第八六話 アジト強襲作戦
一瞬で視界が切り替わり、もうすっかりと暗くなった夜空の月明かりが船を照らす。
「ごめん……二人とも。ちょっと待たせ過ぎたみたいだ」
「いいよ。ブラットのためになったんでしょ?」
「私も気にしてないからいいよ! 待ってる間、HIMAに月曜に提出する課題教えてもらってたし」
「ありがとう、二人とも。じゃあ、これからのこと──ん? なんだこれ」
「どうしたの? ブラット」
船内に戻って今後のことについて話そうとしていたら、ブラットは身に覚えのないアイテムを握りしめていることに気が付いた。
手を開いて確かめてみれば、歪な形をした安っぽい白みがかった水晶の欠片といった見た目の物体。
アイテムスロットに入れていた【ディテールド・アナライザー】で確認してみると、そこには【ロロネーの思片】というアイテム名と、手持ちのスロットに入れておくと、少しだけ授けられたプレイヤーをイベント中助けてくれる思いの欠片──という説明が確認できた。
「悪いもんじゃないみたいだし、手持ちに入れとけば?」
「そうだな。解放できないのは不甲斐ないが、これをくれたということは持ってろってことなんだろうし。
──じゃあ、今度こそ今後について話そうか」
湿っぽい気持ちになりそうだったのでブラットは無理やり話を切り替えながら、【ロロネーの思片】を手持ちのスロットにしまいこむ。
それから甲板から移動して操舵室に三人で向かい、探知機で周辺を確認しながら話を続ける。
「現状をまとめると、リーサル海賊団全体の数は減らせたし、アジトの中身も正確に把握できている上に、確実に入るための方法まで手に入れた」
「あとは、そのアジトがどこにあるのかだよね。
パペットモンスターの人たちに、そこは期待したいところだけど」
「だねぇ。でもさ、たとえアジトの中に入れたとしても、やっぱり宝物庫を開けられなさそうなんだけど……。
ねぇブラット、前に言ってた方法ってのはどんな感じか聞いてもいい?」
「ああ、前にオレが宝物庫の鍵がなくてもって言ってたやつだよな」
「そうそう」
「私も、しゃちたんと一緒で気になってた」
二人とも興味津々といった様子で、ブラットへ期待の眼差しを向けてくる。
それに対して、ブラットは前とは違い自信ありげな表情を見せた。
「実は俺が欲しかった情報はかなり集まったし、あとはアジトの位置情報と〝アレ〟が用意できれば、たぶんいけるんじゃないかと思ってる」
「「アレ?」」
「ああ、アレっていうのは──」
ブラットは、そこで大まかな作戦を二人と共有し、それを元に三人で詳細を詰めていった。
アレは思っていた以上に見つからず、あちこちの島を回っていると、本日の同盟同士での報告会の知らせが入ったので、そちらと合流することにした。
そちらではついにパペットモンスターのメンバーが、リーサル海賊団のアジトの座標を掴んだという。
彼らは補給基地を攻略していないため、ブラットたちが見えていないリーサル海賊団まで見えている状態。
相当な数の敵船の中を進み、苦労して掴んできた情報だったようだ。
他にもいつものように軽く報告を交わし合い、地図情報も互いに共有した後、ブラットたちはちょうどいいとアレについても聞いてみることにした。
「ああ、それならもしかしたら──」
そして微笑みの甲殻のリーダー、ヤブレカブレが有益な情報をもたらしてくれた。
ようやくアレを入手したブラットたちは、もろもろの準備を調え終わると、目的地に一番近い巨大ポータル島を見つけて解放し、それから出航して突き進む。
目的地とはもちろん──。
「いよいよ三つ目の危険、リーサル海賊団のアジトに乗り込むんだね」
「一発本番だし、なんだか今からドキドキしてきたよ」
「やり直しは、きかないからな。でもこうでもしなきゃ、たぶん今のオレたちじゃ三つ目のカギは取れない」
「「だね」」
探知機を頼りに敵船をよけながら、ブラットたちは何度もこれからの作戦について確認し合い、リーサル海賊団のアジトとなっているイベント領域の目の前までやって来た。
この辺りは普通にリーサル海賊団の上位クラスの海賊船も出てくることもあり、密集して誰かの逃げ道を塞がないようにプレイヤーたちの船はそれなりにあるが、互いに充分な距離を保った状態で待機していた。
これを見る限りでも、ここが本丸のアジトとみてほぼ間違いないはずだ。
「よし、行こう」
ブラットたちもイベント領域付近で一度船を停め、最終確認とそれぞれの段取りもしつこいほどに確認してから、船をリーサル海賊団のイベントの領域内へと進ませた。
「いけいけいけー!」
しゃちたんは緊張を吹き飛ばすように、ハイになってアクセルを思い切り押し込んでいく。
補給基地を破壊したおかげか、イベント領域内にいるリーサル海賊団も少なく、衝突の危険もなくどんどんアジト本部に近づいていける。
当然こちらの船に気が付く敵船も現れるが、それすら無視して突き進む。
「帰り道だけは塞がれないように立ちまわってくれ」
「わかってるよ。それよりまだ平気?」
「うん。探知機の情報を見る限りでも、まだ大丈夫そう」
かなり飛ばしているのに、なかなか見えないアジトにじれったく思いながらも、三人はそれぞれの役割をこなしていく。
しゃちたんは船の運転、HIMAは敵に囲まれないように探知機の情報確認、ブラットはアジト内部の見取り図に自分たちの位置が本当に映るかどうかの確認。
ブラットたちがやろうとしていることは、本当にたった一度しか使えない手。
万が一パペットモンスターが誤情報を掴まされてしまっていた場合、もう取り返しがつかなくなってしまう。
彼らも直接見に行って確認したわけではない情報。
百パーセントそこだとは言いづらく、外にいるプレイヤーたちもパペットモンスターと同じく、信憑性の高い嘘に騙されていないとは言い切れないのだから。
イベント領域も、別のダミーアジトイベントという可能性だってゼロではない。
そこで見取り図での確認方法を思いつく。
見取り図は最大まで縮小すれば、ある程度アジト周辺の海も表示される。
そしてこの五枚集めたことでアップデートされた見取り図には、自分たちの位置情報も表示される。
ということは本物のアジトの近くに行けば、今ブラットが見ている見取り図に自分たちの位置が表示されるというわけである。
「オレたちの場所が表示された! ここが本物で間違いないぞ!」
「敵は結構ぎりぎりだよ! このままだと本格的に囲まれちゃう!」
「じゃあ、もうやっちゃうよ! いいっ?」
これをやったら、もう後には引けない。
そういう意味を込めてのしゃちたんの確認に、ブラットとHIMAも覚悟を決めてゴーサインを出した。
しゃちたんはルサルカのイベント後に、カギをコアに吸収させたことでハンドルの右側に追加された紫のボタン──派生アクション『歌船の響音』を押す。
するとコーーンと涼やかな音が船全体から響きはじめた。この音が鳴っている間、音に関係した効果と範囲が増幅されるようになる。
「スペシャルアクション──『泡沫の揺り籠』発動!」
切り札の一つ、ルサルカのカギによって覚えたスペシャルアクションをここで切った。
その瞬間、船から不思議な心地のいい音色の音が広がっていき、マップ上に表示される敵船の動きが見る見るうちに停止していく。
その間にブラットたちの船はどんどんアジトに向かって近づいていき、ついには正門前に横づけするような大胆な形で一度船を停めた。
これほど堂々としたカチコミに対しても、一切反応されない。
未だに船からは派生アクションで強化された『泡沫の揺り籠』が発動中で、その範囲は完全にアジト全体までおよび、建物の中も外も関係なく全てのモンスターを眠らせてしまったからだ。
そのアジトの主──キャプテン・ロロネーでさえも。
「じゃあ行ってくる!」
「しゃちたん、そっちは頼んだよ!」
「まっかせて! そっちも頑張って!」
ここでブラットとHIMAだけ急ぎ船から降りて、隠し扉に向かって全力で走り抜ける。
正門から行くルートも頭には入れていたが、正門となっているモンスターをちらりと確認した限り、完全に口を閉ざして通ることはできそうになかったからだ。
しゃちたんはしゃちたんで自分の仕事をするため、ブラットたちが降りたらすぐに船を動かし予定地点まで移動しはじめた。
「ここだ!」
「えっと──────開いたよ!」
ブラットが見取り図で隠し扉の位置を確かめ、HIMAが手に持ったロロネーの残骸から受けとった鍵ですぐさま開ける。
そこはアジトの外からも中からも死角になった絶妙な場所だった。
HIMAが乱暴に扉を押し開いて中へと入り、ブラットもその後を遅れずついていく。
中は非常に広く複雑で、あちこちに居眠りした凶悪そうなモンスターが転がっていた。
もし『泡沫の揺り籠』を使っていなければ、このモンスターたちの目をかいくぐって進む必要があったのだろう。
だが今は、いくら目立とうと関係ない。
ルサルカに匹敵する眠りの歌を、さらに強化して使っているのだ。抗えるモンスターなど存在せず、全て夢の世界に旅行中。
何も気にせずドタドタと廊下を走り抜け、階段を駆け上がり一気に四階奥の部屋──宝物庫の前まで到着。
しかしブラットたちはここの鍵を持っておらず、何をしようとそこを開くことはできないが、そんなことは百も承知だ。
ブラットはすぐに手持ちのアイテムスロットから、精確な現在地の座標と高度を表示することのできる魔道具を取り出した。
これこそが最後の欠けていたピース。
座標だけならともかく高さを数字として正確に表す機材が意外に売ってなく、最終的にヤブレカブレに紹介してもらったプレイヤーに直接依頼してわざわざ作ってもらったもの。
精確な現在の位置、高さを確認し、ブラットは過去の記憶と照らし合わせながら、ここだというx,y,zの三点の座標を、通話を繋いだしゃちたんへと知らせていく。
『おっけー』
別行動していたしゃちたんは、変態ダコの呼び笛を一つ取り出し吹いていく。
「おわっ、なんか二体も出てきたんですけど!? ──って、そんなこと気にしてる場合じゃない。
スペシャルアクション──収束波動砲起動!」
ガチャンガチャンと収束音波砲のときよりも派手な音を響かせながら、巨大な砲台が船首の下から飛び出し、操舵のハンドルが銃の形に変形する。
エネルギーが充填されていく音が操舵室まで響く中、しゃちたんはブラットから聞いていた座標を標的に指定していく。
「やっぱ角度的にムリだよね」
しかし収束波動砲の砲撃角度は音波砲と同じく、それほど広くない。
ブラットが指定した地点を標的にすることはできず、エラーのメッセージが告知される。
「変態タコ助、一号二号! 船を持ち上げて!」
だが、そんなことは見取り図を見ていればわかること。
しゃちたんはいまだに続いていた『歌船の響音』の効果で二体召喚した変態ダコに指示を出し、船を持ち上げさせる。
一体でも充分持ち上げられる力を持った巨大なタコが両脇から二匹、力を合わせて船を持ち上げていく。
「もう少し船首を斜め上に、そうそうストップ!」
船は斜め上を向くような形で変態ダコに持ち上げられ、ピタリと海上に固定される。
改めて標的の座標を指定してみれば、今度は砲身がそちらに向かって動き調整された。
『撃つよ! 座標は間違ってないんだよね?』
『ああ、ザラタンの破壊光線と効果範囲が同じだっていうなら、その座標で間違いないはずだ』
『やっちゃって! しゃちたん』
『はいよー!』
収束波動砲のエネルギー充填率がマックスまで溜まり切り、もういつでも撃てる状態へ移行する。
しゃちたんはハンドルが変形した銃身を触手で握りしめ、トリガーを引いた。
『にょっわっ!?』
『わっ──』『きゃっ──』
いくらスペシャルアクションで眠らされているからといっても、起きてしまうのではないかと思うほど大きな音を立てながら、とんでもなく強力で野太い光線が船から射出される。
それは真っすぐ狙いへ向かって飛んでいき、リーサル海賊団のアジトに大穴をあけながら、宝物庫から少し離れたところで待機しているブラットとHIMAの前方を通過していった。
「よし、いくぞ。HIMA」
「うん!」
『ちゃんとできた!?』
『ばっちりだ! 思ってた通り、宝物庫の扉を吹っ飛ばしたぞ!』
『よっしゃー!』
これがブラットの考えていた、宝物庫の扉を開ける方法──『開かぬなら、壊してしまえ、扉ごと』作戦だ。
いや開けてないじゃんとは最初にそれを聞いたしゃちたんの言葉であるが、まさにその通りである。
『泡沫の揺り籠』でアジトにいる全てのモンスターを眠らせ、その効果が続いている間に二人でアジトに乗り込み、宝物庫まで迷うことなく侵入。
そこで『収束波動砲』で宝物庫の中身を消し飛ばさないよう、できるだけ扉だけを巻き込む形で狙える位置を割り出すために、計器を使って精確にxy軸だけでなく、高さz軸の情報を調べ船にいるしゃちたんに知らせる。
破壊光線の範囲は何度もかわすときにギリギリを見極めていたブラットが、今でも感覚として覚えていたので、そこから収束波動砲の中心点を考え伝えた形だ。
しゃちたんは見取り図から割り出していた、大凡の狙える位置まで事前に移動しており、聞いた通りの座標に向かって『収束波動砲』を撃ち込む。
いくら丈夫で人間やモンスターの攻撃などでは歯が立たないと言われていた最硬の扉だろうと、同じくらい硬いザラタンの甲羅すら貫通する砲撃ならば吹き飛ばしてくれるはず。
そんなブラットの考え通り見事、侵入者を阻む宝物庫の扉は消し飛んだ。
さらにこの作戦のいいことといえば、帰り道は収束波動砲があけてくれた大穴を飛んでいくだけで、まっすぐ船に帰ることができる点だろう。
これらは迅速にアジトに乗り込めるための隠し扉の鍵。内部を迷わず進むことのできる見取り図。
一発しか撃てないため、万が一にでもズレが許されない収束波動砲の標的を定めるための計器。
最低でもこの三つが揃っていなければ、眠らせている間に済ませることはできなかっただろう。
他にも収束波動砲の角度調整のために、変態ダコは地味にいい仕事をしてくれた。
「うわっ、思ってた以上に中がぐちゃぐちゃ……」
「他はどうでもいいから、三つ目のカギだけ探すぞ!」
扉を破壊したまではよかったが、その余波という衝撃によって中身がしっちゃかめっちゃかにかき回され酷い状態になっていた。
入り口近くにあったお宝など、ドロドロに溶けて原形すらとどめていない。
しかし今回のイベント全体でもキーアイテムとなっているエルドラードへのカギは、そんな入り口付近ではなく、ちゃんと奥の方に隠されているはずだ。
ブラットとHIMAは二人掛かりで、普段ならば全部持って帰りたくなるような宝を蹴飛ばし、投げ飛ばしながらカギだけを探して奥へと踏み入っていく。
「わかっていたけど、この広大な宝物庫の中からカギを見つけるってできるのか……?」
「重要アイテムだし、もっとわかりやすいかと思ってたけど全然そんなことないしね……。運営ほんとに性格悪いんだから」
実はちゃんとした宝物庫の鍵を用意できていれば、それがリーサル海賊団が守っているカギの場所を教えてくれる。
だがそれを持っていないブラットたちには、できないこと。
そうこうしているうちに、しゃちたんから無情な通話が入ってしまう。
『まだかかりそう!? 『泡沫の揺り籠』が止んじゃったんだけど!』
『わかってるけど、お宝の量が量だけにカギを見つけるのも──これも違うっ』
探しはじめて一〇分もしない間に、『泡沫の揺り籠』が止まってしまう。
派生アクションの『歌船の響音』のおかげで効果時間も伸びてくれていたようだが、ブラットたちからすればまだ足りない。
あとは眠りの効果が切れたら、モンスターたちが次々と起き出してくることだろう。
しゃちたんの通話に答えながら、それっぽい小さな宝箱をブラットが開けるが、中身は大粒の宝石が入っているだけ。
すぐに後ろに放って、宝をかき分けて探しに戻る。残り時間はもう、それほど残されてはいない。
焦ってはいけないとは思いつつも、ここにブラットたちが来れるのは、おそらくこれが最後のチャンス。
強力な二枚もの切り札を切ってようやく、ここにいられるのだ。焦るなというほうが無理がある。
思わず目の前の豪華な王冠のようなものを蹴りつけたくなる衝動に駆られるが、そんなことをしても時間の無駄だと、ブラットは次の場所を探しに行こうと一歩を足を踏み出した──ところで、手持ちのアイテムスロットから【ロロネーの思片】が勝手に飛び出した。
思わず反射的に手を伸ばしてそれを掴むと、何やら小さく光っていることに気が付く。
何だろうと持ったまま少し動くと、光が強くなったり弱くなったりする。
「もしかして──」
「どうしたの?」
「どこにあるか、わかるかもしれない!」
「ほんとに!?」
光がより強くなる方を目指して、ブラットは宝物庫の右奥の方へと歩みを進める。
そして一番光が強くなった場所の金貨の山をかき分けていくと、その底に小さな床下収納といった扉がついていた。
ロックはかかっておらず、パカッと開いてみればそこには小さな宝石箱が。
ドキドキしながらブラットがその宝石箱を開けると、その中にはエメラルドでできたような綺麗な緑色に輝く宝石のカギが入っていた。
さっと既に用意していた【ディテールド・アナライザー】で、HIMAが確認していけば──。
「本物!」
「よし逃げるぞ!」
エメラルドのカギを握り締め、ブラットたちは宝物庫の外に空いた大穴に向かって駆け出した。
ちゃっかりと二人は走る速度が遅くならない程度に、空いている手持ちスロットにお宝を掠めていくのを忘れずに。
収束波動砲で吹き飛ばした斜め上に向かって通った穴を、二人は翼を使って滑空するように最速で降りていく。
(──ん? これは……)
「──えっ、ちょっとブラット! どこ行くの!」
「ごめん、ほんの少しだけ寄り道! 直ぐに追いかけるから先に行っててくれ! 最悪、オレはおいていっていいから!」
そう言いながらHIMAにカギを渡して、ブラットはアジトの内部に向かって行ってしまう。
やめろと言うか迷ったが、ここでそんな行動をするということは何か意味があると考え、HIMAは言われた通り一人で船に戻った。
「ブラットは!?」
「わからない。どっかに寄り道って言ってた。最悪おいていってもいいって言ってたよ」
「マジで!? こんなときによーやるわ……。そろそろ起き出してもおかしくないってのに……」
「でもブラットだってわかってるだろうし、なにか意味はあるんだと思うよ──って、もう来た」
「ほんとだ。よかった~」
HIMAが着いてそれほど待たずに、甲板に落下するようゴロゴロ転がりながらブラットが着地した。
「ほんとごめん! 待たせた! 行こう!」
「あいよ! HIMAも定位置について!」
「わかった」
しゃちたんは『ダブルジェット』で初速を稼ぎ、アクセルはべた踏みでかっ飛ばす。
HIMAは操舵室でマップ情報の監視。ブラットはいざというときのために、主砲の中に入り込む。
あとは逃げ切ればこちらの勝ち。急がない理由はない。まだ寝ていろと三人は心の中で願い続ける。
──しかし少し船を進ませたところで、カンカンカンッと鐘を鳴らす音が響きだした。
「もう起き出したモンスターがいるのか……」
次は土曜日更新です!




