第52話 出発!
窓を覗くと浮いてます。
かなりの高さで浮いてます。
これが、未来の車の姿ってやつか。
やっぱ、魔法スゲェーーーー!
ハイネさんが魔力パスを繋ぎ終えた後は、自動先行モード?になるからか、近くの椅子でお菓子をめっちゃ食べていた。
なんかかわいい。
ほっぺにクッキーの残りカスが着いてる。
「主様はこちらへどうぞ。」
俺も椅子にご案内され・・。
なんか嫌な気がする。
全方位から俺を囲むように、ウーマンズが待機している。
ブラスの隣に行こうかな。
ブラスは近くのハイネへと逃げていた。
チクショウ。
「ささっ。」
ささっ。じゃあねぇわ。
気まづいが、そこに座るしか無いのか。
ここで一つ解説を。
前方に魔力玉が飾っており、前にはガラスなのか知らんが、前の景色がよく見える。
その近くに、ハイネとブラスが椅子で待機している。
そして、周りは椅子以外にもベッドが完備してある。
折り畳み式だったり、冷蔵庫の魔道具やキッチンもある。
素晴らしい。てか、意外とデカいなこれ。
後方は出入り口になっている。
その近くには武器が貯蔵してある。
念のためかな。軽い倉庫のような、アイテムボックスもある。
一つの魔道具で全てが解決してるな。
他にもあるが、とりあえずそんな感じ。
椅子に座りながら、今後について話すことに。
「龍国の奴らが寝泊まりする、中継地点を追う予定か。」
皆が頷いた。
法国の勇者のマイとメイもいた。
「早く着きすぎないよう、車内泊も視野に入れておこうか。」
「そうね。
細かい詳細は知らないけど、そうした方が警戒されなくて済むからね。」
マイが口を開き、紅茶カップ片手に話していた。
「勇者殿は下手に動かないでほしい。
一応、お目付役をつけさせてもらうぞ。」
ミアの警戒してるぞという、メッセージが込められている。
「む。信頼されてない。」
「しょうがないわ。メイ。
私たちはお尋ね者だからね。」
「ハイネは大丈夫?」
「??大丈夫ですよ!」
この食いしん坊は。
食べ散らかしながら答えてやがる。
「太るぞお前。」
「なっ!乙女にそれは失礼ですぅ!
太りません!
討伐任務でよく動きますからね!」
ぷんぷん怒ってる仕草がかわいい。
「フフ。キャスト様。
このヘルガーと共に、任務へ向かうハイネはよく頑張っております。
なんと言っても、唯一の後方支援ですからね。動いてもらわないと困りますが。」
活躍してるようで良かったよ。
「べっ〜ーっだ!」
また可愛らしい仕草をしよっての。
『天然ですねあれ。』
全てが天然でできているか。
エルフだし、胸デカいし、魔力デカいし、リアクションデカいのに、そのくせ、割と臆病な性格なんだよな。
『バランスが取れているということでしょう。』
「そ、それよりもです!
次の街に着く際は、少し街から離して停めますからね。」
「はいよ。了解。」
ハイネもなんやかんや頑張ってるからな。
『抱かれるのですか?』
ブゥーーー!っと紅茶を吐いた。
「「「!?」」」
全員が一斉に見ていた。
「すまんすまん。ちょっと思い出し笑いを。」
おい。いきなりなんだよ。
『この流れはと思いました。
それに、あの子は積極的ではあるけど、上手く行かない子のような感じなので。
マスターが進んでご対応されたらとても喜ぶし、きっと今後は積極的に成長されるでしょう。』
意外と分析できてるようで凄いですね。
俺もそれは分かりつつあるよ。
なんかねぇ。弱味につけ込んでるようでなんかなぁ。
「どうしたのキャスト?」
ルシファルさんが考え込んでいる俺を覗き込んできた。
綺麗な顔だな。
「いや。大丈夫。すまないね。」
「いいよ。またその剣に何か言われたのかなって。
できるだけ聞かないようにはしてるから、何かあったら言ってほしいな。
そしたらすぐに壊すからさ。」
この人は本当にやるから怖いな。
「それよりも、僕をルルって呼んでよ。
他の人たちを愛称で呼ぶのは不公平かなって。
それに長いからね。僕の名前は。」
「分かったよ。ルル。」
「!!これは。良い気分になるね。
今から抱いても良い?」
是非お願いします!っといかんいかん!
「あのー。うん。
気まづいし、ブラスもいるから勘弁してください。」
「・・まぁそうだね。邪魔者もいるしね。」
『もう語るのも面倒ですが、相変わらず殺気に塗れてますね。』
それな。本当に。
発言1つでこの反応だからね。実際に行われたら、多分それだけじゃあ済まないよね。
「さてと、地図の確認かな。」
俺たちが向かうのは遥か彼方の地、龍国だ。
龍国は魔王軍の地域と密接とされており、常に戦時下に置かれている。
だから、冒険者はいない。
そして、彼らの地域は魔力や魔素は濃度が濃いため、ダンジョンができやすい。
たが、戦争のせいか必要以上な攻略は成されない。
そして、極め付けは龍人、古龍、龍種の塊ってことだ。普通の人間は奴隷とはいかないが、扱いは良くないとのことだ。
プライド高そうだしな。
そんな中に突撃かよ。気が知れないわ。
しかも、未攻略のダンジョン調査と原因か。
魔素や魔力だけって訳ではないな。
それだけなら、火の勇者マナミとオマケで何とかできるレベルだわな。
だが、魔王の領地、資源が取れれば成果はデカいし、他国より一歩リードできるか。
そうなれば戦争に力を入れるのは必然的だし、確実にダンジョン系は後回し。
「考えるだけで憂鬱だなこの依頼は。
協力者はいるだろうから、それからだな。」
「よくお分かりになられましたね。
流石は旦那様です。」
ミアよ。これでも座学はミアから学んでるぞ。
バカにすんなー。
『実際、バカですからね。』
間違いねえ。否定できまてん。
「ですので、龍国に着き次第、私たちは勇者マナミ様のお供ということでご紹介に上がるところです。
コソコソしつつ、堂々と街に滞在するためです。」
その方がいいな。
下手な来訪よりはマシか。
ただ、こうやってコソコソ後ろからついていくのは、道中にダンジョンを調べろってことだよな。
その上で合流して、本格的な調査と犯人探しときたわけだ。
注文が多いな。どれだけお金貰えるかな。
沢山貰えたら、専用武具とかオークションで買ってみるか。
『マスターが買っても宝の持ち腐れかと。
装備品をここまで活かせないのは、かなり珍しいですよ。
まさに『豚に真珠』です。』
そこまで言うか。
だが、変なんだよな。異世界だからか、装備との相性が合わない。
ほぼ全部だ。今つけている指輪、籠手、腕輪とかなら大丈夫だったが。
本格的な武器や防具は全く合わない。
そういう力の持ち主なのか、スキルと魔力が関係するのかのどちらかだな。
『まだ訓練を積んでいないので、実際のところは分かりませんよ。』
それだわな。やるだけやってみるか。
訓練してくれる人も集まったしな。
「旦那様。お茶菓子を置いておきます。
それとお代わりは要りませんか?」
「お、ありがとう。そじゃ一杯よろしく。」
「かしこまりました。」
ミアがティーポットからお茶を注いでくれた。茶菓子もしっかりある。
いい組み合わせで満喫しております。
「うん。美味しいな。」
「ありがとうございます。
王国の最高級の茶葉を使っております。」
なるほどな。
茶の道が浅い俺でもわかるぞ。これが途轍もなく美味なことがな。
「むぅ。僕も入れてあげるから飲んでよ。」
「う、うん。良いよ。」
「では、私も同じく入れさせていただきます。」
お腹タプタプになるんだが。
「お前たちは・・。キャスト様。
私がお茶を注ぎましょう。」
ロキさんやい。それはなんのお前たち?
「バカどもが。
そんなに飲めるわけないだろうに。交代でやらせてやるから後にしろ。」
流石はミアさんだ。
たまにポンコツになるが、今回の旅路は心強いな。
そんなミアがブラスに確認を取っていた。
「次の街までは後どれくらいだ。」
「うむ。あと少しだな。
窓からだが、大まかな距離感で把握できたぞ。」
ブラスは目が良いな。
「ならハイネ。次に着く街で魔力供給の交代だな。」
「あれ?早くないですか?まだいけますよ。」
「少しでも回復に務めろ。
いざという時の魔力だからな。」
「なるほど。流石はロキリアさんです。」
コイツは魔力の底が知れないからそれが言えるのだろうな。
ロキが普通なんだがね。普通ではないか。
暫く、『フライングボード』に揺られていると、街の近くになったのか、その辺の茂みで停めてからボードを隠した。
「隠蔽は物理と魔力で行うか。」
「分かった。なら、私とロキリアで行うとしよう。迎撃魔法はハイネの担当だ。頼んだぞ。」
「分かった。」
「かしこまりました!」
おおー。流石の連携力だ。
あんだけ歪みあっていてもこの協力度合いだ。
それだけ、相手のことを知っているということか。
「ふぅ。」
お、ハイネが迎撃魔法とやらをかけ終えたのか、一息ついていた。
ミアもロキも終わったのか。なら行くか。
「今思えば、違う街に行くのかなり久々な気がする。」
『籠の鳥はようやく解放されるのですね。』
なぜにそんなエモいの。
「さて、行きましょうか。キャスト様。
私から離れないで下さいね。」
しれっと手を繋ぐロキだ。
柔らかく温かいどん。
『なぜに解説をした。』
「おい。何をちゃっかりしている。
僕の方が良いに決まってるだろ。」
今度は逆の手を握ってくれた。
客観的にみると、迷子にならないような子供にしか見えない。
「お前たちは!
主様。こんな奴らよりも私の方が良いですよ。手でなくとも、胸でも構いませんよ。」
シアがニコニコしながら痴女みたいなこと言ってます。
是非、喜んでそちらにしようと思います。
「なっ!バカ共が!
ここは正式に婚姻関係が認められた私の出番だろうに。
旦那様の義父上様から許可はいただいている。」
余計なこと言うよねキミ。
ミアの言葉に反応したのは、その場にはいなかったヘルガーだ。
「!!そ、それはどういうことだっ!!
聞いてないぞ!キャスト様のお、お、義父様がいらしてたなんて・・・。
なぜ!私はあの時、早く着くことができなかったのだ。」
やべーよこの人。
悔しがりながら地面に膝をついて、目から血の涙流してるよ。
初めて見たわこんな光景。
『普通じゃないですからね。皆さん。』
「あの〜、さっさと行きませんか?
流石に夜遅くなってしまいますよ〜。」
流石は空気を読まない人だ。
あ、睨まれた。すいません。
「うむ。ハイネの言う通りだ。
ここは一先ずは置いといてだ。
先に街に入ろうぞ。夜の外は大変危険だからな。」
そして、そのままロキとルルに手を繋がれて街までやって来た。
「案外と小さいのな。」
中規模な外壁に木で作られた建造物が何軒かある。
人自体は王都とかに比べたら少ないが、活気力は負けていない。
小さな街にありがちな、地元愛みたいな感じだな。
街の名は『レレルカント』という。
「王国に近い街か。普通の馬車なら3から4日は経つでしょうに。」
「ふーん。結構早いのな。あの乗り物は。」
『でしょうね。
その代わり、魔力消費はかなりなものかと。
ただ、あの魔力っ娘は特に何も感じないと思います。
なんなら、着くまでにどれだけのお菓子が無くなったことやら。』
ハイネのしょうもない話と共に、やっぱ化け物級の魔力を行使しているんだなと複雑な感情が入り乱れていた。




