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気ままに気のままに〜無力な俺を苦労が襲ってくる〜  作者: ennger
第6章 龍国戦争 苦労人の末路

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第67話 決断の時 

 止めを指すことなど、俺にはできない。

 日本に生まれたからとか、前世がとか、命が可哀想とかではない。

 前にも言ったが、ただの偽善だ。

 俺は生きるために、既に何度も殺してきている。


 ただ、人を殺めること。それだけは躊躇っていた。

 人と同じく話す者たち、種族が違えど、言語が通じている人の命を奪う覚悟は俺には無かった。

 しかし今、目の前でそれをしなくてはいけない状態に追い込まれている。


 自分諸共全てを道連れに死ぬか、1人を殺し、他を救うかの2択しか用意されていない。

 この世界は残酷だ。

 特に何度もそう思っている。忘れる度に思い出させてくるだろう。


 どうしてこうなったのか。



「少年よ!ここには死を覚悟したはずだ!」


「覚悟はしてるが、別に殺すという事を俺がしたくないだけだ。そのために力を手にした。」


「覚悟はしてるか。なるほどな。

 ならば少年よ。本物の覚悟と信念を教えよう。

 君は強くなった。

 だが、世の中は力だけではダメだ。

 人脈や頭脳は勿論だが、何より大事なのは己のために命を奪う覚悟だ。」


 何言ってんだ?

 だが、言いたいことは分かる。俺だってバカじゃない。

 人のために殺すのでは無く、自分のために殺せる覚悟と殺せる力がないと何も守れないってこと。


 人のためにだと、人のせいで殺人をしたみたいで、それだと何も守れないし、自分のためにすらならない。

 そんなのはただのイカれ野郎だ。


 自分のためって言い方は変だが、意味は理にかなっている。

 簡単に言うと、自分が守りたいものや自分の命を脅かす脅威を排除するという意味だ。


 消さなくては止まらない災害はある。人災もだ。


「だが、まだ迷ってる少年に今から選択肢をやろう。」


「何言ってるの・・?ってまさか。」


「正解だ。」


 ドラゴニフは錠剤を3粒目を飲んでいた。

 直ぐに異変が起きた。奴の身体が変形した。


 その姿は龍だが、どこか歪だ。

 まるで何かを吸収するためだけの穴のような形、人としての形状は最早無くなっていた。


 至る所に穴がある。嫌な予感がするぞ。


『マズイです。マスター。

 あのクスリの元原料はエネルギー活薬剤が含まれています。

 足りない魔力をクスリで吸収することで補うとして、有名な麻薬の一種です。』


 おい何でそれが暴走すんだ。

 話だけだと暴走してあの形になる理由が皆目見当がつかない。


『恐らく、錠剤の中にはまだ解明していない材料があると思われます。

 推測ですが、魔力増加に耐えられなくなり形を変えたのかと。

 やはり、錠剤とはいえど、龍人ですら限度がありました。』


 だからって。いや。もういい。

 他に解明できない事に、とやかく触れてもしょうがない。


 俺はいやな予感がする。

 あれはただの暴走生物なんかじゃないことを。


「!動いた?」


 うぉーー!なんだ?

 周りの瓦礫とか何でも吸収し始めたぞ!

 美人お姉さんの魔力や勇者たちの魔力も吸われている。あのモードレッドもだ。


 俺だけ何も吸われてないってか、本体が吸われそうだ。

 そうか。俺だけ魔力ないから、本体ごと食ってエネルギーにする寸法かよ。


『正解です。あれは全てを吸い付くし、ここら一体が無くなるまで止まりません。

 しかも最悪な事に、あのクスリは強化剤の一種もあります。

 殺そうにも相当な耐久性があるので生半可な攻撃では効かないかと。』


 嫌な想像したぞ。

 魔力を吸われてる奴が前には出られない。

 かと言って物理であれを押しかえすのは不可能だ。

 龍人の皮膚に、強化された外皮や鱗を通すのは至難の業だ。


『手段はありますよ。』


 聞きたくなかった。

 自分がたまに頭が回る事を恨む。


『簡単です。

 マスターの浸透頸の必殺技を心臓部に目掛けて放てばいいだけです。

 いくら硬くても、内部はそう硬くはならない。

 クスリの効果はあくまで外側による物です。


 変形や中身の細胞を変化させてはいるでしょうが、内臓を強くする漢方のような、優しいクスリなぞは使われていないでしょう。』


 だから内部破壊で殺せるよってか。

 簡単にできるが、簡単に言ってくれるな。


『しかし、周りを見れば決断なんてすぐにできますが。』


 周りを見渡すと、全員が苦しそうにその場から動けずにいた。

 美人お姉さんの魔法もいつのまにか展開されていない。

 お姫様らしき人が1番やばい。

 もう青い顔寸前だ。


「ったく!だから出るなって言ってんだよ!」


 いつのまにか、陰キャ、バーナードくんが姫様の隣にいた。


「おい・・姫様を死なせるな!頼む・・ぞ」


「いつもの威勢はどこいったんだよ!

 みっともないぞマナミ!

 クソ。折角、僕が凄いところをって思ったのに・・。調子狂うな。」


 バーナードは姫様の手を握り、何かをし始めた。

 その時、姫様の顔色が少しずつ良くなった。


 魔力譲渡か。

 並のレベルの術士には使えない技だぞ。


「あ・・あ、アナタ様は・・。フフ。ありがとう・・ござ・・・いま・す。」


「ばっか。ちげぇよ。

 死なれたら、俺のいる所が無くなるだろが。」


 おい。男のツンデレは特に見るに耐えないんだが。

 しかし、アイツは腐っても勇者か。魔力量が尋常じゃないな。

 マイはメイに守られているが、どうもお互い1人守るのが限界か。


「おい!何を迷ってるのか知らんが!

 このままだと全員死ぬぞ!俺は死にたくない!

 この中で何言ってんだって思うが、これから人生変わるってとこで、死んでたまるかよっ!


 けどな、俺はバカだけど、バカだからか。分かってた。

 俺自身が誰よりも臆病で卑怯な奴だから、お前みたいな真っ直ぐな奴が嫌いだ。」


「助けてもらいたいのにそれかよ。」


「ああ。悪いか!?

 それでも俺よりも、目の前の奴が何かを救う力があるってんだ!

 俺自身が生きるためにもそれに縋ってやる!

 例え、嫌いな人物であったとしてもな!

 俺にできることなんて、これ以外何もない!


 けど、お前は違うだろ!

 ハーレム築き上げるムカつくクソガキだが、確かな力を持っていやがる!

 勇者の奴を倒すぐらいのな!」


 長い演説だな。

 けど、ムカつく野郎のセリフは妙に心に刺さる。

 何かできるのに、何もしないってのは惨めだ。

 答えなぞとうに解っていた。

 しかし、理解したくなかった。

 現状もっといい手段はあるんじゃとか。


「何考えてんのか知らねぇが!

 漫画、アニメの世界なんかじゃねぇよ!

 お前に言っても、そんなジャンル知らねってなるがよ!


 ここは理想や妄想の力で戦える世界じゃないんだ!異世界人の俺がそれはよく知ったんだ!

 だから、今は見栄を張るんじゃなく、お前みたいな奴に、みっともないが頼る事にしてんだ!」


 こちとら最初から知ってんだ。

 アイツに言われずとも分かってた。

 時々忘れる。というか、忘れたくなる。

 この力ならって考えるが、現実、皆を皆救えれば、どれだけ素晴らしいことか。


 現実は生きるか死ぬかだ。

 前世と何も変わらない。

 今目の前の脅威を取り除き、守れる者を守るのか。

 それとも、周りを犠牲にして逃げるのかだ。


『苦渋の決断ではありませんよ。

 だって、マスターは常に守られていますから。

 ならば、今度は守る番ではありませんか。』


 それ言われたら、迷う価値無くなるわな。

 確かに、最近というか前からそうだったわ。


 ミアに守ってもらってから、シアで。

 徐々に色んな人と繋がり、そして、守ってもらってきたな。


 その実は俺が戦い、俺個人で守ってきた戦いって何回あったのかな?てか、そんなことあったのか?

 他人ならあるかもな。家族や仲間は?


 そう思うと、決断なんて簡単だった。


「行くか。」


『出力は最大で放ってください。

 後の回復等は私が担当致しますので、お気になさらずとも。』


 おう。サンクス。頑張ってみるよ。


『では、いってらっしゃいませ。』


 俺は全身を吸われないように、ゆっくりとその物体に近づいた。


 驚くほど、攻撃らしい攻撃をしてくる事なく辿り着いた。


 そして、その物体の心臓部らしき赤いコアに手を添えて放った。


「『浸透頸奥義ー流気頸ー』!」


 俺は強大な気量を物体に放った。


 すると、物体の動きが止まり、身体の穴の至るところから、血が大量に噴き出していた。

 洪水のように周りに染まり、そして溜まりつつある。


『対象の活動停止を確認しました。

 お疲れ様です。皆様を救う事が無事できました。』


「・・・・・・・。」


 俺は倒れている物体が少しずつ元のドラゴニフの姿に変わっていくのを見つめていた。


「ぞ・・ぞうが。俺・・は死ぬのか。

 ほう。で・・きたのか。」


 ドラゴニフが目を覚まして言葉を発していたが、最早、虫の息だ。

 ほっといても内臓は既に機能停止の上、血が足りずに絶命するだろう。


「この・・クスリを飲んだ時点で・・グフっ!

 こうなる事は予想できてたわ。」


「お兄様!」


 姫さんがバーナードに肩を貸してもらいながら、その場に連れて来てくれていた。


「そんな!死んではダメです!お兄様!

 まだ、あなたにはやってもらいたい事があります!」


「フフハハハハ!ガハッ!

 この状態の兄にどうしろと言うのだ。」


 血反吐吐き散らしながら、妹である姫様を見つめていた。


「お兄様・・。例え、この状態であったとしても私の家族です。数少ない同じ種の同士です。」


「相変わらず、甘ちゃんだな。

 だから、俺や奴らに足元を救われるのだぞ。」


「・・・はい。すいません。」


「だがな。それでいい。

 俺はダメだった。

 お前は優しいからこそ、ここまでの強者や勇者たちを引き寄せられた。

 俺にはない力だ。羨ましい限りだ。」


「なら!」


 手で止せとジェスチャーを送っていた。


「これ以上俺の死の価値を下げるな。

 王だぞお・・れ・・は。そこ・・の男の勇者よ。スィーナをた・の・・。」


 そのまま彼は目を閉じた。


 気力が感じられないので、そこには生命はなく、初めて、俺がその生命を断ち切った。


「お兄様・・・。私はそれでも!王として!

 お兄様が教えてくれた王として!立ち上がります!

 だから、どうか安らかに・・。」


 強いな姫さんは。

 涙を流しながらも前を向いている。

 俺は後々くる、嫌で苦い後悔をしてるところだ。何せ初の殺しだ。気力もすっから!


 ドゴッと天井に大きな穴が空いた。


「『ほう。強い反応があったからのお。覗いてみたら、既に終えていたな。

 そして、久しいな小僧よ。』」


 最悪だ。また逆境だよ。

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