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第12話

 だが、この辺りは、実は虚構が混じっているのを、別の機会に、村山幸恵は、岸総司から教えられていた。

 岸総司の養父にして祖父、岸三郎提督は、第一部の映画にも、実名入りで出てくる人物だが、登山が趣味であり、台湾の新高山等に何度も登った人でもあった。

(更に言うならば、病膏肓に入るばかりで、遂には、日本海兵隊に、日本陸軍に先駆けて、山岳師団を第一次世界大戦時に保有させた程の人物でもあった。)

 そして、総司も養父のお供をして、子どもの頃から、何度か台湾に行ったことがあり、養父に台湾のことを尋ねたこともあった。

 台湾語についての総司の話を要約すると。


 台湾語の筆記法、正書法というのは、今でこそ、漢字とローマ字の組み合わせで、ほぼ確定しているが、この当時は、まだまだ暗中模索の段階だったらしい。

 総司によると、台湾語の筆記法が、ほぼ確定したのは、昭和に入ってからだ、と養父は言っているらしい。

 となると、台湾語の筆記法を、近所の子に教える、というのは少し無理があった。

 だが、映画的には、極めて印象的な絵になる話ではあった。


 そして、この一件から、当局と独立を目指す運動家と両方から、ヒロイン達は目を付けられる。

 当局は、ヒロイン達を、それとなく監視下に置くようになり、独立を目指す運動家は、ヒロイン達に、何とか自分達に協力してもらおうとするのだ。

 それを嫌ったヒロイン達は転職することにするが、当局の監視もあり、それは難航した。

 結局は、夫は長老派教会で働くことにし、ヒロイン自身は、病院の看護師の手伝いをするようになった。

 

 その一方で、台湾では、日本の手によってインフラ整備が進んでいく。

 鉄道が敷設され、道路が張り巡らされ、港湾設備も整えられていくのだ。

 これは、台湾の産業基盤を整えると共に、尚も台湾独立を目指し、武装抵抗を止めない者達を、迅速に武力鎮圧する為でもあった。


 これは、一旦、日本に戻った小松宮殿下の働きかけもあった。

 映画の画面上で、東京で、伊藤博文らに対して、小松宮殿下は訴えていた。

「台湾が早く自立できるように、手を尽くしてほしい。台湾の住民の多くが、独立を求めている。いずれ、子が親離れするように、台湾が日本から離れて独立できるようにしてほしい」

 伊藤博文

「台湾は、金の卵を産む雌鶏です。それを手放すのは、惜しいと思われませんか」

 小松宮殿下

「その考えが間違っている。台湾は、独立を何れは手に入れるべきなのだ。台湾で戦ってみて、それが自分にはよくわかった」


 幸恵は思った。

 真実の小松宮殿下は、北白川宮成久王殿下からお聞きする限り、そんなことは言わなかったはずだ。

 だから、ここでも史実に嘘を交えて、映画を描写している。

 一つ、嘘に気づくと、他でも嘘が見えてくる。


 そして、小松宮殿下は、台湾のことが気掛かりだから、と台湾に赴くことにする。

 台湾の発展の現状を台北から視察し、台南にたどり着くが、その時、マラリアを再発させる。

 慌てて、病院に担ぎ込まれるが、悪性のマラリアで危篤状態になる。

 その病院は、ヒロインが働いているところでもあった。

 小松宮殿下が入院したことを知ったヒロインは、台湾の将来について、何とか小松宮殿下と会って話をしたいと思う。


 警備がザルだと、幸恵は思ったが。

 ヒロインは、小松宮殿下の枕元に赴き、危篤状態にある小松宮殿下に尋ねる。

「台湾は、独立できる日が来るのでしょうか」

「子どもが大人になったら、親から独立できるように、何れは、台湾も日本から独立できる」

 それが、小松宮殿下の、まともな思考で発せられたのか。

 その言葉に呆然としたヒロインが、我に返ったとき、小松宮殿下は絶息していた。


 そして、映画は完結した。

これで、映画の描写は終わりです。


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