第217話 やだぁ強すぎワロチ
セイランは呆然と見ている事しかできなかった。
マルグリットという強者が目の前で叩き潰され、余った自分は眼中にはいなかった。
その悔しさは確かにあった。
しかし、人を超えし戦いを目の当たりにし、自身無力さに苦しめられる。
それでも時は止まらず、彼女の前で衝撃的な戦いが繰り広げられていく。
アリシア
「ほう。確か『漆黒の栄光』か?
その系統の聖剣は知らないな。」
マリュカスの右手には赤い刀身の剣が握られている。
炎をイメージするのようであった。
その剣の名は『レーヴァテイン』。
「うむ。私はそうだな。
実は『神装』の契約と『聖剣』の契約を解除してな。」
アリシアの口からとんでもない一言が出てくる。
「は?」
「あ、アリシア様?」
「主様の加護を得るにはどうすべきかを考えに考え抜いていてな。
すると、ある境地へと至ったのだ。
そうか!この世界の神などと言う偽物共と契約を交わしているからだ!と。」
観客席から「おい!アイツ、後で病院へ連れて行け!」という一言が発せられる。
「そして、私は使えないよう、契約自体を断ち切ったのだ。
英雄スキルはあるが、もうただのお供え物だ。
だか、その瞬間、私は更なる力と主様の加護を得る事ができたのだ!!」
キャスト
「おーーーい!アイツ事故ってんぞ!」
「キャスト様。落ち着かれては。」
「落ち着けるか!」
「アンタの言いたい事は分かるわ。」
「ご、ご主人様。お怪我が悪化してしまいます。」
そんな事言ったってねえ!
俺が加護を与える?何言ってんの?
オレニンゲンムリムリ。
「何の勘違いから生まれるんだよ。」
「勘違いではないかと。」
ヴェルディから不穏な一言が出た。
「確かに。」
セレストもアリシアをまじまじと見る。
「おいおい。何だ?この気の高まり。」
魔力は一切無いのに、このオーラというか、俺よりも生気が溢れている。
しかも凄いのが、気という鎧が一般人でも目に見えるレベルであった。
「はあ。」
『新たな化け物の登場ですね。』
『宿主より強い部下は大変だな。』
『まあ、一度も周りの人に勝てた試しが無いですからね。』
お前ら何かしらのフォローする気概がないの?
アリシア
「私は・・・・・変わった。」
主様の『気天極』。
これを授かり、私なりに昇華した。
『天照皇』
「な、何で?あれ?」
マリュカスは知らず知らず、腕が震えている。
「さ、流石です・・アリシア様・・・・」
アリシアの周囲には気という気が何重にも張り巡らされており、全ての音や空気に同調している。
微細な流れからの予知、反撃などが可能となっている。
オマケに身体能力が倍々になっている。
キャストを100回程度は殺せるぐらいに。
「動かないか。恐怖の気持ちが出たな。」
感覚まで優れている。
「・・・・・・・」
「主様の加護は私だけのモノだ。
貴様の紛い物から作られた傑作など、ゴミ以下だ。」
「っ!!」
マリュカスはその時には仕掛けていた。
流石にキャストの名前を出された以上は引けなかった。
が、剣が振られる事は無かった。
何故なら、既に剣と鎧が砕けていた。
「い、いつの・・・まに?」
「お前が動こうとした瞬間の手前ぐらいだ。」
「化け物なのね。」
「そうか?まあ、それでも構わない。
主様だけは常にこうやって見守って下さる。
なら、私はあのお方のために何処までも人をやめよう。」
マリュカスはそのまま前から倒れた。
あまりにも大き過ぎるアリシアの気に当てられたのだ。
「雑魚だったな。これを使うまでもない。」
「つくづく化け物ね。」
「化け物に化け物を言われたくは無い。」
クロエは臆さず睨み返す。
「アリシア様。試合終了の合図が。」
「だろうな。エインも無事に守り切った。
そして、大将も倒した。
我々の圧勝だったな。」
キャスト
信じてはいたが、そんなあっさりと。
『あの壁は超えられますかね?』
死ぬだろ。
『あのな。お前さんは未だ成長過程だ。
俺や聖剣の使い方を一切知らない。』
『青き龍の言う通りです。
マスターはこれから強くなります。』
励ましてくれてんの?
安心しろ。
むしろ、超えるべき存在がデカければデカいほど、俺は燃えるタイプだ。
「アリシア。前から見ていたが。
やはり、天才だな。」
「ぐうの音も出ないかと。」
「アリシア様の努力は人の何百倍もしておりますから。」
だろうね。
「主様っーーーー!!!」
俺を叫ぶな!
ほれ見ろ!他の観客たちが一斉に俺を見るし!
『ま、人としてはマスターが上ですね。』
『だろうな。』
「主様ーーー!やりました!」
犬のように俺の下へとやってくる。
これがウチの最強の騎士です。
「あ、ありがとう。君に託して良かったよ。」
「ぶふおおぉ!!」
鼻血を出すヒロインって凄ない?
最近、多い気がする。
「皆んなもありがとう!」
「申し訳ありません。あなた様。」
「ごめん。キャスト。」
「姉さんもマルグリットも元気出して。
2人は俺のために動いたんだ。
それじゃ、本来いる筈の俺がこのザマだ。
俺まで落ち込んじまうよ。」
「も、申し訳ありません!!」
「だから、そうじゃないわい。」
アルマ様が2人をフォローする。
「いいかの?若いの。
妾の旦那様はの。お前たちを称賛しておる。
そこなイカれ騎士はまた別件じゃ。
それにの、いつまでも勝てる相手ばかりではないぞ。」
「アルマ様は正論だね。」
年齢の事を言えばぶち殺される。
「アルマさん・・・・・」
姉さんとマルグリットは頑張り屋さんだ。
それなりに伸びるだろ。
「ううううっ!!旦那様!」
何故か泣くミアだ。
「えーと、ミアは?」
「私も活躍したかったです!」
「ミアも十分活躍していだろ?」
あ、ふと気付いた。
これは全員を慰め、労い、褒めなくてはいけないループに嵌まった。
「ふう。シア。」
「はい!!」
顔が近い。
「後で話がある。」
「はっ!何に変えても向かわせていただきます!」
何かの意思疎通ができたようだ。
俺は何も送信していないが。
こうして、我ギルドの勝利で無事に終えた。
後日、マリュカス率いるギルドは解散となってしまう。
そして、Sランクギルドの解体報告を聞いた組合はより一層俺たちへの警戒心レベルを引き上げていくのだった。
勝ったのに、何か損をしている気分である。
「シア。」
「主様。」
「そ、その、おめでとう。」
「ありがとうございます。」
・・・・・・・
大切な話のため、うるさい装備共はドワーフの元へメンテを出した。
「シアはよく働いてくれる。」
「主様のために命を使っておりますので、当然かと。」
「そうか。俺はシアを1人の大切な人だと認識している。」
「・・・・・あっりがとうっ、うぐっ!
ございます!ひっく!」
大号泣しながらお礼を言ってるし。怖っ。
普段から涙を流さない女が、ここぞとばかりに鼻水まで垂らす始末である。
「シア。そ、そのね。褒美じゃないんだけど。
折角ここまで頑張ってくれたんだ。
だから、初めに俺と結婚してくれないか?」
アリシアはこの一言を受けた瞬間、心肺停止した。
「はっ!!
いま、私は・・・・・死んでいた?」
何でやねん!
「い、今のは空耳では?」
「いやそんな訳ないし。」
「うぉっしゃぁあああぁぁあああああ!!」
ちょーーうるさい声が『ファミリア』中へと響き渡った。




