歳取ってません〜。」
あっかんべーしてるし。いい歳こいて。
龍国編はいよいよ、戦争編に繋がります。この章で終わりにできたらいいなぁ。と思います。
ここまで読んで下さった方、ブクマ・評価・いいねしてくれた方、ありがとうございます。
次回も、何卒よろしくお願い致します。




