第45話　祝ランクアップ　口が悪いなまくら

『そもそも聖剣の形や力のあり方は、人によって大きく作用されます。

　マスターの場合だと、魔力やスキルはありませんが、存在が特異点なのと小狡賢い性格が反映されたのでしょう。』

　お前それ一種の自虐ネタだからね。

『確かに。これは応えますね。』

　失礼な！

『それは置いといてですね。

　契約者との力的相対関係が聖剣の形を作っています。

　なので、マスターはこの形が適していると判断されたのでしょう。』

　誰が判断したのよそれ。

『分かりません。神様なのかもしれませんよ。』

　ふーーん。神様ね。よくはない印象だわな。

『失礼な人ですね。まぁ、いいですが。

　それよりも今後の事ですが、私を常に携帯しておくようして下さい。

　後、魔力娘にも補充をお願いしておいてくださいね。』

　携帯とはどうしてよ。

　オラのファイティングスタイルとは異なるのたがし。

『でしょうね。

　マスターに取ってみれば私のような素晴らしい聖剣も、ただの木刀レベルにまで貶めてしまう持ち主のお方です。』

　それってお前。自分がなまくらなの少しは自覚してるよな？

『携帯しておく事で、知識の共有と昨日のような技の転換や力の使い方等のサポートが行えますので。』

　完全にスルーしやがったぞ。いいけど。

　確かに、スキルや魔力とかに関してあまりにも理解不足だからな。魔物もか。

　そういう意味では『知恵の輪』という木刀も捨てたもんじゃないな。

『木刀ではありません。ボンクラ。』

　しれっとdisるな。

「魔力補充の前に、倒れた後の事をエラルド辺りに聞くか。」

　俺は剣を腰に帯刀し、忍足で寝室を出た。

「うぃーす。」

「お、大将！よかった！目を覚ましたのか。」

「静かにせんか。

　女子連中が寝てるぞ。眠れる獅子をわざわざ起こす必要はないからな。」

　なぜに獣害扱い。

「おっと。悪い悪い。エラルドの旦那。」

「久しぶりなのかな？グラディエ。」

「まぁな。こっちはハイネお嬢ちゃんと怪力英雄サマと討伐の旅に出てたからな。

　何とか、無事終わったはいいが、戻るまでに時間がかかってしまった。申し訳ない。」

「我々も知っておれば駆けつけられたものの、申し訳ありません。」

　ブラスとグラディエにも心配をかけてしまったな。

「若が無事帰ってきたのはいいが、どうもきな臭いな。仮にも3バカがついておってこの始末だからな。

　足止めされるほどの魔物の量に、それをコントロールする並外れた術士とはな。

　運が悪いとかではないな。

　なぜソイツが森なんぞで行動していたのか。もっと前から来ていたとも考えるべきか。」

　そこから先は僕には予想ができましぇんので、エラルド氏にお任せすることに。

「キャスト様。お目覚めになられたのですね。」

「案外と丈夫ね。よく倒れるのに。」

「シェリオにアルケミー。ありがとう。」

「いえ。私如きにできることなど。

　御身に比べたら、たかが知れております。」

　ヨイショしないで！

　それ1番エグいダメージだから。

「まあ、私としては薬の実験ができたからよかったわ。」

　おい。お前は相変わらず変わらないのね。その性格。

　仮にも主人相手にその度胸というか、肝が据わりすぎでは。

『お陰で、少しずつ身体が丈夫になりつつありますね。』

　薬で強くって。なんかドーピングじゃん。

　ダメやん。

「過ぎたことだからいいけどね。」

「流石ね。理解が早くて助かるわ。」

　この貧乳野郎覚えとけよ。

「親父も倒れることが多いな。

　やっぱ護衛が常に近くにいた方がいいんじゃないか？」

「んー。なんか気まづい。」

「気まづいって。子供じゃないんだからさ。」

　いや子供ですよ。何言ってるの？

　俺子供だよ。10歳だよ。

　チョットナニイッテルカワカリマセン。

『自称ですね。子おじさんとかどうですか。』

　なぜそうなるの。中身の問題なの？

「子供に心配される始末とは。

　俺も焼きが回ったか。」

「いえ。キャスト様もまだまだ成長の身ですぞ。」

　ブラスに遠回しに子供と言われた。

　言われたら言われたでなんか複雑だわ。

『面倒臭い性格してますね。本当に。』

　ポンコツ剣を無視しておこう。

「状況は聞いての通りだよ。『光明の旅立ち』とやらに噂とか情報ある？」

「申し訳ありません。主人様。」

　ブラスで入手できないとなると、相当尻尾を掴ませないように立ち回っているか、意外と国の上層部が関係しているのか。

　果または、最近できた組織なのかだな。

「どちらにせよ探りを入れなければね。

　龍国に向かうのに、絶対障害になってくるよ。」

「大将もそう思うか。

　俺もきな臭いとは思ってる。

　大将は元々、目的ではなかったが、聖剣の力や大将自身の力を見てしまった以上は脅威と見なされただろうよ。」

　なぜ毎度、厄災が舞い込むのだろか。

　前世から運が悪いとは思っていたが、なんか途轍もなく不運力が強化されてないかい？

『それはノーコメントで。』

　知識さんでも解答したくないそうです。

　もう避けられない運命だそうです。

「どちらにせよか。」

「キャスト様。お考えの最中に失礼致します。

　龍国の件でお話が付けられたので、詳しい詳細をお話しようかと。」

「あ、そうだったね。良いよ。聞かせて。」

「はい。まず、後5日後にこの世界会議と勇者会議が終わりを迎えます。

　龍国の勇者たちは先に国に帰国されますが、法国の勇者は我々と共に行動するためにこちらに滞在を予定しております。

　龍国までの旅路の同行ですが。

　こちらはお荷物にはならないということなので、戦力の１つとして活動していただく予定です。

　肝心の龍国出発日ですが、会議等終了後2日を空けて出発予定となりました。」

「ここで１つ疑問が。

　最後の2日の理由は龍国の奴らまたは、勇者との合流を避けるためか？」

「流石のご明察力です。

　このシェリオ感服致しました。」

　すいません。オーバーなのやめてください。

　めちゃ背中痒いです。

「若の言う通り。バレると後々厄介だからな。

　龍国に同時入国するよりは、ズレて行った方が、尾行または事件調査等の疑いをかけられなくて済むからな。」

「それが妥当か。ただ遅れないようについていかないと行けないのと、近づき過ぎてもダメか。」

　難しいな。

　だって、よく考えてみてくださいって話よ。尾行は近くで見守るから尾行できるのであって、遠距離過ぎると見守る方法が限られてくる。

　魔法を使うのも１つだし、スキルを使うのも１つ。

　だが、逆に相手もそれができると見た方がいいな。

『となると、尾行方法は火の勇者の《《何かしらのメッセージ》》が手がかりになりますね。』

　それしか考えられないな。

「難しいな。同じ龍の親族としては直感とか嗅覚ってどれぐらい優れてるよ？」

「そこはどうだろうな。

　結局、私のような純粋種であるか、龍人のように混合種であるかによっては、その力も複雑なんだ。

　だが、これだけは言える。混合種では純粋種には勝てない。

　勝てないというか、同じ龍でも嗅覚や直感的なレベルは違うぞ。」

「それならやりようもありますね。」

　シェリオの言う通りだ。

　純粋種にぶち当たらなければいけるな。

「？？さっきから、親父たちの言ってることがわからねぇ。」

　エインのやつ、頭から煙を出すんじゃない。

　頭がショートしてやがる。

　勉強中とは言えど、まだ学びの段階だからな。

「法国の人たちとも共有するべきか。

　はぁ。なんか、どんどんあらぬ方向にまとまってるわ。」

「あ、そういえば坊ちゃん。新しいギルドメンバーを迎えたそうね。」

　？？・・・・あ、忘れてた。

『酷いですね。』

　うるさい。

　こっちは必死だった上に、この話の内容だぞ。エインほどではないが、頭がショートしかけてるわ。

「そうか。無事に合格したんだな。

　良かった。」

「加入手続きは済ませてあります。

　荷物をまとめてこちらに向かっております。

　キャスト様もこの度は国の危機を救ったということで、王国から褒美を授けたいとの事です。」

「え。いらな。また面倒臭い王族共に合わなければって。なんの罰ゲーム。」

「あなたね。それ普通なら不敬罪だからね。」

「ハッハッハッハー！流石は大将だ！

　俺はあんたについて行って良かったぜ。」

　あーはいはい。そうですか。

　そりゃよござんした。

「それと、冒険者組合から昇格申請が入っておりました。

　おめでとうございます。Eランクへ昇格です。」

「お、マジか。やったぜ。

　これは素直に嬉しいな。」

「これだけしてEとはね。

　親父舐められてんのか。それなら許せないけどな。」

「違うぞ。エインよ。

　主人様はスキルや魔力がないと査定されている。

　本来なら冒険者も厳しいところだが、冒険者組合のマスターグラムやシンリーが、働きかけてくれたお陰でここまで来れている。

　むしろ、しっかりと評価をしてくれていると言うことだ。」

「へぇ〜。ならいいか。」

　ちょろいなお前。

「というわけで、王城に向かってもらうぞ。」

「マジで！？」

『どれだけ嫌なんですか。』

　だって、嫌なことしかなかったもん。

『普通にキモいです。やめてください。』

　あ、はい。なんかすいませ、ってなんで謝らされかけてるの？

「でも、みんなが元気になったら行こうか。」

「それは賛成だな。

　またいきなり不在のところ起きられては、こいつらが暴走するからな。」

　エラルドは寝室に向かって指を指しながら語っていた。

　とりあえず、俺は屋敷内で食事を摂ることにした。

　実は筋肉モリモリのグラディエ氏は何を隠そうと『料理』スキル持ちなので、料理が上手く、美味しい食卓を並べられる才能の持ち主だ。

　シェリオも手伝っている。

　シェリオの料理もなかなかの一品だ。スキルなしでこれは素直に凄かった。

　グラディエ料理長の料理をしっかりと味わいながら食した。

「やはり、グラディエの作った肉料理はうまいな。」

　自室で1人と1本だった。さみち。

『まぁ、マスターと食べるのは畏れ多いかと思われます。』

　そんなに怖いの俺？

『違います。静かに食された方が味や料理の楽しみを優先できると踏んだのでしょう。』

　それは分かるが。ん？俺貴族出身か。

　それも関係してるわな。

『その通りでもあります。

　私がいるので会話には困りませんけどね。』

　なんで俺はポンコツ剣と話しながら飯を食わないといけないんだ。

　無機物と会話って、側から見たらヤバいやつじゃん。

『元々、ヤバいのでお気になさらずとも大丈夫ですよ。』

　もう話したくなくなってきたわ。

「とは言えど、本当次から次へと厄介ごとの嵐だな。

　まだ、森にいた時の方が充実してたな。

　どうしてこうなったんだろうか。」

『・・・・。』

　なぜに黙る。

『下手な解答は全てを絶望に返すためです。』

　それは、受け入れるのはしんどいな。

「仲間でも増やすか。

　そしたら、もう少しは厄災から『楽』ができるかな。」

『今でも十分『楽』してますよね。』

　リターンが割に合わなさ過ぎる件に関して。

「なんで1楽したら、100の災害が降り注ぐの？

　この世界に嫌われてるワシ。」

『否定できませんね。珍しく正論です。』

　嫌な正論だよ。

『しかし、それは置いておいてですね。

　仲間を増やすのは賛成ですね。魔法士や鍛治士等などギルド活動全般においては必須ですから。

　お金を貯めるにはお金を使い、稼げるような人員体制を整える必要があります。

　今でもやっておりますが、人が少ないです。

　お聞きした中で、ご実家の方や光のバカがやってきた際のトラブル対処に難点が残ってましたから。

　そう言う意味でも今後のため、増やすのは賛成です。』

　そこまで理詰めしたい訳では無いけどね。

　じゃあ集めますか。食後に相談だな。