ネコとクリスマス
今回はクリスマス特別編。
連載している
『ネコの肉まん~痛いネコのほのぼのストーリー~』
を短編でお届けいたします。
「にゃにゃにゃ・にゃ・にゃ・にゃ・にゃ~」
「にゃにゃにゃ・にゃ・にゃ・にゃ・にゃ~」
「にゃにゃにゃ・にゃ・にゃ・にゃ・にゃ~」
「にゃにゃにゃにゃにゃ~」
テレビからクリスマスソングが流れてきたので
ぼくはつられて歌ってしまった。
今日はクリスマスイブ。
子どもも大人も楽しみにしている日。
クリスマスと言えば、骨付きお肉。
お野菜の上にサーモンがとかマグロが乗った豪華なサラダ。
シュワシュワした小さな泡が浮かんでいるおいしそうなジュース。
そして、忘れちゃいけないのはケーキ!
豪華なお食事が食卓に並ぶ日。
と言っても、ぼくが食べられるものはそう多くない。
ネコと人間の食事は違うから仕方ないけど、
少しくらいは食べさせてくれるはずだとひそかに期待している。
「ご主人様~。まだ帰って来ないかにゃ~。クリスマスに一人ぼっちは寂しいにゃ~」
ぼくの場合は一人じゃなくて一匹だけど。
「グ~」
お腹が鳴った。
「お腹もすいたから早く帰って来てにゃ~」
待っているうちに待ちくたびれたぼくは、
「スピピ~。スピピ~」
眠ってしまった。
「ガチャ」
玄関からドアが開く音がした。
けれど、ぼくはあたたかい部屋でぬくぬくと熟睡していたので気づかなかった。
「ピカっ」
突然、部屋の電気がついた。
「にゃ! ご主人様が帰って来たのかにゃ?」
と思って目を開けようとしたら、
「パーン」
突然、大きな音がして何かが飛んできた!
「なになに?」
ぼくはビックリして目を覚ました。
すると、たくさんの紙テープがぼくの前に落ちてきた。
紙テープの先にはご主人様がいて、手には何かを持っている。
「もしかして、あれは、クラッカーかにゃ?」
どうやらぼくをビックリさせようとクラッカーを使ったらしい。
ご主人様はニコニコしているところを見ると、
「ぼくをビックリさせる作戦は大成功した」っていう顔をしている。
「ひどいにゃん。心臓が止まるかと思ったにゃ~」
ご主人様は、お部屋を出て行った。
「何か取りに行ったのかにゃ?」
すると、お料理を運んできた。
ぼくが食べたかった、骨付きお肉にお刺身が乗っている豪華なサラダもある。
「でも、ぼくは食べられないんでしょ?」
と思った。
するとご主人様はキッチンへ行った。
まだ運んでくるらしい。
ぼくは運ばれてくるお料理をじーっと見ていると、
「あれ?」
明らかにご主人様が食べる用のものではないお肉っぽいものが
運ばれてきた。
「もしかしてネコ用のお肉かにゃ?」
それならうれしい。
見栄えはよくないけど、お肉が食べられるならそれでいい。
しかも、サラダに乗っているお刺身だけをぼくのお皿に盛ってくれて、
お肉とこのお皿もぼくの目の前に置いてくれた。
「本当にぼくにくれるのかにゃ?」
まさに期待通りの結果になるなんて!
「いっただっきまーす」
早速、食べた。想像通りおいしい。
次に、お野菜の上に乗っていたお刺身のサーモンとマグロも食べた。
「ん~。これもおいしいにゃ~」
ぼくは満足していた。
すると、ご主人様は思い出したかのようにキッチンへ行った。
「ん? このにおいは……」
ご主人様が運んできてくれたお皿には、高級キャットフードの「ネコセレブ」が乗っている。
これが食べられるときは、特別なときだけ。
その特別な日にクリスマスも当てはまるなんて嬉しい。
「ありがとう~。ご主人様~」
ぼくは夢中になって食べていた。
大食いのぼくだけど、かなりお腹が膨れた。
けど、デザートは別腹!!
「ケーキ欲しいにゃ~」
でも、さすがにケーキはくれないだろうと思っていた。
「コトン」
ご主人様は、ぼくの前にお皿を置いてくれた。それを見てビックリ。
「えっ! ケーキもくれるの??」
ぼくは目を丸くしてご主人様を見つめた。
パッと見た感じは普通のケーキだけど、
よく見ると、ご主人様のケーキとは違うからネコ用のケーキみたい。
さすがご主人様! 気がきいている。
「ムシャムシャ」
お腹がいっぱいだったけど、別腹枠でケーキを食べた。
「ふ~」
さすがにお腹いっぱい。ぼくは眠くなってきた。
すると、ご主人様が近づいてきた。
「なに? もうお腹いっぱいにゃん。もう食べられないにゃん」
と思っていたら、
手には赤いリボンがかかった箱を持っている。ぼくの目の前まで持って来た。
「もしかして、クリスマスプレゼント?」
赤いリボンをシュルシュルっと取って箱に手をかけた。
それにしてもずいぶんと大きい箱だよね。
ぼくがまるまったら入れるくらいの大きさ。
クリスマスだから、ぼくのために奮発してくれたのかもしれない。
「もしかして、大きなネズミのおもちゃかな。
それとも、ネコ用のおやつの詰め合わせかも。まさかネコ用のお洋服かなぁ。
それなら困る~。お洋服は動きづらそうだから着たくないし~」
あれこれと考えながらドキドキしつつ箱を見ていた。
「パカっ」
ご主人様が箱を空けると、
「ピョーン」
勢いよくヘビが飛び出てきた。
「にゃ~。ヘビにゃん」
ぼくはそのヘビに身体が絡まってしまった。あわててブルブルと身体を振って落とした。
「よかった。これで大丈夫にゃん」
「んにゃ?」
ぼくは不思議に思った。
「ヘビってこんなんだったけ?」
恐る恐るヘビを見ると、まったく動いていなかったし、
顔もおかしい。笑った顔をずっとしている。
「もしかして、おもちゃかにゃ?」
ご主人様を見ると、ゲラゲラ笑っている。
なになに。
この箱はビックリ箱というイタズラグッズで箱を開けると何かが飛び出てきて
ビックリさせるおもちゃだって。
「ご主人様~。ひどいにゃ~」
お腹がいっぱいで油断しきったところにイタズラなんて……。
マヌケな顔をしたヘビを見ていると、ヘビにも笑われている気がしてバカにされている感じがする。
なになに。
「君ならひっかかると思っていた」
だって。
「もう~。分かっていたらひっからなかったのに~」
ビックリしたことで体力を使ったのと、お腹がいっぱいになっていたから眠くなってきた。
「ヘビはおもちゃだったから安心にゃん」
ぼくはすっかり安心したせいもあり、ものの数分後には
「スピピ~。スピピ~」
いつものように眠気には勝てないぼくだった。
するとご主人様はぼくにそっと近づき、
赤いリボンがついたおもちゃのネズミをそっとぼくの隣に置いた。
「メリークリスマス!」
ぼくの耳元でつぶやいた。
《終わり》




