第30話 始動する そして躓く
ギルド4階の会議室に集まっている俺たち。
会議で1番に口を開いたのが、まとめ役の龍のエラルドさんや。
「では。今日から若が正式にこのギルド『ファミリア』のマスターになった。
今まで、各々で依頼をこなしていたが、次から若の顔を立てることになる。
若の確認をとりながら仕事をするように。
それと、仕事をする際の失敗やミスは全責任は若に帰ってくるぞ。
今まで以上に緊張感を持ってから取り組むように!」
上司の役目だからな。
やることは責任取りやな。わかるわかる。
「ここからは私ミレルミアが方針を話す。
旦那様の護衛だが、当番制にしていく。
月毎に替えていこう。これは最重要任務となる。」
そんなにハードル上げないでくれ。
なんか、ぼっーとしてるのが仕事だからさ。
「最初は決まっている。アリシアからだ。こいつは成果を出している。直近でな。
しかし、同時に問題も起こしている。
それでも、これまでの業績結果からアリシアとした。」
ミアがシアを認めてる。凄い光景だな。
シアもドヤ顔してない。なんかあるなあれ。
「主様の護衛任務、ありがたく承らせていただきます。
主様。全てはこの時のためです。
なんでも仰って下さい。」
「よろしく。シア。」
「では今後、商業の面だがアルケミーとリタの力によって多少利益は上がっている。
だが、未だ名前や影響力はつかない。
原因は恐らく数にある。向こうの職人や人員体制は非常に質が高く多い。
そこは仕方ないが、これからのために採用制度を入れていく。
しかし、質を落としたくはない。ここは気をつけていく。」
「次に、教育だが近くにエマーソン公爵令嬢の教育を私ミレルミアが向かうことになった。
よって、アインとエインの教育をロキリアに引き継がせる。
ナタリアは引き続き、外部の教育案件を受けるように。」
「そして、討伐隊だが冒険者組合のクエストを荒らしてくれればいいぞ。
護衛任務隊はクラウディアとセンキで王城の依頼をこなすように。」
「エラルドとシェリオはギルド内管理と人材雇用に入ってくれ。」
「最後に旦那様はお怪我がないようにしましょう。」
なんか俺だけ扱いが。子供かな?子供か。
「アリシアがおりますのでご安心を。」
とバーサーカーがなんか言ってます。
「チッ。次は私だ覚えておけ。」
ヘルガーの捨て台詞だ。
「それよりもですね。ご主人様。就任おめでとうございます。」
ハイネさん。俺置物だけどね。
「これ私からのぷ、プレゼントです!」
「これは指輪か。」
さっき部屋で見たやつやとか言ったら死ぬ。
「ありがとう。ハイネ。大切にするよ。
これはどんな効果があるの?」
「あ、はい。ダンジョンで発見したものなんです。
なんでも、魔力の質を高める金属なので、純度の高い魔導石をつけて私の魔力を蓄えさせました。
これで魔法は分かりませんが、魔道具が使えます!」
「おおー!!凄い。凄すぎる。ありがとう」
「い、いえ。えへへ。
魔力尽きても私が補充します。いつでも部屋に来て下さい。」
ドジっ子ハイネさんがこんな立派に。
ちゃんと部屋にお邪魔するか。
「旦那様。私からお祝いの品です。
気の能力を使う旦那様は物理攻撃を高める必要があるので、腕力の腕輪をチョイスしてみました。」
銀色の腕輪だ。なんかのマークがある。
知らんが。装着するとなんか力が湧いてくる。
「ミア。ありがとう。」
「旦那様。これからいつでもお呼びください。夜にお呼びしても大丈夫です。」
かしこまりました。夜にお呼びしますね。
「次は私だ!こちらをどうぞ!被りますが、こちらは状態異常無効化の指輪です。」
それって、めちゃくちゃ凄いやつでは。
いいの俺にこんなの。
「なんか高いよ。だ、大丈夫?」
「問題ありません。ダンジョン討伐任務報酬で得た物です。
お恥ずかしながら、他の捧げ物に迷いがありましたが、なんとか選び抜けました。」
「ありがとう。ヘルガー。」
悩みの末に行き着いたなら、それはそれで嬉しい。
「私からキャスト様にはこちらをどうぞ。」
部屋で見た籠手や。
「光の防御を司る籠手でございます。片方は闇の妨害を司る籠手でございます。
御身を外敵からお守りするのにお使いください。」
素晴らしいね。なんかかっこいい。光の守り手みたいでね。逆は暗黒のデバフや。
「かっけええ。ありがとう。クラウディア。」
「それとディアとお呼び下さい。」
「了解!ディア。」
ディアは喜んでいた。これで喜ぶならいいけど。
「主人殿。私もこれを」
センキは鎖帷子をくれた。なんか禍々しい。赤黒い鎖や。良いね。
「これは。珍しい形状だね。」
「そう。これは私の血液と鬼族に伝わる、金剛石を使ったもの。
重さも感じないようにしてもらったし、耐久性は鬼の血により格段に上がってる。私の愛で守る。」
なんか重いよ。
でも、鎖帷子でこの性能なら凄いぞこれ。
耐久系は気の展開を巡らすが、実際は消耗するからな。
これで少し油断しても耐えられそうだ。
「ご主人様!お姉さんはこれを作ってみたの。前に剣を使ったって聞いたから。どうぞ!」
この剣なんというか凄い。
本場の鍛治士のドワーフだからか。その剣は業物だ。
白く輝く刀身に、太く無く細く無く、無難な大きさ。そして何かの紋章?がある。
「素人目でわかる。これはかなり凄い。」
「どうやら、それ聖剣だな。大将。」
グラディエは剣の目利きができるのかそう答えた。
「紋章は知らないが。聖剣としての機能とその白く輝く刀身は忘れることは無いな。」
「エラルドはそうか。昔勇者と戦っていたな。皇国の勇者は風の聖剣だが、聖剣は魔法的要素な筈だ。
ああ、なるほどな。だからリタ、お前は追放されたのか。」
「うん。そうだね。アリシアの言う通りだよ。聖剣や魔剣を作るって事は世界の法則や魔法の要素を伝説を否定することになる。
それを物質として生成してしまえるのはこの世の神への冒涜になるの。
1人のドワーフの手によって神や王、勇者、英雄がいなくても、武器の使い手ができる。
つまり、誰でも上位者を殺すことができる。
そんな武器を簡単とはいかないけど、でも《《創れてしまう》》。」
リタの話は理解できた。
どうしてこの世界で出る杭は打たれるのか。
そして英雄だけでは無く、この世界に生きる異端と称される人物たちの差別や区別の状況。
神、スキル、魔力この3つによる統治など、世界の原則だのどうでもいいのかもな。
結局は人の手によって物事を損失させられているケースが多い。
勝手な判断で生死が左右される世の中ってことだな。
そこに、個の強さなど意味を成さない。
集団心理か。
むしろ、強者が徒党を組むのを恐れている。本能的に。理性ではなく。
国を作ったり、勇者がいたりしても、自分達の都合に良いか悪いかか。
良ければ待遇は厚く、悪ければ奴隷レベルまで落とし、殺す。
なんだ異世界ファンタジーとか、スキルや魔法すげぇって思ったが、割と普通じゃん。
前世と変わらない。
日本では見えない部分での差別や区別は多くある。この世界は見える部分で行われている。
「どこも変わらないし下らないな。
それに、俺には分からないな。
いや、差別や区別はするよ。人間だしね。それこそ俺は何もないからね。差別される側だし。けど、気にはならなかったな。
自分が何をしたいか。間違ってるとかどうでもいいかな。
どんなやつでも、生きている上で《《自分のことを中心に考えるから》》。
なんか自分で生きるのに普通は皆んな必死なのに、人の事を考えられる余裕って何様だよね。
人のことを考えられるということは神様になれるわけだ。
神になれないのに、神になろうとする。
これって、リタに言い放った神に対する冒涜じゃない?」
人間は神にはなれない。全知全能にはなれない。最強になれても、絶対ではない。
この世の中に必ずはない。1%ぐらいは上手くいかない。
上手くいくなら今頃、全員幸せだ。
しかし、幸せがいて不幸がいる。だから、世界は回る。
アホくさい話だ。そんな世界でしか生きられない現実への無力感。
せめての抵抗は俺はお前とは違うだな。
だからと言って、他人を優先する事にはならない。
ついでならいいが、自分がいなければ優先もクソも無いからな。
なら、その中で似た物同士の違いは?人としてあれるか、人を捨てるかだな。
「旦那様。王国は今でこそ多種族文化ですが、昔は差別が凄いです。
それに多種族文化は全員が受け入れているわけではありません。」
ミアが悟っている。ロキリアが今度は話す。
「私は今も差別される側の人だ。
キャスト様と同じです。違うのは種族なだけ。そのたった一つの違いが、ここまで結果が変わる。」
「そうだな。ロキリアの言う通りだ。私は竜種だ。その経験は分かるぞ。
若よ。皆はその若のアホくさい考え方、気ままに進み、時に気のままに行動する姿に惹かれている。
勝手な話だが、そう言う私もクソ勇者と同じで自分のことしか頭にないな。
それでも言おう。若よ。
このホームをこの拠点を俺たちのような奴らを支えてくれ。
傲慢なのは分かっている。人の身で、魔力・スキルも無いのにとわかっている。
だがそれでも私たちを引っ張ってきた。
だから今後もよろしくしたい。」
大それた役目だな。無力な少年なのにね。
まぁ、頑張って自分のために力つけて、自分のために使っただけだし。
結果として良い方向になっただけだ。
けど、なんだろうな。好き勝手にしてただけなのに。すごく気分が良いし、そんな苦労する状況が好きだった。
なんだ。俺もこいつらに惹かれていた。
「はぁ〜。しょうがないな。
じゃあ。俺について来いよ。その代わり俺できないこと多いし、こき使うからな。」
「フッ。分かった。いや、来るなと言ってもついて行くことにするよ。」
途端、皆が跪いた。
「勝手だが今回は代表して、私ミレルミアが宣言しよう。
我々はキャスト様の手足である。
どのような状況でも御身と共にあります。
死ぬであれば、私たちも同じく死にましょう。
生きるのであれば、同時に私たちも生きましょう。」
全員が誓っていた。信頼が厚いのは嬉しいね。
自分がいつのまにか、ここまで大きくなってたとは。
これは信頼を裏切らないように動かないと。
「よろしく頼むよ。俺からも改めて。」
「リタの剣や昔話からここまで肥大化するとは。だが、伝えたいことも伝えられたな。」
「エラルド。大丈夫よ。私はこの力を恨む事は無かった。
だってそのお陰でここにいるから!だからご主人様!この剣を使ってください。」
あ、今気づいた。俺、剣技の腕はゴブリン以下なんだよね。
「う、うん。が、頑張るよ。うん。」
汗流しまくり。
あんな重い話の後に剣使えませんはやばいな。知らん何かに追い込まれてる。
会議は無事終え、皆が仕事に戻った。
俺はシアを連れて町に出ることにした。
これがまた災いを引き連れてくることに。
「王国内の人だかりが多い気がするぞ。なんでだ?」
「気になりますね。聞いて参りますか?」
「いや、なんとなく分かったからいい。」
中央の大きな道に向かって指を差した。
皇国のマークがある馬車と我が家エンバイス家の紋章がある。
つまり、母国であり家族や。厄介ごとしか感じられない。
「逃げるか。」
「逃げる必要もないだろうに。坊ちゃん。」
チッ!脳筋はこれだから嫌だね。
直感力と戦いの経験持ちの騎士団長様は本当に嫌なやつだ。
後ろを振り向くと、リックス・フルメタル本人がいる。
「豪炎の騎士団団長であり、1番隊の隊長がどうしてこちらに?」
「主様。」
シアが俺を庇うように前に出た。
「なに。王国で他国との会議があったからな。お偉いさんの護衛で来てたのよ。
そしたら、たまたま探していた人物と事件を起こした奴がいるからな。
見過ごす事はできんと思ったわけよ。」
あいつ。殺気がダダ漏れだ。面倒いな本当!脳筋はすぐ戦いだからな!
「シア!下がれ!この脳き・・」
シアが既に前に動いていた。早かった。いやそんな表現は変だな。
消えて、いつのまにかリックスの目の間にいる。
そして、腹部に蹴りをかましていた。
「ぬぉ!」
ドゴッ!と壁に吹き飛ばされたリックスだ。
「くぅ〜効くね。俺これでも鋼なんだけどな。」
「ええ。硬かったですよ。
だから、強く蹴りましたが、効いてませんね。」
あいつの強さの秘訣その1だな。
硬いし、とにかく硬い。
硬さそのままに殴られたり蹴られると、たまったもんじゃない。
ギルド設立早々、大きな壁ができやがったな。本当苦労させられるよ!
台風止んでよかったです。




