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Become Monster Online~ゲームで強くなるために異世界で進化素材を集めることにした~  作者: 亜掛千夜
第三章

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第八七話 全力逃走

 船の後方では、どんどんとアジト周辺が騒がしくなってきた。

 そのまま放置してくれていれば、まだぐっすりと眠っていてくれたであろうモンスターたちも、無理やり起こされていき完全にアジトとしての機能を取り戻していく。


 未だに距離はあるが、大型から小型まで多種多様な船が何隻もどこからともなくアジトの前に現れ、次々とこちらに向かって出航してくる。

 そのことを船内のマップに映る探知機の情報で把握したHIMAは、甲板にある主砲の中にいるブラットにも聞こえるよう全員と通話を繋いで報告していった。



『どんどん来てる。しかもけっこう速度もあるよ』

『でも速度ならこっちも負けてないよ』

『だけど向こうはこっちと違って、途中で止まっても何の問題もないから暴走モードを気軽に使えるってのが恐い』



 ザラタンのときはイベント領域から出てしまえば、それで完全に終わりだった。

 けれど今回の場合は場所がアジトの近くなだけに、イベント領域外でもイベントとは無関係なリーサル海賊団に襲われる可能性が高い。

 どれだけ数を減らすことに成功していようとも、完全にゼロにはならないのだから。


 なのでブラットたちが暴走モードを使ってしまった場合、そんな危険な場所で一切動けなくなるということになってしまう。

 なので今回ブラットたちは、できれば暴走モードは使わないで逃げ切りたいところ。


 運が良ければ他のプレイヤーの船が守ってくれたり、狩ってくれるかもしれないが、他人をあてにして動けなくなるのは考えなしが過ぎる。

 イベントの領域外に出られれば、暴走終了で機能停止しても【リミナル・ウェッジ】で飛ぶことはできるが、その前に敵に捕捉されていたら終わりだ。

 あれは完全に自船が安全なときにしか機能しないのだから。



『そんなこと言っている間に、さっそく使ってきたよ。このままじゃ追いつかれそう。

 それになぜかどれも二隻縦に並んで……──ってこれ、たぶん大きな船を暴走させて小さな船を引っ張ってるんだ!』

『そんなことしてきてんの!?』



 船足が速く馬力もある大きな船一隻だけに暴走モードを使わせ、負担の少ない小型船を牽引。

 もし暴走が切れても今度は小型船だけを切り離し、そちらに追いかけさせようという魂胆なのだ。


 そんな二隻一組の船が五組、一〇組、ニ〇組と次々こちらに向かって全力で追いかけてくる。

 補給基地で数を減らせたはずではなかったのかと、悪態をつきたくなるほどに。


 こちらも暴走モードを使えば振り切れない速度ではなかったが、前述した理由に加えて、こんな最奥付近で使っては途中で停まって終了だ。

 それ以外の方法であのどんどん増えていく、こちらよりも速い船をどうにかする必要があった。



『しかたがない。逃走作戦その一をここで使おう』

『それしかないね』

『あ、なら『歌船の響音』を使ってやらない?』



 しゃちたんにその理由を尋ね、返答を聞いたブラットとHIMAは即採用。

 しゃちたんはスペシャルアクションを使っても、まだ機能している派生アクション『歌船の響音』を使う。

 そしてそれが発動したのを確認してから、ブラットたちは出し惜しみせず【猫海賊の呼び笛】を片っ端から吹いていく。

 もちろん命令ができるよう、それぞれ対応した装備を身に着けてから。


 呼び笛の効果すら増幅する『歌船の響音』により、銅以下の笛からは普段召喚される五倍、銀の笛からは四倍、金の笛からは二倍の数の猫海賊団が大量に召喚される。

 その数は百を優に超え、圧巻の一言。追いかけてきている船よりも、数だけはずっと多い。


 予想以上の数に驚きと頼もしさを感じながらも、三人はすぐに命令を下した。



『『『命がけで壁となって敵を阻め!!』』』

「「「「「ニャグゥォォォオオオーーーーーー!!」」」」



 その命令は戦って死ねですらなく、たとえ無為に殺されようと壁になって敵を足止めしろという無情なもの。


 金の笛から召喚された猫海賊は今のブラットたちからすれば、ずっと味方にいてほしいほどに優秀なモンスターたち。

 けれどそれでも相手は最強の海賊──リーサル海賊団。小ボスの部下レベルでは、どうあがいても敵うわけがない。

 無理に戦わせようとすれば、あっという間に潰されてお終いだ。


 しかし今回召喚したのはモンスターだけでなく、大きな質量を持った船も大量にある。

 いくら強いモンスターであろうと船を足として使っている以上、大質量で海路を塞いでしまえばそれだけで一気に進行速度は落ちる。



『よしっ、いい感じに阻んでくれてる!

 やられても残骸が邪魔でなかなか進めてないみたい!』

『これぞ数の力って感じだね』



 百隻以上の船が相手の進路をぎゅうぎゅうに塞いでいき、暴走中の大型船も何隻もの船という壁にぶつかり進めなくなる。

 中には強力な砲撃系のスキルで強引に突破を試みたりもするが、たとえ船が壊れても大きな残骸が残って最後まで邪魔をする。

 船員の猫海賊たちも、命を懸けて邪魔することだけに専念していた。


 小型船も切り離したところで牽引していた大型船や、他の味方の船に猫海賊団の船。戦闘による怒声や破壊音、爆発音が入りまじり海上はお祭り状態だ。

 高速道路に入って渋滞で抜け出せなくなった車のように、後方から追いかけてきていたリーサル海賊団の動きが停滞した。


 猫海賊団の働きに心の中で礼を言いながら、ブラットたちはイベント領域外を目指して全力で船を進ませる。

 そうしていると今度は前方──アジトに乗り込んできたときに、無視して置き去りにしていた敵船が動き出していた。

 まさにブラットたちが猫海賊団を使ってやらせているように、進路を塞ごうと多数押しかけてきている様子が、探知機によってマップにしっかりと表示されていた。



『二時──真っすぐ──左──十一時』



 HIMAがその情報を見ながら、進路を塞がれない方角をしゃちたんへ指示して船を動かしてもらっていく。

 相手の動きがわかる上に後方から来ていた船団よりも数は少ないので、ある程度はこれで回避できる。

 このようなときのために事前に時計の文字盤を使った方向指示は、三人とも空いた時間で練習し運転も指示出しもできるように徹底してあるのでスムーズだ。


 けれどやはり多勢に無勢。かわした船やまだ前方にいる船の上から、迫撃砲や大砲のような魔法銃を撃ってこられると、どうしても全てをかわすのは難しくなっていく。



『スモークを炊いてくれ!』

『おっけー!』



 外からの攻撃は主砲の中にいたブラットがもの凄い速度で進む船の甲板に出て、【魔力充填式銃塔】や魔刃手裏剣でなんとか致命傷は避けて迎撃しているが、被弾を全て防ぐことはできず軽微なダメージを何度も負って、そのつど急速修復して資材を減らしてしまう。


 そこでアクション『スモーク』で煙を発生させ、後方からの攻撃だけでも目測をつけにくくする作戦に打って出た。

 煙を出しながら『スキッド』でジグザグに動き、海上のいたるところの視界をさえぎっていく。


 しかしこの場合、ブラットも煙で視界が限られ敵側の攻撃が見えなくなってしまう。

 敵は正確に狙いを定められなくなるだろうが、それでも当たるときは当たる。



『ブラット、迫撃四時。砲撃一〇時、八時。

 しゃちたん、右──』



 そうなると、あとは探知機での情報に頼るしかない。高性能なだけあって、撃たれる前に反応を察知してくれるのだ。

 HIMAはブラットに攻撃の種類と方向、しゃちたんへ前方を塞がれない方向を効率的に指示していく。


 二人はその指示を信じ抜き、何とか危機を乗り越えていった。



『魚雷接近中!』

『魚雷持ちが、この辺にいたのか』

『タイミングは任せたよ、HIMA』

『こっちも頼む』

『任せて』



 恐ろしいほど速く追尾性能が異常に高い強力な魚雷が、敵船から発射された。視界を曇らせても、これなら確かに狙うことができる。

 しかしブラットたちも初見ではないため、充分に引き付けジャンプして釣り上げ、ブラットが【魔力充填式銃塔】で起爆させた。

 三人の連携もばっちりで、着水までキッチリと決めていく。


 だがその着水地点を狙えていたわけではないのだろうが、ブラットたちの船の前方に二隻の船が進路を妨害しようとやってくる。

 さすがに魚雷の爆風で吹き飛んだ先の位置までは、予想できなかったのだ。



『しゃちたん、船首を二時、からすぐ一〇時』



 けれどその対策もしっかりとしている。着水前に『収束音波砲』を起動して、そのトリガーをHIMAが握っていた。

 しゃちたんが微細な操作で船首を動かし、HIMAが収束音波砲をキッチリと当てて敵船を麻痺させていく。


 二隻はコアが麻痺して一時的に機能を停止させるが、慣性の法則によって、こちらの船に前部が当たる位置まで流れてきてしまう。

 このままではぶつかった拍子に、敵に乗り込まれる可能性すらある。



『【ペネトレイター】!』『ジェット!』



 そこでブラットは船自体が持つスキル【ペネトレイター】を発動させ、HIMAはそうすることを見越した上で、しゃちたんへ『ジェット』の指示を出す。

 船は赤い光をまとって疑似的な槍の穂先となり、ジェットでさらに増した突進力で敵船二隻の前部を弾き飛ばすように無理やり進路をこじ開けた。


 予想通り船がぶつかった瞬間に乗り込もうとしていたモンスターも、ペネトレイターの疑似槍によるシールドに弾かれ海に落ちていく。



『あと少し!』



 マップをずっと見ているHIMAから、希望の言葉が投げかけられる。あと少しでイベント領域を抜けられると。

 敵船もここまでくるとかなり減り、攻撃の手もだいぶ温くなってきていた。


 これはいける──そう三人が小さく拳や触手をぎゅっと握りしめたところで、突如アジトの方、もはやかなり遠方の方からもの凄い爆発音が三度響いてきた。



『なんだ!? 長射程の大砲でも撃ってきたか!?』

『……違う、そんなんじゃない』

『じゃあなんなのさ!?』

『あいつらの船がこっちに飛んできてる!!』

『『はぁっ!?』』



 マップに映る探知機の情報を、HIMAはそのまま口にする。

 実はアジトの地下には海の王が作り出した、船を撃ちだすカタパルトが隠されていた。

 撃ちだすためのエネルギーが必要なため今日はもう打ち止めだが、それでも三隻の精鋭が乗った船がブラットたちの後方に盛大な水しぶきをあげながら着水した。


 距離は目視ではそこそこ離れているように見えるが、実際には速度が9以上出せる船なら暴走モードで確実に追い詰められる位置。

 進み続けるこちらの船を追うように三隻は迷わず暴走モードを発動して、こちらを一気にしとめるべく加速する。



『残りの変態ダコを全部使ってくれ!』



 そんな状況下で、ぼやぼやしている暇などない。

 ブラットは既に主砲の内部に入り込み、落ちてきたうちの一隻に向かって躊躇なく砲撃を開始する。


 ズドンッ──と大きな音と共に、それは着弾。

 試射すらできず初の砲撃だったが、これくらいの距離なら偏差もそれほど気にする必要はない。


 相手側はカタパルトで船を撃ちだすのに何のデメリットもないわけではなかったようで、かなり頑丈そうな中型船が既にあちこちダメージを負っていた。

 それを瞬時に見抜き、傷ついた部分に向かって船の破壊に特化した砲弾をお見舞いしたことで小さな穴があく。

 下の方だったため水が内部へ、ちょろちょろと浸水していく。


 そこへさらにもう一発。

 かわそうとする動きを見せるが、それを見越して撃ったので狙い通り着弾。さらに穴は大きくなり、一気に浸水が進みはじめる。


 その間にしゃちたんは一日三回の制限を持つ本日最後の『歌船の響音』を発動させ、残り二つの変態ダコを呼び出す笛をHIMAと一緒に吹いていく。

 すると四体の巨大ダコが召喚され、二人の命令を受けブラットが撃っていない残り二隻に突撃して足止めにかかっていく。


 こちらは猫海賊団以上に強力なモンスター。敵を倒すほどの攻撃能力はないが、素早さもある上に耐久も高い。足止めするには最適な存在だろう。

 暴走モードで加速しだす船の底に二匹ずつ張り付いて、逆方向へ強引に引っ張り減速させてゆく。


 その少し前にブラットの三発目もあけた穴の中に吸い込まれるように入っていき、外装よりも柔らかい内部を大きく破壊。

 船として重要な機能な失い、一隻は海の中へと沈んでいく。



「グォオオーーーッ!!」



 モンスターの怒りの声がするが、ブラットに構っている暇はない。

 変態ダコの存在には気がついているが、海の中から張り付いているため攻撃しづらいことが幸いし、リーサル海賊の精鋭が乗る船に対して四体はまだまだ元気に妨害活動を続けていられる。


 暴走モードを使っていてもその妨害のおかげで、こちらの船と速度は大して変わりない。若干速いかどうか、といったところまで落としてくれていた。

 ブラットはしゃちたんに指示を出し、相手の斜め前あたり──狙いやすい位置に移動してもらい、本日四発目の砲弾の狙いを定めていく。


 今回も傷を負っている場所を狙う。しかし一隻目の二の舞にならぬようにと、狙いをつけていた船は蛇行するように動きはじめる。

 だが四回目となると主砲の癖も完全に把握し、さらにブラッドによる砲撃の精度は増していた。

 照準をよく見て、弾の軌道と相手の動きを予測し発射。



『よし──命中』

『『ナイス!』』



 続いて五発目も命中。一発目であけた穴を広げ、六発目で内部破壊。二隻目も航行不能に陥り、海の上で停止した。


 三隻目。こちらは蛇行は無意味だと知り、さらに不規則な動きをしよう──としていた。

 しかし二隻目を止めていた変態ダコ二体がそちらに応援に向かい、四体の巨大ダコを船の底に張り付けたことで船はさらに減速。

 舵もより取りづらくなり、むしろ狙いやすくなっていた。



『探知機の情報を見る限りだと、強引に変態ダコに攻撃しはじめてるね。もうそれほど長くは持たないかも』

『ならその前に仕留めないとな』



 船を失ったモンスターたちが残り一隻に全てを託そうとでもいうかのように、文字通り死ぬ気で走る船の底に特攻を仕掛けていた。

 一体一体の能力が高く、海の中で十全に力を発揮できなくても、変態ダコたちに取り付き、強引にダメージを入れはじめている。

 やたらと火力の高いモンスターもいるようで、既に一匹は瀕死の状態。残り三匹も時間の問題だろう。



『弾数は大丈夫?』

『あと四発撃てる。それだけあれば、たぶんいけるはずだ』



 しゃちたんの心配そうな声に、ブラットは自信満々にそう返し有言実行。一発残し、これまで通り三発で最後の一隻も沈めてみせた。



『よしっ!』

『『やった!!』』



 これでもう追ってこられる船はいない。あとは残り一キロメートルを切った距離を走り抜ければ、こちらの勝利。

 しかし、相手の往生際は想像以上に悪かった。



『──っ!? 船じゃない……ってことは、まさか!!』



 マップ画面に二体のモンスターが追いかけてくる反応が映った。

 それは船ではなく、モンスターのみの表示。HIMAは慌てて後ろの窓から望遠鏡を向けて確認してみれば、巨大なマンタのようなモンスターの上に乗った、ゴリラにも匹敵する大きさをした角の生えた白い猿──白猿鬼と呼ばれるモンスターの姿が映り込んだ。



『白猿鬼までいたの!? 二人とも、あいつはやばい! 絶対に船に乗せちゃダメ!』



 二人も後方から、速度10で逃げる船よりも速く泳ぐマンタに乗った猿を確認した。

 HIMAによればあのモンスターは通常マップでも、最前線プレイヤーたちがフルパで挑めば確実に勝てるだろうといった強さを持つという。

 今のブラットたちでは、船に乗り込まれた時点で瞬殺される強モンスターだ。


 マンタの方もHPを消費することで、限界を超えた速度で泳げるという特殊スキル持ち。

 命を削るスキルだけに効果量も非常に高く、巨大な猿を乗せた上で暴走モード以上の速度を叩きだしていた。


 このままではイベント領域から出る前に、確実に追いつかれる。

 どうしようかと考えている間にも距離はどんどん詰められていき、マンタは最後に猛烈な勢いのままジャンプし風に乗って飛翔する。


 そして白猿鬼はマンタを殺す勢いで踏み台にして、空宙でさらに加速。ブラットたちの船に向かって、ロケットのように突っ込んできた。

 その速度はマンタが泳いでいたとき以上の速度。アクションなどで船を動かしても、回避できないほどに速い。


 しかし──それは白猿鬼にとって悪手だった。



「悪いな。この船、三人乗りなんだ」



 そのままマンタで急接近され、主砲の狙えない位置に入られたうえで、白猿鬼が船に取りついてしまえば終わりだった。

 だが白猿鬼は功を焦り、より速く簡単に乗り込める方法を取ってしまう。


 マンタは海の上なら縦横無尽に動き、狙いをつけるのは非常に難しかった。

 けれどジャンプしてただ真っすぐ突っ込んでくる大きな猿など、ブラットにとってはただの的でしかない。


 主砲の照準を一瞬で合わせ、最後に残った一発をブラットは撃ち放つ。

 空を飛ぶスキルなどない白猿鬼は、その弾に自ら突っ込むようにして着弾。むしろそんなものがどうしたと、強気ですらいた。


 実際もしこれが普通の弾種であったのなら、多少勢いを殺されても生き残り船に降り立っていただろう。

 けれどブラットたちの船に積んでいる主砲の弾は、生物に当たれば最高クラスのノックバックが発生する弾種。



「──グゲッェェエエェェェーーーー!?」



 勢いを殺されるどころか、後方に一〇メートルほど飛ばされ海に落ちた。

 白猿鬼自体も泳ぐことはできるが、さすがに船に追いつける速度では無理だ。

 口から白い炎を吐き出して船に攻撃しようとするが、既に当たる距離にはもういない。



『いや……、あいつやばいな。なんでそれしか飛ばないんだよ……』

『普通のモンスターなら、一〇〇メートルくらい吹っ飛ぶって親方が言ってたのにね』

『もうお猿のことなんてどうでもいいよ! ほら、これで逃走完了だよ!』



 しゃちたんが運転する船はイベント領域を抜け、他のプレイヤーもいる場所に帰ってきた。

 だがまだ安心するには早い。ここにも普通に巡航する海賊船がいるのだから。

 船を少しずつ減速させ周りに敵がいないことを確かめてから、【リミナル・ウェッジ】で安全なポータル島へとすぐさま離脱した。


 転移が終わったのを確認すると、三人は船室へ向かい全員がそこで合流する。

 HIMAは二人が見ている前で、最後の宝石のカギを机の上に置いた。



「……これで私たちは、三つ目のカギも手に入れたってことだよね?」

「ああ、そうだよ! あとはその三つを入れた船で、最後の危険に行けばエルドラードに行けるはずだ!!」

「しかも座標ももうわかってるってね! やったやった!! もう少しだ!!」

「だよね! 私たちやったんだ!」

「「「いえーい!!」」」



 三人は誰も見ていないことをいいことに、船室の中で大はしゃぎしながらハイタッチ。

 しばらくカギを全て集めきった達成感を味わったのだった。

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