第5話 力を求めて 2
早朝に起きて、顔を自室にある洗面台で洗った。
ここって、トイレとかお風呂があって充実している。
地下にドブさらいとかの仕事があることから、まぁそんなものだよな。
日本社会に近い衛生管理してる感じ。
部屋を出ると、付近に仕事人でお付きの侍女さんことマールさん。
「おはよう。マール」
「おはようございます。キャスト様。
朝食の準備が整っております。
メイリーン様のお部屋まで、ご案内させていただきます。」
伯爵家やら貴族の習わしか知らんが、1人でいることがあまりない。
仕事の1つだとは思うが、やはり窮屈な感じがする。
人の目がある状況下な訳ですしおすし。
貴族としては当たり前なんだろかと思惑しているうちに、母上の部屋についた。
朝食を摂ってから、ミレルミアに魔力放出の件を聞く事に。イメージ力のために。
部屋の前のドアをノックした。
「母上。入らせていただきます。失礼します。」
朝食は昨日の夕食と同じく、いつも通りのメンツだ。
挨拶からたわいない会話と朝食を摂った後に、ミレルミア共に部屋を出る。
自室についたが寝る時以外に使う機会があまりないから、半ば勉強室となっている。
早速聞くことにした。
「今回は魔力の放出というか、その想像力に関して聞きたい。
魔力自体は使えないが。
日々の想像力や発動時のタイミングとか知っておかなければならないからな。」
知りたい理由になってない気がする。
「失礼を承知でお伝えさせていただきますが。
あまり必要ないかと存じます。
それと先に、想像力に関しては人それぞれで、特にこれというのはないです。
ですが、どうしてもお知りになりたいというのであれば、私自身の感覚による説明となってしまいます。
あやふやな感じとなってしまいますがよろしいでしょうか?」
僕の意図は読まれてないが、教えてくれるらしい。
ゴリ押ししなくてもミレルミアはやってくれるそうだ。
なんとお優しいや。
「すまない。難しいことを要求するよるようだが。お願いしたい。」
「かしこまりました。
できるだけ、お伝えしやすいよう努力させていただきます。」
お付きの騎士さんたちって、みんな肩身狭くならんのかな。
固い言い回しとかが当たり前になってる。
この世界と時代の影響か。
今日の講座が始まる。
魔力自体は無いから、あくまで発動するための基礎とそれに必要な想像力を理解するだけだ。
「これは基礎中の基礎ですが、魔法発動の条件は
発動したい魔法の魔力量が十分であること。
魔力を体内から体の外へと流し込めるか。
属性の色と唱えたい魔法の想像力が合わさっているか。
この3点です。
属性や唱えたい魔法によっては他にもありますが、最低限として3点です。」
「早速なんだが。
はじめに思った疑問で、唱えたい魔法とその色の想像となると、頭の中に描いた空想のものを呼びだす感じかな?」
「いいえ。
空想のものとして発動は実際は難しいかと。
言ってしまえば、それができるなら創造魔法に該当してしまいます。
この場合の想像力に関しては、《《現実的に起こりえること》》。
例えとして、風属性ならスキルや魔力の規模によりますが。
サイクロンや突風を限定的な範囲内で起こしたり。
規模はサイクロンや突風よりは小さくなります。
カマイタチのような風の斬撃を起こすことなど。実現できる範囲内が主です。
しかし、《《スキル》》によっては変わってきます。
『風神』や『風の加護』を得ている人たちはサイクロンで大国を包むような威力を出したりできます。
特に、『風神』スキルは恐ろしい力を秘めています。
神の権能を一部を使うことができることです。」
「はい?」
おい、待てよ。最初の説明は納得いく。
ファンタジーだからって誰も彼もが魔法を好きな想像力を持って、好き勝手に発動できるはもはや創造の領域に入ってしまう。
普通に考えれば、できる訳無いのに等しいことは理解した。
次の話も予想できていた。
スキルによる属性魔法や特殊魔法の強化ができる。
基本的な魔法は第1魔法から第10魔法と段階で存在し、そのスキルによっては最高位の10まで全て使えたりすることも。
けど、神の権能を一部を使えるってことは超位魔法ってこと?
神話級魔法かよ。
『風神』って神ついてるわ。なら使えてもおかしくないか。
はっはっはっはっはー(笑)てんやでい!
馬鹿げたスキルと力を与えることもあるってことかよ。
あまりにも過ぎて、つい思考放棄してたわ。
ちょっとスキル舐めてたかも、所詮は使い手によるわとか思ってた。
使い手関係なくて驚キング。
まぁ、私スキル無いんですけど。よほほほほほ〜。
「大丈夫ですか?キャスト様・・・・」
「すまない。少し気が気が動転していた。」
あまりにも衝撃的で、自分の中で時が停止していたのが体現されていたらしい。
ミレルミア女史が心配そうな表情でこちらを見つめる。
かわいいな。見つめ返そう。
やっぱ!女子への免疫力低いので目を逸らします。
誰がチキン野郎だ!コノヤロー!
「それもそうですね。神の権能なんて聞いて驚かない方がおかしいです。
ですが、そう何回も使えるわけではありません。
限定的であったり、一日または数日以内の回数制限など、限定ルールみたいのがあります。
でないと、普通にこの世の中滅んでます。」
「だろうね。流石に、神様にはしっかりと管理してもらわないと我々の身が持ちましぇん。」
初手から驚いたが、切り替えして次聞くか。
「次なんだが、魔力を体外に出すってことなんだが具体的な話は聞けるかな?」
「そうですね・・・。
ある意味ここが1番説明が難しいです。最初に魔力自体を自身で感知すること。
その次に、自身の体のどこか流しやすい場所に穴を開ける想像をすること。
そこから徐々に溢れ出していき、さらに穴が広がってく感覚と共に魔力が放出されます。
その後に体外に纏わりついた魔力をコントロールしていきます。
さらに溢れ出る魔力を抑えたり、出したりする必要とあります。
その理由としましては、垂れ流し状態だと魔力がすぐに枯渇するためです。
ですが、ここより難しい説明になるのが体外の魔力コントロールです。
感覚が軸になるため説明が難しく、一度で行えることではありません。
いわゆる、『身につけ方は人による』です。」
「ほぉ〜。体外コントロールはともかくとして、他はわかりやすかった。
魔力を通す場所は人によるけど、通し方があること、通せさえできれば後は出し入れできるようになると。
聞くに簡単だな。この二つに関しては。」
「体外コントロールは本当に人によるので、何ともです。
不甲斐なく、申し訳ありません。」
「いや大丈夫よ。結局、僕が魔力ないから、最後は理解できなくても大丈夫だから。」
これはあくまで気のコントロールのキッカケだから。
意固地になって考えたり、言葉で追求するよりかは自分で試した方が幾分かマシだな。
「後は、何か疑問点などはございますか?」
「・・・・・いや、特にないな。」
「わかりました。
では、長々とご清聴いただきありがとうございました。
少しでも参考になれば幸いです。」
「こちらこそありがとう。
ミレルミアの丁寧な説明と疑問に対して、しっかりと答えてくれて。
むしろ、こっちが助かったよ。」
「そんな!とんでもございません。」
んーー。なんか照れてるし、顔赤いな。
そんなかわいいミレルミアさんを見ていたいが、残念なことに、やりたいことができたので動くとしますか。
「急ですまないんだが。
これから僕がしたい修練があるからやってもいいかな?」
「修練ですか?かしこまりました。
しかし、珍しいですね。
普段やりたがらないキャスト様が、ご自身から修練とは。
やっと心を入れ替えられたのですね!
このミレルミア感服致しました!!」
何でや!失敬な!そんなにやりたくないオーラー流してましたか!?
まぁ、確かにやりたくは無かったよ。
だってそりゃ、スキル・魔力持ちなんかと訓練なんてボコられ力しか上がらんから。
再び例の精神修行ポーズこと、あぐら座りを開始スル。前にだな。
「えーと、ミレルミアはまだ部屋にいるの?」
「はい。そのつもりですが、いけなかったでしょうか・・・?」
何でそんな悲しそうな目で見つめてくるのよ。あ、しょんぼりと耳が垂れててかわいい。
ではなくてだな。
そんな顔して見つめられたら、実は見られたくないからとか言えないやん。
こっちに罪悪感残るわ。
岸◯露◯先生みたいに、断れたらすごいと思う。このセリフは次に取っておくか。
「全然大丈夫だよ。
けど、その代わりに、今からやることは内緒にしてほしいことなんだ。」
「かしこまりました!
何があろうとこの口が裂けても言いません!
不安であれば、誓約魔法でもお使いいたしますか?」
そこまでせんでええわ。
「大丈夫大丈夫だから。
ミレルミアを信じてるから。
小さい頃から支えてくれている。大事な人だからさ。」
「ありがとうございます。
嬉しさで感極まっております。(大事な人ですか。フフ♪)」
なんだろう、気まづい。だが、素直に嬉しいその言葉が。
しかし、美人さんオーラが出てるのでビビってます。
「あーうん。それはよかったよ。
それでなんだが、今からすることを簡単に説明するとだね。
この世界の人は体内に魔力という別の生命エネルギーが存在している。まずこれはいい?」
「はい。その通りです。
魔力量は違えど、ごく一般的に流れております。」
「なら僕はこう考えたわけ。
魔力=生命エネルギーではなく、魔力=精神力と。これはさっきの話から確証を得たのよ。
魔法の発動は現実的な想像力と必要スキルによる発動がある。
この現実的な発動だが、創造魔法の場合、途方もない思考と実現させるための精神力が使われる。
そして、自我の崩壊と同時に魔力枯渇による衰弱死に至ることになるだろう。
というか、発動させたとしても廃人になる。
無から有は人の身には余る所業だからね。
それこそ、サクリファイス。
つまり、生贄の必要があると推測するが。
この話はズレるから無視で。」
長話を聞いてくれていたミレルミアから。
「・・・・なんといいますか。
予想ではあるとはいえ、すごい内容ですね。
これを論文なりでも、魔法研究者たちに出せば相当な金額を得られますよ。」
へ?mjd?まぁ、魔力使えない本人が出しても笑われるだけだからね。
「いや、それは遠慮することにするよ。
それでだな、問題とするのが前の話にも挙げた、《《人の中にある生命エネルギー》》の方なんだ。
これは生物が常に身に付けている当たり前のもの。
しかも魔力よりも、より身近に感じるべきものだと思うんだ。
だけど、このエネルギーを感じないどころか、使用の仕方も分からず仕舞いという状況なわけよ。」
「その仮説が確かであれば、そのエネルギーはとてつもないものになりませんか?」
よく気がついた!
伊達に何百年生きてませんね。
あら、なんか殺気が・・ミレルミア様からでした。
シツレイナセンサクデシタ、モウシワケアリマセン。
「コホン。その通りです。
まず、生命エネルギーは・・・長いので、気と略称しよう。
気は人の生命そのものであり、または人生であると言っても過言ではない。
生きてきた年数、あらゆる戦いの経験を経て、手にすることができるオーラと言えばいいのか、または経験した蓄積型生命エネルギーかな。
とにかく、それを使いこなせれば、自身の積み重ねた力を使うことができるということ。
下手に与えられた魔力より伸び代もあり、経験と年数次第では強くなれるということ。
なので、今回はそれを発動というよりは身体から放出していこうと思う。」
「放出ですか?となりますと、どこかに魔力を通すような感じでやれるということですか?」
やはりここで疑問を抱いたか。
「いや、気は常に人から発せられてるよ。
だって気配を消したり、威圧感出してアピールしたりしてるでしょ?
それって、言わば強弱をつけて自身の存在感を気でコントロールしてるわけだよね。」
「確かに。そう言われると、心当たりが多くあります。
ドルガル様も戦う際の威圧感はとてもすごいものでしたが、ご子息の方々の前では一切感じることはありませんでした。」
「うん。簡単にだけど、わかりやすい例だとそんな感じ。
だから今度はそれを纏わせるために、放出とコントロールをすることから始めようと思う。
というわけでやってみるけど、折角だから何か感じたら教えてくれると助かる。」
「かしこまりました。
成功を心からお祈りします!」
では、始めるか。
その前に補足だが、気はつまるところ生命エネルギーを使うこと、つまり蓄積や経験がものを言う。
だが、魔力とは違うのが《《無くなれば死ぬ》》ということ。これ話したら絶対大変なことになるな。
確かに気は多くつけられるし、伸ばせるが同時に死のリスクも絡んでいる。
生物が生きるのに必要な量を放出させて活動しているというのに、そこからさらに気を放出して武器や空を飛んだり、纏って鉄やらを砕いたりなどに使うということ。
大量な生命を必要以上に使わなければならないとうこと。
これほどまでにリスキーなことあるか?
だが何もないんだ。やるしかない。
コントロールできれば死ぬギリギリまで使えるし、しっかり休んだり食事したりと生命活動さえできれば回復も叶う筈だ。多分。
やばい、怖くなってきた・・・・
じっとこちらを不安そうに見つめる、綺麗なダークエルフさんを見てると根性ださねば!
全集中の◯吸。あかん。普通に集中します。
瞑想中
どれぐらいの時が経ったのか?感覚が分からん。
あぐら体勢だが不思議と痺れがない。
これ無の境地・・・何も考えられないし考えたくない。ただただ何もない。けど。
すると、目の前に雫が垂れた。
そして、無の世界に波紋が広がっていく。
波紋は止まらない。
落ちた雫を中心に広がり広がり続けていく。
なんか、体が怠いな。
このまま目を閉じてもいいかな。
なんかもう疲れたよ。
人生に、前世に、来世に
苦労したなぁ。
もうこのまま、休んで(死んで)もいいかな。
すると、どこからか声がした。
『パパいなくなっちゃうの?
逃げないって約束したのに
私のために待ってるって言ったのに
またいなくなるの?』
フッ。
おいおい、この世界に存在しない娘に言われるとはな。
前世において守りたくて、守れずに突然死した情けない父親。
帰る場所すら守ることすらできなかった、マヌケが。
なら、今度こそは・・・・
読んでくださった方々にも感謝感謝です。
よろしければ、フォローなり応援なりしていただけると励みになります。
随時、仕事しながら更新頑張っていきます。
ご興味があれば、今後ともよろしくお願いします。




