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気ままに気のままに〜無力な俺を苦労が襲ってくる〜  作者: ennger
第6章 龍国戦争 苦労人の末路
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第63話 お城攻め〜1 それぞれの戦場

 スカーレットとケリをつけた後、ハイネと合流してお城に向かっている途中だった。


「てか、大分壊したな。俺ら。」


「その話は私的にはしたくありません。」


「でも、攻略したじゃん。お陰で速攻でケリをつけられた。

 アイコンタクトって役に立つな。

 アイツが俺の心を読む範囲からズレていたのもあってか、バレずに済んだが。

 アレは同じ相手には二度は使えない手だな。」


「1発で仕留めたので何よりです。」


 あんなのがゴロゴロといる戦争は気が気ではない。


「過ぎた事より、今のっ!」


 とうとう、お城から爆発がした。


「始まったか。間に合わなかったな〜。」


「なっ!何を呑気なっ!」


「あのな。ここまで足止められるし、変なジジイには殴り合い要求されるし、兵士には追われるしで、普通に、間に合うわけないだろに。」


 今までの一連の流れから、普通に無理だと察する事ぐらいはできるが・・・。

 まぁいい。


「とりあえず、急ぐか。」


「か、かしこまりました!」


 ハイネは低く飛びながら着いてきてくれている。お互い孤立を避けての行動であるため、どちらかが早くてもダメだ。

 しかしそのせいか、なかなかスピードは出ない。



 城内の様子


「姫様を奥にしろっ!」


 マナミの声と共に、スィーナ姫とお付きの騎士は奥の部屋まで下がる。


「バーナードも下がれ!

 どちらかがいないとまずい。」


「けど、分断は悪手じゃない?」


 つかさず、マナミに突っ込んだマイだ。


「分かってる。けど、ここを固めて後ろを取られては最悪だ。

 それに勇者に強力な助っ人も呼んだんだ。

 まだマシな方だよ。」


「そう。」


「おい!俺は下がればいいんだなっ!」


「いいから行け。後は任せるからよ。」


「!・・・。チッ。分かったよ。」


 バーナードはそのまま振り返る事なく、奥の部屋まで走り去っていった。


「大変なコンビね。」


「全くだ。けど、アイツは馬鹿ではない。肝心な時に臆病な性格をしているだけだ。

 臆病な奴ほど生き抜く策を思いつきやすい。」


「結果、裏切ったとしても。」


 メイが死んだ目のような表情をしながら発言をしていた。


「もう。忘れなさいな。」


 マイがメイを抱きしめて頭を撫でていた。


「素晴らしい姉妹愛の所すまんが、来たぞ。」


 奥から1人の龍人が現れた。


「やっぱお前かよ。それとお連れ様方は誰ですかね?紹介していただけますか?」


 マナミが1人の龍人に問いかけていた。


「ほう。やはり、良い女だなお前。俺の女になるのが1番だな。

 この1番の強さを誇る俺ならばな。」


 自己主張をしている龍人の正体は第1王子のドラゴニフ・ラド・ニーベルグンである。

 実力は龍人随一の力を秘めており、魔力と硬質力はNO.1とされている。


「第1王子様ともあろうお方が、賊と手を組んで国家転覆とはね。母ちゃん泣くぞ。」


「ふっ。母上なぞ王位を放棄し、山奥で隠居をしている。

 我が妹に王位を無理矢理引き継がせ、どこかでノソノソと隠れ暮らしている。

 そんな奴に今更、この展開を止める権利などありはしない。」


「そうかい。なら良かったよ。

 ブチ殺しても問題ないって事だな。」


 マナミは気づいている。

 目の前の敵だけでも対応が難しい上に、未知数な敵が後ろに2名いることを。


「王子よ。是非、我らの紹介もお願い致します。」


 1人の白銀の騎士がドラゴニフに話しかけていた。


「よかろぞ。

 この騎士の名は『光明の旅立ち』所属のグレイシス・モードレッド卿と言う名だ。

 聖剣に選ばれし英雄であり、この世界に叛逆を誓った同志だ。」


「どうぞ、何卒よろしくお願い致します。」


「そして次がこちらのお方だ。

 黒魔女グレース殿だ。彼女も『光明の旅立ち』所属で魔女の称号を持つものなり。」


「その紹介は嫌いよ。」


 褐色肌に黒髪ウィッグに黒いドレスを着ている。スタイルは抜群の女性だ。

 しかし、その妖艶さと合わさるように、死の匂いも漂っている。


「まさか。噂にはきいていたが、ここで出会うとはな。『光明の旅立ち』。

 しかも、上位指名手配犯ね。」


「最悪。」


 メイとマイは気づいていた。

 この状況は3対3のイーブンな戦いではなく、圧倒的劣勢だと。

 力の差は勇者の能力を持ってしても、戦歴などで負けている。


 つまり、戦場における経験値が無い。

 素人とプロでは何人係でも変わらない。

 それが、3人という最悪なケースだ。


「そこの軟弱エルフ国の勇者は理解しているようだな。この状況の悪さをな。」


 マイは汗を流していた。

 普段は冷静に対処している姿が目立っていたが、ここまでの差を見せつけられると逆に冷静を装うので精一杯だった。

 メイも同様で危険センサーが作動している。


 マナミは気づかないのではなく、根性論のため、1人でも戦う事を決断していた。


「本当は逃げたいよ。アタシだってね。

 こんな状況、馬鹿でも分かるよ。100%死ぬってね。

 でも、降伏よりは100倍はマシだ。」


「死ぬとわかってその行動なのね。そう。」


 マイは逃げるにはどうするかを考えていた。

 特にメイだけでも逃がせるようにと。


「負けたら酷い目にあうのに、よくもまぁそんなにやる気になりますね。」


「知らね。けど、もう逃げたくないから。

 それで理由は十分だ。」


 マナミは思い出した。あの少年の姿を。

 最後に一言話したかったと。


「しょうがないわね。連携するわよ。

 1人で戦ったら死ぬわ。」


「マイ姉ちゃん後ろは任せて。」


 マイとマナミの即席凸凹コンビができた。


「「行くわ(ぜ)!」」


 マイは聖剣『アッティラ』を抜いていた。

 マナミは聖剣『スルト』を手にしていた。


「遅いぞ。勇者諸君よ。」


 ドラゴニフが既にマイとマナミの間におり、両方に拳で攻撃をしていた。


「「!!」」


 2人は左右それぞれに吹き飛び、壁に激突した。

 メイが遅れて反応した。


「いつのまに!」


「魔法を唱えるどころか構える前に、潰させてもらう。」


 しかし、ドラゴニフのその足は止まった。

 マイの方から強力な殺気をキャッチしたからだ。


「ほう。鋭いな。獣のようだ。洗礼されている。

 小娘と思ったが、存外楽しめるな。」


「メイに手を出すなトカゲが。」


「言うではないか。」


「俺もそう思う。」


 別方向からの声にその場の皆が部屋の入口を振り返った。


「ここまで走るのにめっちゃ疲れたわ。

 孤立したらとか言ってたけど、ここにはまだ戦える奴らが数人いるな。

 これならアイツらも安心安心だな。」


「お前は何者だ。」


「どうも。ただの通りすがりの少年Aです。」


 キャストは自分でそう名乗った。




 ミレルミアたち視点


「攻め込まれるとは思ったが、予想よりは早すぎる。

 配置につき防衛をと言われたが、この状況は守りもへったくれもない。」


 彼女の周りには龍人兵士の死体が多く転がっている。近くから


「ミレルミアの言う通りだな。

 主人様が心配だ。」


「ブラスの気持ちも分かるが、旦那様が先に行くのが一番良い結果になるからな。

 あのお力は大勢よりは少人数向けだ。」


「その通りだな。

 しかし、他の連中はより心配なんだが。」


「それは何も言うな。

 むしろ、請求書が回ってこないかヒヤヒヤしているぞ。」



 別室でルシファルと合流していたハイネは、背中に異様な悪寒がした。


「?どうしたのハイネ?」


「い、いえ。何か良からぬ噂が聞こえたもので・・・。」


 城壁を2度壊すという荒技を思い出し、頭を必死に振って忘れる事にした。


「僕たちの所にはまだ敵さんが来ないらしいね。

 キャストの所に早く行きたいから、とっとと来てほしいな。」


「それにしてもルシファルさん。

 よくご主人様を1人で行かせられましたね。」


「ああ。本当はやだよ。

 けどね、彼の眼を見たら負けちゃってね。

 惚れた女の弱みかな。」


「な、なるほど・・。勉強になります!」


 ルシファルは他のやつが好きになるのを普段は快くは思わないが、ハイネはなんか頑張ってくれという、応援したい気持ちが出てくる。


「そう。参考になったら良いよ。

 おっと。来たようだ。」


「おや。これは。遅くなってしまい申し訳ありません。

 堕天使をお目に掛かれようとは。」


 エルフだ。同じエルフ族のハイネは逆に異質な雰囲気を感じ取っていた。


「おい。ボンクラ。私の敵はちゃんといんだよな〜。食い殺したくてたまんないからさ〜。」


 後ろから鮫のようなギザギザの歯を宿した、小柄な女性が現れた。

 その子には尻尾と狼耳がある。


「口が悪い人は嫌いですよ。女性はもっと節操を持つべきです。

 これでは我が醜い同胞どもと同じです。

 ええ。嫌いです。」


「お二方でお話をしたいなら、別の場所へどうぞ。こっちは暇じゃないからさ。」


 ルシファルは少しイラついていた。


「へぇ〜。あの堕チキン野郎食っていいんじゃねぇか。美味そうだぜ。」


「やめといた方がいいと思いますよ。

 そこの畜生エルフならともかく、そちらの堕天使はヤバい雰囲気を感じ取れますので。」


 エルフの男性が冷静に観察するように分析結果を話していた。


「随分と《《眼》》がいいんだな。」


「!!?」


「ほう。これは驚きました。

 そちらのクソエルフは気づいておりませんが、あなたはやはり別格だ。

 私は『鑑定』スキルの持ち主ですから。

 大抵は相手の情報が見えます。元上位天使様がなぜいるかは問いません。」


「何言ってんだよ。んなもんやり合わなけりゃわからねーだろーが。」


 ギザギザ娘はやる気だった。


「バカですね。単細胞が。

 堕天使さんが本気になったら我らは食われますよ。逆にね。

 戦えるのは円卓の称号をもらいし、ここではモードレッド卿、ドラゴニフ王子、グレースぐらいでしょうね。」


「なんだよ。テメェ。私が実力不足って言いたいのかよ・・・。お前から殺すぞ。」


 急に剣呑な感じに場が変わってき始めた。


「・・・・。チッ。わかったよっ。

 別にお前を疑った事はねぇからな。」


 暫くの沈黙の後に引き下がったのだ。


「ふぅ。な、なんか怖かったですね。」


「そうかい?まだ敵陣の本丸が来てない気がするけど。」


「??」


 ルシファルの言葉に疑問を抱いたハイネだった。


「ご明察通り。今、力を蓄えていらっしゃるのと、サポートで我々も手が空かなくてですね。

 なので、暫く睨み合いをお願い致します。

 お互い動かず手を出さずでどうでしょうか?


 ああ。ちなみに私は確かに堕天使様よりは弱いですが、そこのクソエルフよりは上ですから。

 嫌がらせや、時間稼ぎ程度はできますので。」


 ハイネは消耗が激しいからこその弱点だと。

 魔力自体は問題ないが、本人自身のメンタルや肉体的疲労があると分かっている。


「僕が守れる戦いができないとでも?」


「そうではありませんよ。

 そんな奴を守る価値は愚か、その辺のゴブリンを救った方がマシですよ。

 それに、戦えばお互い面倒になりますしね。

 そちらが、我々の力を未知数と捉えていらっしゃるならなおのこと。」


 睨み合いを続けるしかないのかと、試行錯誤しているルシファルであった。

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