第206話 会議はスムーズにはいかない
アリシア
「ヴェルディ。部屋の警備は?」
「ご主人様の周辺にはホムラ様率いる忍び隊、目が覚めたゴウキ様が正面、窓側に我らメイド隊が護衛としております。」
「足りないな。
私の部隊からも・・・動かし過ぎは主様が気になされる。」
「そう仰ると思い、既にアルツメイン、ワイト、ヘルゼンを向かわせております。」
ヴェルディは既に手を回していた。
「ほう。セレストより使えるな。
名をしっかり覚えておこう。」
「ありがとうございます。
そして、会議の出席者ですが。
アリシア様の他ミレルミア様、ロキリア様、クロエ様、アルマ様、ウェイン様が向かわれます。」
「多い気もするが、向こうもそれなりのメンバーで威嚇してくるだろう。
用意周到なのはいい事だ。
こちらも警戒を最大限に引き上げさせろ。
そして、失礼のないようにな。」
「かしこまりました。
ここでゴミ・・・・お客様がお待ちです。」
ヴェルディが一瞬だけ本性が出かけた。
「変わらん。ゴミだ。
なら、片付けるまでよ・・・と言いたいが。
表面は大事だな。」
アリシアは扉を開いた。
自身の仲間が座って待機している。
長い長方形のテーブルに、それぞれのギルドが向かい合うように座っている。
「遅い。
お前が《《今は》》サブマスターだ。」
ミレルミアは含みのある言い方で、認めない宣言をした。
「すまない。役立たずよりはマシだが。」
「身内で争うほど余裕なんだ?」
そんなプチ喧嘩に水を差してきたのは『ブリゲイド』のメンバーである。
「なぁーに言ってんだよ。
こういうのは見てるからおもろいんだろ?」
金髪の髪型ツンツン少女が口を開いた。
そして、緑髪ロングヘアーの女性が。
「おやおや、いけませんね。
下手に口を開くとは。
我らのマスターがお怒りになりますよ。」
「「!!」」
そのマスターの名を聞いた2人は口を紡いだ。
緑髪の女は立ち上がり、頭を下げた。
「申し訳ありません。うちの者が大変ご無礼を。」
「気にしてない。こちらの不手際だ。」
ウェインがアリシアたちの代わりに対処する。
「ウェインの言う通りだよ。
しっかりしてよ。《《サブマスター》》さん。」
ロキリアもまた認めていなかった。
「(コイツら後で殺す。)
ええ。今回は会合でしたね。」
アリシアは何とか自分押し殺した。
今回、キャストの代行でもあり、下手な真似はできない。
「じゃ、じゃあ、俺・・・んん。
私がこの王国の冒険者組合のギルドマスターをしている。
グラム・イスギルだ。
といっても、ここにいる連中は把握はしているだろうが。改めてだ。」
グラムが会議を取り仕切る。
「では、今回の議題をよろしくしたい。」
中央にいるグラムの両隣には他組合の裁定者がいた。
そして、何かの書状を取り出した。
「この度、『ブリゲイド』側の主張、ダンジョンの偵察任務中に『ファミリア』からの襲撃に訴えの申し出がある。」
「賠償は勿論だが、ギルドとしても正式に謝罪が欲しいと進言されている。」
「だが、この話はあくまでも『ブリゲイド』側の主張であって。
『ファミリア』の主張がない。
一方的に決めつけるのは早計だと判断した。」
グラムはこのまま勝手に決められそうな所、何とかして話し合いに持ち込んでくれた。
「(グラムは努力したようだな。最低限の役割は果たせたか。
しかし、顔色が優れない。
どうやら、この2人の裁定者は買収されていると見た。)」
アリシアは自身の観察から結論付けた。
「このグラムが言うように、お互いの意見が出揃わないのは不自然だ。
そのため、今回はこのような形で話の場を設けた。
異論はないかな?」
「ええ。問題ありません。」
代表してアリシアが述べる。
「こちらも問題ありません。」
『ブリゲイド』側のギルドマスターもそう答えた。
アリシアはそんな相手のマスターを観察した。
彼女は水色のミディアムヘアーに前髪辺りに、安物の白色のヘアピンが付けられている。
瞳は綺麗だが、闇が深い。
スタイルは良く、キャスト好みの胸元である。
服装は軽装備で、所々綺麗な肌が露出している。
耳もピアスがある。星の形をしている。
そして、目を惹きつけるのが胸元の白色のブローチである。
「何か気になる事でも?」
「いえ。」
アリシアは色んな意味でも危険信号を感じ取った。
しかし、底知れぬ戦闘力も同時に感じ取れた。
「では、話し合いを。」
「はい。まず、事の発端についてですが。」
クロエがまとめて説明した。
「ですが、そちらが襲ったのでは?」
「私たちの所はそれで逃げられるでしょうが、お館様へ矛を向けたのは確かです。」
「今、全員療養させている。
この場には居ないのはご容赦願いたい。」
ミレルミアが追撃の一手を言い放った。
すると、『ブリゲイド』側のギルドマスターが。
「そうですか。それは残念。
ですが、こちらはしっかりと証言者を連れて参っております。」
そこにはエラルドと戦った男がいた。
薬により、一時的に弱体化している。
しかし、クロエが見た時より、怪我の具合が酷かった。
「いつそんなに怪我を負われたので?」
クロエはつい疑問を投げかけた。
「おや?そっちが負わせたの間違いだろ?」
最初の方に突っかかってきた、ピンク色のツインテール女性が更に畳み掛けてきた。
「何故、そう」
「だ、か、ら、お前たちが襲ってきた。
そんで、こっちに被害者がいる?いいか?
証拠はそっちに無い。」
「いやいや、あっちはボロボロになった男共が居んだろ?」
今度は金髪のツンツンヘアー女も共に責め立てる。
「抜け抜けと。小賢しいのぉ。
主らは妾たちに何を要求したい?」
「星!話が早過ぎるぞ!」
「黒龍よ。そうこう言ってもキリがないぞ。
時間が経てば経つほど、苦しくなるぞ。」
アルマは2人の裁定者をチラ見しながら答えた。
クロエもそれには気付いていた。
しかし、やり方が気に食わなかっただけであった。
「アルマの言う通りだ。
旦那様を襲った事は許しはせん。
だが、タダで喧嘩を吹っかけてきた訳ではあるまい?」
ミレルミアが今度は仕掛けた。
「旦那様・・・・それはそちらのギルドマスターで良いかな?」
「そうに決まっている。」
『ブリゲイド』のギルドマスターから殺気が飛ばされる。
『ブリゲイド』の仲間はその姿に怯えている。
『ファミリア』側は警戒はするが、涼しそうな顔付きである。
「ほう。主様とは、どんな関係がある?」
「お前に言うつもりはない。」
「そうか。なら、答えは簡単だな。
欲しければ、レギオンでケリをつければいい。」
アリシアが逆提案をした。
「アリシア!」
クロエのそんな言葉を無視した。
「どのような過去が有ったのか、そんなのはどうでもいい。
こっちはお前たちのやり方に腹を立てている。
いちいち小細工などせずとも、私たちへ喧嘩を売ってくればいいものを。」
「そうか。なら、単刀直入に言わせてもらう。
あなた方のギルドマスターを私に寄越せ。
それを以て許しとしよう。」
「抜かせ。殺す。」
「おいおい!!待て待て待て待て!」
グラムが2人を止める。
他のメンバーも殺気がダダ漏れである。
「バカバカ!今は裁定中だぞ!
お互い損しかなくなるぞ!」
「その通りですね。」
今まで静かだった『ブリゲイド』側の緑髪ロングヘアー女性が口を開く。
「マスター。ここは有利に進めておきたい。
であるなら、余計な争いは無益かと。」
緑髪のロングヘアーはエルフの女性である。
エルフだが、胸は大きい。
「テュナがそう言うなら間違いありませんね。
すみません。
つい、カッとなってしまいました。」
「いいのよ。貴女の悲願だものね。」
テュナというエルフは優しい目でギルドマスターを諭している。
「アリシアも落ち着け。」
クロエも珍しくアリシアを抑えている。




